新型コロナウイルスの感染拡大により、ここ数年間、職場の宴会や懇親会は大幅に減少していました。
多くの企業が対面での集まりを控え、オンライン飲み会などの代替手段を模索してきました。
しかし、社会経済活動の正常化に伴い、最近では徐々に従来型の宴会が復活しつつあります。

この変化は、コミュニケーションの活性化やチームワークの強化という点で歓迎すべきものです。
一方で、久しぶりの宴会再開に伴い、ハラスメントのリスクも高まる可能性があります。
長らく対面での宴会を経験していなかったことで、適切な振る舞いを忘れてしまっている社員もいるかもしれません。

そこで本日は、職場の宴会におけるハラスメント防止について、管理職の皆様に知っておいていただきたい事柄をお伝えします。
宴会は楽しい場であるべきですが、同時に職場の延長線上にあることを忘れてはいけません。
適切な対応で、全ての参加者が安心して楽しめる宴会を作り上げていきましょう。

宴会は仕事の延長線上にある

多くの方が、宴会を「仕事を離れてリラックスする場」「アルコールと料理を楽しむ場」と考えているかもしれません。
しかし、管理職の皆様にとって、宴会も立派な「仕事の一環」なのです。
なぜでしょうか。
それは、宴会の本来の目的が「親睦を深める」ことにあるからです。
部下同士の関係性を良好にし、チームワークを高める機会として宴会を活用する。
これこそが、管理職である皆様に求められる役割なのです。

ここで重要なのは、管理職の皆様自身が酔っ払ってはいけないということです。
楽しむのは部下の役割であり、管理職は常に冷静な判断力を保つ必要があります。
自分自身が楽しむための飲酒は、プライベートな酒席に譲りましょう。
会社の宴会では、部下たちが安心して楽しめる環境を作ることに注力してください。

管理職自身のハラスメント防止が最重要

まず最も重要なのは、自分自身がハラスメントを行わないことです。
職場では優秀で仕事ができる方でも、宴席でアルコールが入ることで気が緩み、思わぬ言動でハラスメントをしてしまうケースが少なくありません。
このような一瞬の過ちが、長年築き上げてきたキャリアを台無しにしてしまう可能性があるのです。

例えば、酔った勢いで部下の容姿について不適切なコメントをしたり、プライベートな質問を執拗に行ったりすることは、重大なハラスメントとなります。
たとえ冗談のつもりであっても、受け取る側の感じ方次第で、深刻な問題に発展する可能性があります。

さらに、管理職がハラスメント行為を行うことは、部下のモチベーションを著しく低下させ、チームの士気にも悪影響を及ぼします。
信頼関係が崩れ、職場の雰囲気が悪化することで、業務効率の低下や優秀な人材の流出にもつながりかねません。

したがって、管理職の皆様には、まず自身の言動に細心の注意を払うことが求められます。
アルコールで判断力が鈍る前に、自分の発言や行動が適切かどうかを常に意識してください。
疑問に感じる言動は控え、部下の立場に立って考えることを心がけましょう。

ハラスメント防止は管理職の責任

宴会の場では、ハラスメントが起こる危険性が高まります。
ふだんはまじめでおとなしい人が、酒が入ることで、平素は抑えている言動が表に出てしまうこともあるからです。

だからこそ、管理職の皆様の役割が重要になってきます。
宴会前に、ハラスメント防止の注意喚起を部下に対して行うことが大切です。

具体的には次のような内容になります。

  • 酒の強要は行わず、断られたら素直に引き下がる
  • 異性に対する容姿や服装についての言及は控える
  • 不必要な身体接触は控える
  • 仕事についての説教はしない
  • ぞんざいな言葉遣い、あだ名で呼ぶ等は控える
  • 冗談やからかいのつもりでも相手を傷つける可能性のある発言は慎む
  • 個人的な質問やプライバシーに踏み込む話題は、相手のようすを見ながら慎重にすすめる
  • 許可なく写真や動画を撮影しない
  • SNSへの投稿はその場にいる人の同意を得てから行う

もちろん、「どの口で言ってるんだ」と思われないように、これは自分自身への注意事項でもあることを肝に銘じ、部下の前でも「自分自身も気をつける」と明言してください。

その場での介入とトラブル防止

注意喚起を行っても、問題行動が起きてしまう可能性はゼロではありません。
そのような場合、管理職の皆様にはその場で即座に介入することが求められます。

ただし、ここで重要なのは、一方的に注意するのではなく、まずどのような状況になっているのか、当事者に尋ねることす。
お酒が入っている場で、それも多くの人が見ているところで一方的に注意されると、相手も引っ込みがつかなくなり、トラブルに発展する可能性があります。

「なんだか説教してるみたいに見えるんだけど、違う?」
のように軽い口調でよいので、I message (「わたし」が主語の言い方)で、決めつけを避けましょう。

または、問題行動をしている側を注意するのではなく、困っている相手に自分自身が話しかけて、話題を変えてしまうのもよい方法です。

適切な介入を行うためにも、管理職の皆様は飲酒を控えめにし、常に冷静な判断ができる状態を保つことが大切です。
部下たちの様子を見守りながら、必要に応じて適切に対応できるよう、心がけてください。

まとめ:安全で楽しい宴会のために

ここまで、宴会でのハラスメント防止についてお話してきました。
管理職の皆様にとって、宴会は「仕事の延長」であり、「親睦を深める場」であることを改めて意識していただければと思います。
事前の注意喚起、その場での適切な介入、具体的な注意点の共有。
これらを実践することで、誰もが安心して参加できる宴会を実現できるはずです。

そして、何よりも大切なのは、部下の声に耳を傾け、お互いの考えや感じ方の違いを理解し合える環境を作ることです。
宴会では、自分自身がしゃべるのではなく、部下の話を傾聴するという気持ちで臨むのがよいでしょう。
このような姿勢こそが、ハラスメントのない、健全な職場文化を育む基盤となるのです。

最後に、管理職の皆様自身の飲酒についても再度強調しておきます。
会社の宴会では、自分自身が楽しむことよりも、部下たちが安心して楽しめる環境を作ることに注力してください。
自身の飲酒は控えめにし、常に冷静な判断ができる状態を保つことが重要です。
管理職としての責任を果たすことで、より良い職場環境づくりにつながるのです。

安全で楽しい宴会は、職場の雰囲気を良くし、チームワークを高める素晴らしい機会となります。
部下と自分自身を守るためのハラスメント防止の心得を、ぜひ実行してください。