ハラスメントの原因のひとつに、世代間や異性間の常識のギャップがありますが、これもそのひとつかもしれません。

どのようなハラスメントかというと、50代60代の男性社員が行為者(加害者)、20代から40代の女性社員が被害者というパターンのセクハラです。
行為者と被害者は、親子ほども年齢が離れているのが特徴です。

つまり、この記事は、50代以上の男性に呼びかけています。

「おじさん」は恋愛の射程外

セクハラといっても、卑猥な言葉を言ったり、ふざけ半分で胸やおしりに触ったりということではなく、男性社員の方は女性社員に好意を持っており、なぜか「女性社員のほうが、異性として自分に好意を持っている」と思い込んでいます。

しかし現実は、女性社員は自分の父親ほども年の離れた上司や先輩のことは、ただの「おじさん」としてしか見ておらず、男性として魅力を感じているわけではありません。

男性が手を握ったり、肩を抱いたり等、職場の同僚としての一線を超えた行動をしてしまい、女性からセクハラだと会社に相談がある、という事案です。

なぜそのようなことが起こってしまうのでしょうか。

最も大きなすれ違いは、男性の側は「相手がずっと年下でも恋愛するチャンスがある」と思っており、女性の側は「おじさんなんて、恋愛対象としてありえない」と思っていることです。

すれ違いが起こる理由

いやいや、親子ほども年の離れたカップルは現実にたくさんいるではないか、とお思いの方はいるでしょう。

しかし、年齢の離れた男女が恋愛したり結婚に至る場合は、たいてい、年下の側がぐいぐいアプローチしています。
年上の側は、仮に相手に恋愛感情をもっていたとしても、「あなたにはもっと年の近いふさわしい相手がいるのでは」と引き気味なのがふつうです。

これが年配者のほうから迫っているとしたら、地位や財力をかさにきて弱い立場の人を意のままにしようとしているのでは? と思うのは、わたしだけでしょうか。

とはいっても、このようなセクハラ事案の当事者になってしまう男性が、意識的に職場内での地位をかさにきて、相手を意のままにしょうとしていることは少なく、好かれていると勘違いしてしまう理由もいろいろ存在します。

女性が、相手に尊敬と親しみを感じている場合

このような事案では、セクハラに至るまでは、たいてい両者の関係は良好です。

女性の側は、尊敬できる上司、先輩として相手を見ており、なにかにつけて相談しています。
場合によってはプライベートでもいっしょに食事をしたり、遊びに行ったり、「デートしている」と見られてもしかたがない状況だったりもします。

しかしこれは、男性として相手を見ているからではなく、逆に、恋愛関係はありえないと思っているからこそ、安心してそのような行動をとっているのです。
女性も40代くらいになれば、高齢の男性が中年女性を恋愛対象として見ることがあるのは理解していますが、20代くらいだと、自分が相手を恋愛の対象として見ていないので、相手も自分をそのように見ていないと無邪気に考えていたりします。

だからこそ、手を握るなどの不適切な行動や、ふとしたはずみの言葉で相手が自分に女性として好意を持っていると気づくと、尊敬や親しみはいっきに嫌悪感に変わり、顔を見るのもぞっとする、ということになってしまいます。

こうなると、女性の側が、職場に来るのもいやになったり、能力が発揮できないという、典型的なセクハラですね。

女性が、相手の機嫌を損ねると、不利益があると感じている場合

両者の良好な関係は、主に女性側がにこにこ愛想よく、素直にいうことを聞く、また、LINE には素早く返信する、等の態度によって作られています。

なにかのはずみに、女性のそのような態度が崩れると、男性側は機嫌を損ね、パワハラ的な態度に出ることがあります。

「機嫌をとっておかないと、なにかと面倒」と女性側が感じていると、上の項目のような尊敬や親しみはなくても、表面上男性に迎合するような態度をとり、男性がそれを好意と勘違いしてしまう、ということも、よく起こっていることです。

愛想よくしないと、相手が露骨に不機嫌になり、仕事に差し支えたり、いやな思いをしたりする。
愛想よくすると、自分に気があると勘違いされる。
女性からすると、まったく踏んだり蹴ったりですが、これもよくあることなのです。

中高年男性特有の女性観

さらに、中高年男性特有の女性観が、女性、とくに若い世代の女性の感じ方とずれている、ということもあります。

一部の中高年男性は、「性的な関心はないが異性に感じよく接する」という感覚が理解できません。
一方、若い女性の大半は、職場では性別関わりなく周りの人とつきあっており、感じのいい態度をとって、周囲と良好な関係を築いています。
男性側は「感じのよい態度=自分に好意を持っている」と思っていますが、実はぜんぜんそんなことはなかったりします。

また、一部の中高年男性は、女性は相手に好意を持っていても、はっきり言うわけではなく、態度によって「ほのめかす」と考えています。
これも、上に書いた勘違いを補強してしまいます。

さらに、好意を持った相手には積極的にアプローチし、相手が拒否しても押し続ければ、いずれ恋は成就する、という考えを持っている場合もあります。
やんわり断られても、しつこくプライベートでの食事に誘ったりするパターンですね。

最後に、いちばん困った女性観として、好意をもった同士であっても、相手の体に触れることに同意が必要だということがわかっていません。
「なんとなくそういう雰囲気だから(いい雰囲気だと感じているのは自分だけ)」、相手の意志は確認せずに、手を握ったり抱きついたりしてしまい、拒否されると、心外に感じるという心理がこれです。

中高年男性特有と書きましたが、一般的な傾向として中高年に多いという話であって、年齢的には若くても、こういう勘違いをしている男性はいますね。
職場の女性にこの勘違いを適用すると、セクハラ事案に発展してしまいます。

セクハラ事案を予防するには

さて、上のような理由から、男性が女性の意に反して、相手の体に触れたり、執拗にデートに誘ったりすると、どのようなことになるでしょうか。

いまどき、まともな会社であれば、目撃者がいたり、本人が認めたりしてセクハラ行為が確認できた場合、お咎めなしということはありません。
懲戒処分を受けたり、それは免れても異動になったりすることになります。
職場内に噂が広がり、面目は丸つぶれです。
それまで、その会社で築いてきたキャリアがだいなしになってしまいます。

被害を受けた女性もつらいですが、行為者(加害者)の側も、なにもいいことはありません。

そのような不幸な事態を避けるためには、「中高年男性は、ずっと年下の女性からは恋愛対象として見られていない」と考えておくほうがよいでしょう。
自分の側がどれだけ相手を好きでも、心に秘めておく分には問題ありませんが、「中高年男性特有の女性観」を持っていると、相手も自分に好意を持っていると誤解しがちですので、そのような女性観がないか、点検しておきましょう。

基本的には、人間として、職場の仲間として、相手を尊重するという気持ちがあれば、多少のすれ違いはあっても、大きな問題にはなりません。

年齢や性別、キャリアの違いはあっても、相手はあなたと対等な人間であり、大切な職場の仲間です。
性的対象として考えていることが相手に知られるだけでも、人間関係が破壊されます。
「若い」「女性」ということで相手を軽視していないか、一度冷静に考えてみましょう。