タイトルを見て「あれ? 違うんじゃ?」と思ったあなたの記憶力は確かです。
元ネタは、約1年前に大騒ぎになった財務省の福田淳一・前事務次官のセクハラ問題について、麻生財務相がくりかえしたセリフです。
ただし、「パワハラ」ではなく、「セクハラ」ですね。
閣議決定までされています。

「セクハラ罪という罪はない」の答弁書、政府が閣議決定:朝日新聞デジタル

なぜわざわざ1年前の発言を持ち出したかというと、日本のハラスメント法制について、説明するのに都合がいいからです。
研修でも、たびたび使わせていただいています。
このセリフを言うと、みなさんまだ覚えてらっしゃいますからね。
時事ネタですので、いつまで使えるかわかりませんが。

「セクハラ・マタハラは法律で禁止されています」
という言い方をよくします。
これは間違いではないのですが、冒頭の話のように「セクハラ罪がある」=「セクハラを行なった個人が処罰される」ということではありません。
現行の法制(男女雇用機会均等法)では事業主にセクハラ・マタハラの防止義務が課せられていて、そのことについて言っているものです。
もちろん、行為者個人が刑事罰の対象になることもありますが、それは、強制性交等罪(元の強姦罪)、強制わいせつ罪、暴行罪、傷害罪、名誉毀損罪、侮辱罪等に該当した場合ということになります。

今回、「パワハラ防止法が成立」ということで、報道各社が大きく取り上げています。

パワハラ防止法が成立 企業に防止義務  :日本経済新聞

その内容も、上で説明した「セクハラが法律で禁止されている」という中身とまったく同じ構造になっています。
ですので、タイトルのように「パワハラ罪という罪はない」と言えてしまうわけです。
実効性に疑問がある、という話が出ているのも、このあたりを指しているのでしょう。

しかしながら、経営者・人事労務担当者の方たちにとっては、「個人への刑事罰はない」ということは、別に救いになる話ではなく、逆ですね。
法律では刑罰の対象にならないものに対して、社内規定で明確に禁止し、さまざまな対策を行わなければいけないということですから。
対策は、行政や司法がやるのではなく、企業に丸投げ、というところです。

丸投げされた側としては不満もあるかと思いますが、ハラスメント防止対策は「法律で禁止されているから」という以上の意味があります。
どこの会社でも「社内のコミュニケーションを活性化したい」とお思いですよね?
ハラスメント防止に真剣に取り組むと、不思議や、その願いがかなってしまうのです。
なぜそうなるのか? という点は、ハラスメント防止研修でいつもお話していますので、ぜひお問合せ下さい。