新卒社員が入社して1ヶ月が過ぎました。

やはりZ世代は難しい、と感じている管理職の方も多いのではないでしょうか。

いままでも若い世代と中高年世代のギャップは常にありましたが、少子高齢化で新卒の奪い合いが起きている今、「社会人なんだから会社の価値観に合わせなさい」といういままでのやり方が通用しなくなり、管理職側がZ世代に歩み寄ることが求められています。

とはいえ、会社の秩序や仕事のやり方に慣れてもらわなければいけない面も当然あり、どのようなところで歩み寄るべきなのか、迷っているのはないでしょうか。

今回は「キャリア」という概念をもとに、既存世代とZ世代の違いを考え、歩み寄るポイントを探してみましょう。

そもそも「キャリア」とは

日本の公教育で、キャリア教育が必須になったのは比較的最近のことです。
2009年に小中高の学習指導要領が改定されてキャリア教育が取り入れられ、大学でキャリア教育が義務化されたのは2010年です。

それ以前、学校教育にキャリア教育がなかったわけではないのですが、「職場体験」「進路指導」の枠組みを出ることはありませんでした。

では、中高年世代になじみ深い「職場体験」「進路指導」以外のキャリア教育とはなんでしょうか。

キャリア教育における「キャリア」とは、個人の生涯にわたる仕事や活動の軌跡であり、職業人生の積み重ねを表します。単なる職歴ではなく、個人の価値観、スキル、経験、専門性などを含む、より広範な概念として捉えられています。キャリアは、自己実現社会貢献と深く結びついており、個人の人生の意味や目的とも密接に関連しています。

キャリア教育を受けたZ世代は、キャリアという言葉を身近に感じ、自分自身の人生や仕事と結びつけて考える傾向があります。
それに対して、キャリア教育を受けていない世代では、職業生活とは会社から与えられるもので、「仕事に自分を合わせる」という傾向が強いですね。

Z世代と管理職世代とのすれ違い

キャリアという概念を身近に感じているかどうかで、下のようなすれ違いが起こってきます。

そこを理解してZ世代と対話するためには、どうしたらいいのでしょうか。

1.自己実現と社会貢献の融合

「自己実現」「社会貢献」というふたつの言葉が、Z世代のキャリア観のポイントです。

Z世代は、自己実現と社会貢献を同時に追求する傾向が強いのが特徴です。
彼らは、自分らしいキャリアを築きながら、社会の課題解決に貢献したいと考えています。
仕事を通じて自分の価値観を実現し、社会に対してポジティブなインパクトを与えることを重視するのです。

この点は、管理職世代とは大きく異なるキャリア観だと言えるでしょう。

管理職世代では、「仕事は仕事」「社会改革は社会改革」という意識が強いように見えます。
仕事を通じて社会貢献する、というのは、たんなるお題目、「他人ごと」だと考えている人が多いのではないでしょうか。

しかし、企業が発展するためには、社会貢献、地域貢献という視点は欠かせません。

Z世代は、この点を「自分ごと」として考えており、そこを理解することが重要です。

2.ワークライフバランス重視

Z世代と管理職世代の間では、ワークライフバランスについての考え方の違いからすれ違いが生じることがあります。

例えば、Z世代は仕事と私生活のバランスを重視し、柔軟な働き方を求めますが、管理職世代は自分の都合よりも会社の都合が第一と考える傾向があります。

コロナ禍でテレワークや在宅ワークを実施していた会社が、社員に出社を求めると、最も敏感に反応するのはZ世代であり、転職を考える契機になることも十分あります。

ワークライフバランスは、キャリアという面から考えると、長い職業人生の中でやりがいをもって働くために重要なことです。
ここを「個人のわがまま」「自分勝手」ととらえてしまうと、Z世代との会話は成り立ちません。

こうした違いを理解し、互いの価値観を尊重することが、世代間のすれ違いを解消する第一歩となります。

Z世代から学ぶ姿勢をもつ

Z世代と管理職世代の間で、円滑なコミュニケーションを築くことは容易ではありません。
しかし、お互いの価値観や考え方を理解しようと努力することが、世代間のギャップを乗り越えるための第一歩となります。

管理職世代は、Z世代の発想力やデジタルスキルから学ぶことが多いはずです。
また、自分がいままで「当たり前」だと思っていた会社の慣習や働き方をZ世代の目を通して見ることによって、不合理な点や不適切な点に気づくことも多々あるでしょう。

そのときに、「うちの会社(業界)は特殊だから」「社会人ならこのくらい当たり前」という従来の考えに固執していては、Z世代は早々に見切りをつけて退職の道を選ぶ可能性が高いのです。

Z世代は、社会人経験が浅いからこそ会社への期待が大きく、しかも自分の期待が満たされないと「ここはもうだめだ」とすぐに諦め、早期に退職してしまう傾向があります。

管理職世代は、いままでの経験から「一朝一夕に会社は変わらない」ということをよく知っています。
そこで退職するのではなく、「会社に自分を合わせる」ことで、生き残ってきたのが管理職世代です。

しかし、「すぐにはムリだが、その方向で努力する」という姿勢を、Z世代に示せているでしょうか。
やり方が違うだけで「すぐにあきらめてしまう」というのは、Z世代と同じではないでしょうか。

管理職世代は、「未熟な新入社員に教えてやる」「社会人としては自分のやり方が正解」という考え方が強いものです。
そこから一歩出て「対等な個人」として向き合うことが求められているのです。

Z世代の力を組織の成長に活かすには、キャリア支援の取り組みと組織文化の変革が欠かせません。
Z世代のキャリア志向に合わせた研修制度や、メンター制度の導入などが考えられます。

また、Z世代が求める社会貢献の機会を提供し、仕事を通じて社会的価値を創出できる組織文化を築くことも重要でしょう。

多様性を尊重し、柔軟で自律的な働き方を推進する組織へと変革していくことが、Z世代とともに組織の未来を築くための鍵となるのです。