国立病院機構九州グループ(福岡市)は22日、休暇を申請した部下の看護師に対し「年休を使いすぎだ」「私が若い頃は休みをもらえなかった」と威圧的に発言したのはパワハラに当たるとして、長崎医療センター(長崎県大村市)の女性看護師長(48)を減給処分にした。
パワハラで看護師長を減給 国立病院機構九州グループ – 産経ニュース

このニュースを見て、ぞっとした管理職の方もいるのではないでしょうか。
こういうことば、自分もよく言ってるよ! これはパワハラなのか?
このあたり、部下との間に大きな認識の差がありそうです。

「有給を取ろうとするとイヤミを言われる」
「有給申請をすると嫌な顔をされる」
「日頃から『自分が若い頃は好き勝手に休みなどとれなかった。いまの若いものは休みすぎだ』と言われるので、有給の申請がしにくい」

実は、パワハラについて、一般社員の方にアンケートをとったり、話を聞くと、とてもよく出てくるのが上に書いたことなのです。
しかし、なぜかハラスメントに関する本やパンフレットには、あまり例として取り上げられていません。

有給休暇の申請を会社が拒否すると、労働基準法違反です。
それはだれでもわかっているので、管理職も「有給はダメ」という言い方はしません。
このニュースのように、自分の若い頃を持ち出す、というのは、とてもよくあるパターンです。

しかも、「威圧的に発言した」とありますから、日頃から、部下とのコミュニケーションに問題があっただろうことが推測できます。
威圧的かどうか、というのは、発言した本人の意図ではなく、聞いた方の受け取り方ですから。

上司の側からすると、イヤミはともかく、「嫌な顔」でパワハラと言われてはたまらない、というところでしょう。
実際に有給を認めると、ほかの人にしわよせがいく。
つい、表情が曇ってしまうのまで止められないよ、と思うのではないでしょうか。

「有給を取ろうとすると嫌な顔をされる」という苦情が会社の相談窓口に寄せられたとして、それひとつで、パワハラ認定されるかというと、可能性は低いでしょう。
しかし、パワハラといえるかどうか微妙でも、そのことで部下に「パワハラ上司」と思われてしまうと、部下との関係がうまくいかなくなってしまいます。

職場の雰囲気をつくるのは、管理職の眉間のシワだったりします。
自分の上司の前では表情まで気をつける人が多いですが、管理職は部下の前での表情に気を使う必要があります。
相手が自分より下、と思っていると、つい雑に扱うようになってしまうので、その意識から変えたほうが自分自身が楽です。

そもそもは、有給申請されると渋い顔になってしまうほど、人員配置がきちきちで余裕がないのが原因なので、管理職だけでどうこうできる問題ではないのがつらいところですが、実際にパワハラ上司と名指されるのは自分なので、そこは気をつけるしかありません。

どうせ認めなくてはいけないことなのに、いちいち相手に嫌な気持ちを感じさせる必要はありません。
嫌な気持ちは部下に伝えるのではなく、「有給申請を気持ちよく受け取れないほど、人手不足で困っている」ことを、くりかえし経営陣に伝えるのが管理職の仕事です。