下のパワーハラスメントの6類型のうち、この稿では「精神的な攻撃」について解説します。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害

「1.身体的な攻撃」については、下のリンクをご参照ください。

パワハラ6類型の「身体的な攻撃」とはなにか

令和2年度「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(厚⽣労働省)によると、6つの中で、「精神的な攻撃」がいちばん多くなっています。

では、どのような行動が「精神的な攻撃」にあたるのか、見ていきましょう。

人格を否定するような暴言

人格否定ってどういうこと? と思われるかもしれませんね。「バカ」「アホ」「死んでしまえ」などひどいのはもちろんですが、要するに「おまえはダメなやつだ」と言い換えることができるような内容言われた側が屈辱を感じるような内容は「人格否定」だと思ってよいです。

たとえば、こんな感じです。

  • 「幼稚園からやり直せ」
  • 「やる気あるのか?」
  • 「給料泥棒」
  • 「いつになったら覚えるんだ?」

厚労省サイト「あかるい職場応援団」の中に、「精神的な攻撃」の例として動画 がありますが、その中ではこんな言葉が出てきます。

  • 「お前みたいなネクラはどうせ帰って寝るだけだろ」
  • 「俺の誘いを断るのかよ? ヒマなくせにもったいぶるなよ」
  • 「きのう夜飲みに行ったんだけど、ほんとコイツおもしろくないんだよな」

また、出張報告書の提出が遅れた部下に対して、報告書の前に反省文を書かせようとします。

  • 「報告書を読もうと思って待ってたのに、おまえは上司の貴重な時間をムダにしたんだ」
  • 「すみませんじゃないよ。すみませんですむんなら、なんでもそれで通ってしまうじゃないか」
  • 「反省文には『わたしは給料をもらっているのに怠けて、たいせつな出張報告書を提出しませんでした』と書け」

動画を見てもらうとわかるのですが、このあたりの会話は声を荒げているわけでもなく、「バカ、アホ」などの直接的な暴言を言っているわけでもなく、日常よくありがちな風景に見えます。

実際、このひとつひとつを見ると、一発アウトの暴言というほどではないですが、このような叱り方をいつもしていると、それが積み重なってパワハラ認定される可能性が高いでしょう。

雇用について不安を与える

上でご紹介した動画の中に、こんなセリフがあります。

「しっかり反省文書かないと、クビになっても知らないよ?」

正社員の場合、1回提出物の期限が過ぎたからといって解雇されることはありえませんが、これがアルバイトやパート、有期契約社員の場合はどうでしょうか。

「次の契約は考えさせてもらうよ」というのは、大きな打撃になりそうです。

ほかにも、「このままじゃ席がなくなるぞ」「いつまで居座る気だ」「もう来なくていいよ」等は、「雇用を不安にさせる言動」として裁判でも不法行為が認定されることが多い言い方です。

「からかっただけ」「叱責される理由がある」は通用しない

上に書いたようなことばは、行っている側からすると、「ちょっとからかっただけだ」「叱責されるような理由があるのだから、ちょっとくらい強く言われてもしかたないだろう」と軽視されがちな内容です。

実際、筆者がご相談を受けたり、関わったパワハラ事案を見ると、「部下が気に入らなくていじめた」という事案はあまりなく、「親しいと思ってからかっていたが、相手は苦痛に感じていた」「ミスが多い部下を叱っていたら、だんだんエスカレートして暴言を吐いてしまった」というパターンが多いのです。

叱られる原因があるのは事実だとしても、そのたびに相手を侮辱していて、部下が「自分が悪かった。これからは上司の言うようにがんばろう」と思えるでしょうか。やる気をなくしてしまう、上司がいると萎縮してしまい、できることもできなくなる、というのが予想される結果でしょう。これでは「業務としての適正な範囲を超えている」と判断されてしまいます。

「からかう」「ちょっときつく言う」のが、自分のストレスのはけ口になっていて、「仕事がスムースに回るようになるために指導する」という本来の目的を忘れていないか、上司は考える必要があるでしょう。