企業説明会「机にペットボトル」で話を聞く学生は落とす! 人事が見ているマナー(日経カレッジカフェ) – Yahoo!ニュース

ペットボトルを机の上において人の話を聞くのは、マナー違反なのか?
ネットでかなり盛り上がったトピックです。

企業からすれば、「初歩的なマナー程度すら知らないのか」と見てしまいます。「説明会で社長が講演しているときに、お茶を飲んでいる学生がいた。社長は降段後、『あの学生の名前をチェックして、必ず落とすように』と静かに怒っていた」(機械メーカー)

わたし自身は、講義中にペットボトルの飲料を飲むことがマナー違反だとは考えていません。
逆にセミナーや研修中に水分を取りながら話を聞くことを推奨しています。リラックスして聞いてほしいからです。
水分どころか、アメやチョコレートなどお持ちだったら、疲れたら食べながら聞いて下さい、と、よく言っています。
とくに1日の研修ですと、午後になると疲れて集中力が欠けてきます。そんなときは、糖分をとるのが疲労回復に効果的ですからね。

しかし、そこは今回の論点ではないので、わたしの意見はおいておいて、「人の話を聞きながらペットボトルの飲料を飲むことはマナー違反だ」という前提で話をすすめます。

どのような人を採用したいのかはっきりさせる=「人材要件」

正直、若い人が根拠のわからない謎マナーに振り回されるのは気の毒な話だと思っています。
他人を「失礼なやつ」「ものを知らないやつ」という観点でジャッジするのも好きではありません。

いやいや、採用するのだから、なんらかの観点でジャッジするのは当然でしょ? と思われるでしょうが、その「観点」、ちゃんと決めていますか? という話です。

採用するとき、どのような人材がほしいのか、「人材要件」を定義づけておくことが必要です。
つまり、ジャッジするための「観点」ですね。
職種ごとにも違い、新卒か中途採用かでも違ってきます。

おそらく、この企業も人材要件を定義しているはずです。
そこにはどのように書かれているでしょうか。

人材要件を定義するとき、次の3つに分けて検討するのが一般的です。

  • Must:必要なスキルや経験、志向性
  • Want:できれば持っていてほしいスキルや経験、志向性
  • Negative:こういう人はアウトという態度等

この場合だと、Negative に「ビジネスマナーの知識がない」というのが入っている、もしくは、Must に「基本的なビジネスマナーの知識があり、周囲に不快感を与えないよう適切に行動することができる」と書いてあるとか。

アドバイスするとしたら、入社後に知識を与えることができる、ちょっと注意すれば直すことができるような内容は、Must に入れないようにしましょう、ということです。
ましてや、Negative というのは、ほかにいいところがあっても、これがあったらダメ、というものなので、なおさら慎重に考えるべきでしょう。

社長の鶴の一声はアリかナシか

引用部分でもうひとつ気になったのが、社長が一存で落とすということを決めている点です。

人事の最終決定権は、通常社長にありますので、とくに問題ない、という考え方もあります。
しかし、まだ面接もしていない段階で、社長の考えひとつで決めていいのでしょうか。
現場の声を聞き、人事部で積み上げた人材要件は無視されているのではないでしょうか。

しかも、社長の指示の理由は、「マナーを知らない、守らない人材は当社に必要ない」ということではなく、「社長たる自分に対して失礼な態度」への怒りだと読み取れます。

権威主義的であっても、実力があり、会社をひっぱっていく社長はいくらでもいますから、社長の好みで決めてOKといえばOKです。
しかし、社長は王様ではないのですから、ガバナンスという意味ではだいじょぶかいな、という気がするのも確かです。
どこのだれかわからない社長なので、無責任ついでに感想をもうひとつ言えば、「この程度のことで、いちいちめくじら立てて、器がちっちゃいねぇ」ということです。

こういう落とし方ができるのですから、この会社は、採用に困っていないのでしょう。
ただ、それがいつまで続くかはわかりません。
これから若い人の絶対数はどんどん減っていきます。

この記事は、就活生へのアドバイスですから会社の意志が絶対のように書いてあります。
もしあなたが、人事担当だったり、採用に権限を持っている立場の人であれば、「そうそう、こんな学生はありえない」と考えるのは危険です。
「会社も応募者に選ばれている」という観点が、ぜひとも必要なのです。

細かい、根拠も怪しいビジネスマナーにこだわる会社。
社長の鶴の一声で、社員が積み上げてきたものを否定できる会社。
こういう会社に入りたいと思う学生がどれだけいるか、という観点で考えてみましょう。