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「時間外労働」について、会社が認めないとき

きのうの記事について、こんな質問をいただきました。

ここでの「時間外労働」とは、会社もそれと認めたものでなくてはいけないのでしょうか?

なおまるさん、大事なところを質問していただき、ありがとうございます。

3ヶ月の待機期間なしで失業給付がもらえる「特定受給資格者」であると認められるための条件として、この4月から新たに次のものが加わっています。

長時間労働があった場合

改正前

辞める直前3ヶ月間すべて、45時間を超える時間外労働があった。

改正後
  1. 辞める直前6ヶ月のうち、連続した3か月以上の期間で45時間を超える時間外労働があった。
  2. 辞める直前6ヶ月のうち、1ヶ月だけでも100時間を超える時間外労働があった。
  3. 辞める直前6ヶ月のうち、連続した2か月以上の期間で、平均して月80時間を超える時間外労働があった。

この中の「時間外労働」があったかどうかについて、会社が認めない場合はどうなるか、ということですね。

時間外労働について、いわゆるサービス残業でタイムカードに正しい時間が残っていない場合や、そもそも、会社が労働時間の記録自体していないというケースも十分考えられますね。

そのような場合は、どのようになるのでしょうか。

労働者の主張だけでは認められない

離職票に事業主が書いた離職理由と、本人が公共職業安定所の窓口で話した離職理由が食い違う場合は、安定所が判断して、離職理由を決定します。

ここにいう「正当な理由」とは、被保険者の状況( 健康状態、家庭の事情等) 、事業所の状況( 労働条件、雇用管理の状況、経営状況等) その他からみて、その退職が真にやむを得ないものであることが客観的に認められる場合をいうのであって、被保険者の主観的判断は考慮されない。(強調は引用者)
雇用保険に関する業務取扱要領(52203)

つまり、被保険者が「基準以上の長時間労働がありました」と言っても、それだけでは認められません。

実際の対応は

当事務所で作成し、提出を代行した離職票の離職理由について、被保険者の方が「会社の書いた理由とは違う」と主張しているときに、職業安定所から内容をたずねる電話がかかってきます。そのとき安定所側は、「なにか資料はありますか?」という言い方をしてきます。

こちらは、会社にあるタイムカード(出勤簿)や賃金台帳を元にお答えしますが、その結果、被保険者の方の主張が認められたかどうかまではわかりません。

こういう連絡があったときには「特定受給資格者が出たことは、会社でも把握しておきたいので、そういう結果になったら教えて下さい」と頼み、担当者の方は「わかりました」と了解してくれます。しかしその後、「被保険者の主張が認められ、特定受給資格者になりました」という連絡が入ったことはないので、会社の持っている資料とは違う主張をしても、認められるのが難しいのかもしれません。もっとも、連絡を担当者の方が失念している可能性もありますし、それほど多くの例ではないので、このへんはなんとも言えません。

客観的資料が必要

「雇用保険に関する業務取扱要領」には、また次のような記述があります。

事業主と労働者との間において、主張する離職理由が相違する場合は、住居地管轄安定所からの照会がなされた場合に応じられるよう⑦欄に記載されている事項を事業主から客観的資料等により確認した内容及び両者で主張が異なる事情について事業主より聴取した内容(離職の理由「5の(2)労働者の個人的な事由による離職」の場合は事業主が離職者から把握している範囲で確認する。)を、離職証明書の安定所記載欄(下欄)に記載しておく。(21502)

ここでも、基本的に「客観的資料」によって確認し、事情については事業主に聴取する、となっています。

さらに、その下には次のように書かれています。

以上のほか必要があると認められるときは、所得税に関する書類、社会保険関係等の資料を提出させ、又は自ら調査する。さらに必要があるときは、事業所に赴くか、又は監察官に連絡して調査を依頼し、その結果によって判断する。

このように、離職理由を判断するため、会社に立ち入り調査することもあるようです。

離職理由について会社が書いたものとは違う主張をするときは、会社に対抗するために、なんらかの「客観的資料」を用意しておく必要があるでしょう。

また、職業安定所が決めた離職理由について不服がある場合は、審査請求、再審査請求、さらに、行政訴訟ができるという制度になっています。

判例を見ると、個人の書いたメモ等も資料として認められることも多々ありますが、職業安定所の段階で、それを元に判断がされるかどうかは、残念ながらはっきりとは言いかねます。行政の窓口では、担当者次第という面が大きいのです。

 

 

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