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有給休暇の原則

入社して6か月経過し、所定労働日数の8割以上出勤していると、10日間の年次有給休暇が発生します。

ほとんどの従業員が4月1日にいっせいに入社する会社であれば、10月1日に有給を発生させ、その後1年ごとに新たな有給日子を付与すればよいのですから簡単です。しかし、たいていの中小企業では、採用は年間を通して行われています。つまり、入社日がばらばらなので、6ヶ月後の有給の付与日もばらばらです。

有給の日数を管理する側からすると、これはかなりめんどうな状況です。

とはいっても、就業規則にきちんと規定し、原則どおりに運用することで、めんどうさはかなり軽減することができます。

まず、原則から言いますと、労働基準法で決まっている「入社して6ヶ月が経過すると10日付与」というのは、最低条件です。ですから、事務の都合によって、最初の付与日をずらす場合は、前倒し、つまり、6ヶ月より早く与えるのはOKですが、6か月より遅くするのは法違反となります。

月の途中に入社した場合

有給は月単位で管理しますが、入社日は月初めであるとは限りません。

たとえば、4月20日に入社した人の最初の有給付与日は10月20日です。10月1日を付与日とすることはOKですが、11月1日にするのは法違反です。

これをはっきりさせるためには、就業規則にこのように規定しておくとよいでしょう。

会社は、従業員に対し、入社日(月の途中に入社した従業員は、その月の初日に入社したものとする)から起算した勤続期間に応じて、下表の日数の有給休暇を与える。

勤続期間 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

また、月末締め以外の会社で、給与の計算期間に合わせて、有給休暇を管理したい場合は、上の例の赤字の部分はこのようにします。

賃金計算期間の途中に入社した従業員は、実際の入社日の直前の賃金計算期間の初日に入社したものとみなす

また、このように規定することによって、6か月より短縮された期間は、出勤率を計算するときには出勤したものとします。

一斉付与と公平性

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月途中に入社した場合は「前倒しにする」という原則で付与日をずらしても、6か月より短縮される期間が短いので、それほど問題にはなりません。

しかし、毎月毎月個別に付与するのはたいへんなので、年に1回基準日を決めていっせいに付与したい、という場合には、短縮される期間は数ヶ月になりますし、入社月によって有利不利が極端に出てしまいます。

たとえば、このような規定では具体的にどうなるでしょうか。

  • 4月1日から9月30日に入社した者は、入社後最初に到来する10月1日を入社6ヶ月とみなす。
  • 10月1日から3月31日に入社した者は、入社6ヶ月後に10日付与し、その後最初に到来する10月1日を1年6ヶ月とみなす。

4月1日に入社した人は、入社6ヶ月後の10月1日に10日間付与、翌年10月1日に11日間付与、つまり入社1年6ヶ月で21日間有給が付与されます。法定通りですね。

それに対して、3月1日に入社した人は、入社6ヶ月後の9月1日に10日間付与、その翌月の10月1日に11日付与、つまり、入社7か月後に21日間有給が付与されます。

法律的には問題ないのですが、公平性という面からは問題がありますね。

また、それまで「入社後1年経過して10日付与」という労働基準法の規定が、平成10年に現行の「入社後6ヶ月」に改正されたため、改正前に入社した人と、改正後に入社した人の間で、半年間のずれが出てきてしまいます。

このような事情もあり、就業規則の作成や改正を承った場合、基準日方式で運用したいというお客様には、年2回基準日を作る方式をおすすめしています。

ただし、それでも、人によっては入社翌月に10日間の有給休暇が発生することになり、公平という面から考えると、やはり問題があるのも確かです。

エクセルなどの有給管理表を利用する

従業員の間の公平性を重要なものとすると、ひとりひとり、入社日に応じて付与日が決まる、という法律通りの運用がいちばんです。

ただし、これでは事務がめんどう、という最初に述べた問題に戻ってしまいます。

有給が使用されれば、毎月残日数を減らしていく作業はどちらにしても発生します。

であれば、ネット上にも有料・無料含めてどちらもたくさんある、エクセルの有給管理表や、有給管理をするソフトを使用して、事務の負担を減らす、という方向性も考えられます。

有給休暇を個別に付与するのか、基準日を決めて一斉付与に付与するのか、従業員の間の公平と、事務負担をてんびんにかけて、会社ごとの事情に応じて決めていけばよいでしょう。

ただし、一斉付与の場合は、法律の基準よりも多くの有給を付与していること、多少不公平が出てきてしまうが、事務処理負担を考えて理解してほしい、という点を、従業員にきちんと説明しておくことが大切です。

 

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