人前でしゃべるのが苦手。
お客様に提案してもうまくいかない。
こんな悩みを持っている人は多いでしょう。

わたしもそのひとりでした。
でも、いまでは社労士業の傍ら、年間50回以上の講演や研修をこなしています。
「わかりやすかった」という感想をいただくこともたびたびです。

人前で話す、緊張する相手の前で話すことを、「プレゼン」という言葉で総称しますが、なぜプレゼンがうまくいかないのか、を考えてみましょう。

残念なプレゼンを見ると、努力が足りないというよりも、努力の方向自体が間違っている、と思うことが多いのです。

次の3つチェックポイントを考えてみてください。
努力するのはそれからです。

1.聴衆のニーズをとらえていない

いろいろな会場で研修をしていますが、まれに、冒頭の5分くらいをお話すると、参加している方たちが妙な雰囲気なのに気づくことがあります。

この人はいったい何を言ってるの?
なんのためにここでしゃべってるの?
というハテナマークが頭の上に浮かんでいる感じです。

主催者様から直接ご依頼いただく場合は、事前の打合せを直接、ある程度時間をかけてするのでそういうことはないのですが、間に入っている会社の担当者との打合せがなんらかの理由でうまくいかなかった場合、主催者様のニーズとこちらの提示しているものが合わないということがあります。
または、主催者様と参加者の方たちの研修に対する意識がずれている、ということもあります。

つまり、参加者の方たちはパスタを期待して来ているのに、こちらはお蕎麦を出してしまった、という状態です。
いくらおいしい蕎麦でも、注文と違います、と言われて戻ってきてしまいます。

残念なプレゼンは、このパターンがけっこうあります。

この製品はここがすばらしい。
この新しい情報を見てください。知ってください。

これ自体は別に悪くないのですが、自分の言いたいことを言うだけでは、プレゼンはうまくいきません。

聴衆はなにを求めてあなたの前に来ているのか。
あなたは聞き終わった聴衆にどのような行動をしてほしいのか。

この点を意識することが、プレゼンの出発点です。

ちなみに、冒頭のようなへんな雰囲気に気づいたらどう収拾するかというと、その場で参加者にお尋ねします。
「事前に、どのようなテーマだと聞いてきましたか?」
「きょう、ここに来るのに、上司の方になんと言われて来ましたか?」

そして、求められているものはなにかを把握したら、その場で軌道修正します。

もちろん、そんなことにならないためには、事前に聴衆の情報を徹底的に集め、なにを期待しているのかを考え、自分がしてほしいことに導く動線を考える、ということが必要です。
プレゼンは、あなたが言いたいことを言う場ではありません。
あなたの言っていることを聞いた側が、どのように行動するのか決める場なのです。

2.パワポや資料に頼りすぎている

毎晩遅くまで残業して、すばらしいパワーポイントを作成した。
やれやれ、これでプレゼンの準備ができたぞ。
あとは、パワポに沿って説明すればOKだ。

こんな意識になっていないでしょうか。

映写するパワポや、プリントアウトした資料は、あくまであなたの話を補完するものです。
プレゼンの中心は、あなたがする話です。

パワポや資料が完成してからが、プレゼンの準備の本番です。

まずは、原稿を作る。
原稿を録音または録画して読んでみる。
録音・録画をチェックして不自然な点やわかりにくい点を直す。
さらに、原稿をおいて、聴衆が前にいるつもりで話して録音・録画する。
さらにチェックして直す。
さらにリハーサルを繰り返す。

とても時間もかかり、消耗する作業ですが、美しく動きのあるパワポを作るのに時間をかけるくらいなら、ここに時間をかけてください。
そのほうが、ずっと効果があります。

3.聴衆を敵と思っている

失敗したら恥ずかしい。笑われる。
本番のとき、あがる原因はこのような意識にあります。

こう考えている人の頭にある聴衆は、あら捜しをしようと意地悪な目で見ていて、なにか失敗があれば笑いものにする敵です。

でも、現実は大きく違います。

聞いている多くの人は、あなた自身に興味があるのではなく、あなたが語る内容に興味があります。

もしプレゼンが期待はずれであれば、時間のムダになるので、がっかりしたり腹を立てたりする可能性はありますが、あなた個人の失敗には興味がありません。

あなた個人の失敗に興味がある人も一部にはいます。
あなたの上司、同僚、仲間たちです。
しかし、その興味は「失敗すればいい」ではなく、「失敗なくうまくやってほしい」という期待や応援です。
かりに失敗したとしても、笑いものにするのではなく、「残念だったね」「この点はよかったよ」「次はこうするといいよ」という反応でしょう。
敵ではなくて、味方ですね。

プレゼンは、あなたがすばらしいパフォーマンスをする場ではありません。
聴衆は敵ではなく、一部は味方、大部分はあなたの敵でも味方でもなく、あなたの持っている情報に興味がある人たちです。

まずは、味方がいるという意識をもち、うなづいている味方の顔を見て、応援されていることを感じましょう。

そして、自分自身がすばらしいパフォーマンスをすることではなく、自分の話がどれほど聴衆に伝わっているか、ということに意識を集中しましょう。

プレゼンの前、そしてプレゼン本番のとき、この3つのチェックポイントをクリアしていれば、あなたのプレゼンは大きく変わるはずです。
ぜひ、意識してみてください。