社員研修を合宿で行う、というのは、よく見られる形です。
日常の場を離れて、研修内容に集中しやすい、仲間意識も醸成しやすい、場所の設定によっては自然の中でリフレッシュできる等、さまざまな効果が考えられます。

しかし、この合宿という形態を、「行動の自由を奪う」という意味で使う研修が、もてはやされた時代がありました。

  • 眠らせない
  • 長時間の訓練で極度に疲労させる
  • 日常の細々した行動まで規制する
  • 自己批判を強要する
  • 駅前など人の多いところで、歌を歌わせたり叫ばせたりする
  • 唯一の「正解」を押し付け、間違うと厳しく叱責する、罰を与える

こうやって並べてみると、マインドコントロールの手法そのものですね。

結果どうなるかというと、受講者は上のいうことには絶対服従、会社のためには火の中水の中、という鵜飼の鵜のような状態になってしまいます。

現在でもこのような研修はあるようですし、合宿しないまでも、怒鳴りつけて相手の自尊心を奪い、唯一の「正解」を押し付け、「正解」が出せるようになるとほめそやす、という方法で研修を行っている講師もいるようです。

洗脳やマインドコントロールという、歴史の中で効果が証明されている方法を使うのですから、「従順で長時間労働もいとわない人材」を作るには効率的なのかもしれません。

しかしながら、このような手法は、現在の人権尊重という流れにそぐわなくなっています。
従業員が自律的に仕事に取組み、働きがいを感じながら働く、このような状態を目標とするのが、現在の人材育成の主流です。
その意味でも、時代遅れで、若い層には受け入れられず、退職者を増産してしまう方法だと言えるでしょう。

とくにハラスメント防止研修では、「部下・同僚を人間として尊重する」という価値観が、すべてのバックボーンになっています。
講師が受講者を、どなりつけたり、極端な命令をしたり、「正解」を出せなければ罰を与えたり、小馬鹿にする、というのでは、人権尊重の価値観とまっこうから対立してしまいます。

当然、まともな講師であれば、受講者を人間として尊重することを大切にしています。

恐怖や不安で部下を支配する方法は、パワハラにまっすぐつながっていますので、そのような価値観で部下指導をしてはならない、ということもくりかえし強調します。

自分の号令一下、手足のように動く従業員がほしい、という経営者の欲望はわからないではありません。
確かに、そういう状態になれば、王様になったようなすばらしい気分でしょう。

しかしながら、そのような方向性で研修を選び、労務管理を行っていると、いずれ「ブラック企業」というレッテルを貼られ、募集してもだれも来ない、せっかく入った従業員は1年ももたずに退職、というはめになってしまうことは、火を見るより明らかです。

古い考えにしがみついて淘汰される前に、気づいてもらいたいものですね。