好きな人をデートに誘ってセクハラになるのはどんなときか

職場に好ましい異性がいて、意を決してデートに誘う。ここまではほほえましい話なのですが、そのときに気をつけたいことがあります。

下の引用は、厚労省が出しているセクハラの定義の中の一部です。

○性的な内容の発言の例
性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(うわさ)を流すこと、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなど

労働者の皆さまへ ハラスメント防止のためのハンドブック(平成30年9月作成) [PDF形式:1,555KB] (強調は引用者)

食事やデートに誘うだけでも、セクハラになってしまうことがあるのです。

でも「執拗な誘い」って、何回までならOKなんだろう? どこから「執拗」となるのか? と、とまどう人もいるでしょう。

「執拗」というのは、実は回数ではありません。誘われた人が断っていたり、気が進まない様子なのに、相手の意思を無視して、誘い続けることです。ですから、たとえ1回でも、「え? この日はだめ? じゃあ、次の週は? 来月は? 映画がいやなら、海でも見に行こうか? 食事はすてきなイタリアンの店はどう? とにかく1回でいいからつきあってよ!」と、あまりにがんばると、相手は「しつこい!」つまり、執拗だと感じてしまいます。

もちろん「1回断られたくらいで引き下がってはオトコがすたる」とばかりに、手を変え品を変え、何度も誘い続けると、当然ながら「執拗」ということになります。

「今はだめでも、自分の気持をアピールし続ければ、いずれ相手もこちらを向いてくれるかも」というのは、間違っているとはいえませんが、職場の中では、「アピールし続ける」という行為自体が、迷惑と受け止められる可能性が高いのです。

同じ職場の人であれば、誘いを断りたくても、人間関係がぎくしゃくして、今後仕事がやりにくくなるのではないか。相手が先輩や上司だったりすると、断ることでなにか報復されるのではないか、会社にいづらくなってしまうのではないか、という恐れを感じるのがふつうです。かといって、好きでもない人とプライベートでおつきあいしたくない。「誘われる」ということじたいが、大きなストレスになってしまうのです。

こんな葛藤を相手に感じさせてまで自分の気持を伝え続けるのは、自分本位というほかありません。好きな相手が、困惑し、悩み、場合によっては恐怖を感じるのが望むことでしょうか? 相手を「好き」なのではなくて「手に入れたい」だけではないでしょうか。

そうは言っても、相手の断り文句は、「その日はちょっと都合が悪くて」「(誘われた内容)にあまり興味がなくて」程度がふつうです。「ふたりきりはちょっと・・・ほかの人も誘っていいですか?」とでも言ってくれれば、「自分は恋愛対象として見られてないな」とわかるのですが、たいてい問題になるのは「ほかの用事」「誘いの内容」です。「あなたとは行きたくない」なんて言う人はいませんね。

だれかに誘われて断るというのは、それ自体なかなか難しいことです。しかも恋愛がらみであれば、断られた相手は必ず傷つきます。人の好みはそれぞれ、だれかにふられたからといっても、あなたの魅力や人間性が否定されたわけではない、と言ってもそれは理屈です。あなたの好きになった相手が心優しい人であればあるほど、「相手を傷つける」という可能性の前にひるんでしまい、うやむやな返事を続けることで、ほんとうの気持ちが伝わらなくなってしまいます。

こうなると「相手がほんとうに嫌がっているのか、忙しくて時間がとれないだけなのか、どうやって判断したらいいんだ・・・」と悩んでしまいますね。

でも、実は簡単な判別方法があります。

あなたとデートするのはやぶさかではないのだが、ほんとうに用事があったり、誘われた内容が趣味じゃなかったりしたら、相手の人はどう答えるでしょうか。

「その日はムリなんですけど、来週なら空いてます」とか「映画はそんなに好きじゃないんですが、アウトドアが好きなんです。ハイキングなんてどうですか?」と、相手のほうから、対案を出してきます。

このような対案がなくて、単に「忙しい」「その日はちょっと」「◯◯は趣味じゃなくて」一辺倒であれば、残念ながらあきらめたほうがいいですね。「1年後まで予定でいっぱいです」とまで言われたら、おとなしく引き下がって下さい。

好きな相手に拒否されることはショックですが、好みはそれぞれなので、あなたが悪いわけでも、相手が悪いわけでもありません。恋愛関係になれなかったとしても、職場の仲間として大切な存在になることはできます。その人のことが好きなのであれば、相手の気持ちを尊重してあげましょう。