会社を通して受診する、年1回の健康診断。これは、労働安全衛生法で義務付けられているものです。

義務付けられている健康診断は三種類あるのですが、ここでは、「一般健康診断」、みなさんおなじみの、年1回の健康診断についてお話します。

会社には受けさせる義務があり、労働者にも受ける義務があります。費用については、原則として会社が負担することになっています。

健康管理は基本的に自己責任のはずなのに、会社がそこまで負担するのはなぜでしょう。
法律で決まっているから、だけではありません。
事業主には「安全配慮義務」というものがあり、従業員が健康的に仕事に打ち込めるように、さまざまな対策や配慮が必要になります。

「義務」ですから、それをしないでいて、従業員が健康を損ね、会社を訴えたりした場合には、「安全配慮義務違反」ということで、損害賠償をしなければならなくなったりします。

また、従業員に元気に働いてもらうためには、病気の早期発見、予防が大切になります。
病気によっては、職場の環境が原因のものもあるので、職場環境改善のために、従業員の健康状態を調べる必要もあります。

単なる福利厚生ではなく、リスク管理、そして、会社の業績に結びつくのが健康診断なのです。

その健康診断には重要なポイントがふたつあります。それぞれ、見ていきましょう。

ポイント1:対象者は正社員だけではない

さて、パート社員が業務の多くの部分を担っている会社も多い中、健康診断の対象者は、正社員だけでいいのか?という疑問が出てきますね。

まず、健康診断を受けさせる対象者は、法律では「常時使用する労働者」となっています。

具体的には、下のふたつの条件のどちらにも当てはまる人です。

  1. 1年以上、勤める予定の人。もちろん、期限を決めずに勤めている人も含みます。
  2. 1週間の労働時間が、一般の労働者(正社員)の3/4以上である人。

2については、正社員の労働時間が週40時間であれば、30時間以上働いている人ということになりますね。

パート・アルバイトといっても、この条件に合致する人は、健康診断を受けさせなければなりません。
また、2の条件にはあてはまらないが、1週間の所定労働時間がいわゆる正社員の1/2 以上の人も、健康診断を受けさせるのが望ましいとされています。(努力義務)

派遣社員については、健康診断を受けさせなくてはならないのは、派遣先ではなく、派遣元(派遣会社)です。
ただし、健康診断の結果、健康状態になんらかの問題があるとわかった労働者に対して、配慮する義務は、派遣先にもあるので、注意が必要です。

ポイント2:事後措置が重要

最初に見た、会社の側からのリスク管理、従業員のパフォーマンスをあげるための健康管理という面からは、健康診断の事後措置が重要になります。

健康診断はちゃんと行っていて、基本的には全従業員が受診していても、所見があった従業員に対して、再検査や精密検査を勧奨し、全員きちんと受けるようにしているでしょうか。

また、医師の意見をふまえて、就業上の措置を行う必要があります。
具体的には下記のようなものです。

  • 労働時間の短縮や時間外労働の制限
  • 出張回数の制限や労働負荷の制限
  • 就業場所や部署の変更や夜勤業務の減少

ここまでやって初めて、会社の健康診断についての義務が満たされるのだと考えておくとよいでしょう。