「うちの社員はどうも積極性がないんだよね」
「自分から意見を言わないので困っている」
こんなお話を聞くことがあります。
中小企業ですと、社長自ら採用しているところも多いので、実は、社長さんの好みが「物静かでしっかりしている人」だったりすると、同じようなタイプの社員が多くなってしまう、ということも考えられます。
そうなると社内の多くの人が「自分から話さない」わけですから、それが当たり前になってしまうんですね。
必ずしも、社内が賑やかなのがいいとは限りませんが、会議などの場で、意見があまり出てこないのは確かに困りものです。
積極的に話さない理由を考えるときに、上に書いたように「そういうタイプだから」としてしまうと、性格の問題になってしまい、「変えていくのが難しい」という結論になりがちです。
ちょっとここで発想を転換してみましょう。
話す人がいれば、その場には、必ず聞く人がいます。
聞く人の聞き方が、話し手に影響しているのではないでしょうか。
だれかが発言していても、そちらに注目せず、手元の書類ばかり見ている。
ふんぞり返って、視線は天井に向いている。
腕組みしたり、足を組んだりしている。
ペンをくるくる回したりしている。
うなづきもせず、じっと固まって聞いている。
会議のとき、発言者以外の人のようすが上に書いたようなものであれば、発言している人は、だんだん不安になります。
「自分の言っていることは、意味がないんだろうか?」「だれもわたしの言っていることに興味がないんだろうか?」
こんなふうに感じてしまいます。
さらに、話し終えた後に、話の内容についてだれも反応せず、「じゃ、次の人」と、スルーされてしまったら、そうとう積極的な人でも、だんだん自分から発言しようとしなくなるでしょう。
社員や部下が積極的に発言しないことで困っているのであれば、「発言しなさい」と促すのではなく、経営者や管理職が、まずは「しっかり聞いてあげる」ことが先決です。
「遠慮せずに、どんどん話していいよ」
「君の話は聞く価値があるよ」
「君の意見をもっと聞きたいと思っているよ」
「ちょっとくらい間違ったところがあっても、笑ったり叱ったりバカにしたりしないよ」
ということを、態度で示すのです。
別に難しいことではありません。
だれかが発言しているときは、視線をそちらに向ける。できれば、体の向きも発言している人に向ける。
体が向いているということは、意識がそちらに向いていることを示します。
そして、うなづき、「うん、うん」とあいづちをうってみる。
たとえば、数人の人に対してだれかが話をしているとき、そのうちのひとりだけがうなづきながら聞いていると、話し手はその人のほうを向いて話し出します。
それだけ、聞いている人の態度は話し手に影響を与えるのです。
そして、途中でさえぎったりせず、最後まで聞き、
「なるほど、◯◯さんは、△△という意見なんだね」と要約する。
もし質問があれば質問する。
会議のたびに経営者や上司がこのような行動を繰り返していれば、必ず社員の「積極的に話さない」という行動も変わってきます。
そして、社員同士の聞くときの態度も変わってきます。
「社員が積極的に話さない」と、相手の問題にするのではなく、「聞く側がどのようにしたらよいのか」と、自分の問題にする視点が必要なのです。