退職するときに、会社にほんとうの理由を言う人はあまりいません。
どうせ辞めるのだから、いまさら会社への文句を言ってもしかたない。
円満退職しないと、次の就職に差し支えるかも。
そんな気持ちで「家庭の事情」等、当たり障りのない理由を言ってやめても、実態は、長時間労働やセクハラ・パワハラ、人間関係で精神的に追い詰められてもうムリだった、ということがままあります。

メンタル不調の症状があれば、退職前に必ず医療機関にかかっておこう

そんな事情で、いま、退職しようかどうか考えている方に、重要な情報があります。

それは、メンタル不調の症状について、退職前に必ず医療機関にかかっておいて下さい、ということです。

ケガや内科的な病気で退職しようという場合に、医者にかからない人はいません。
しかし、精神疾患の場合、受診すれば明らかに病名がつくような状態の場合でも、医療機関に行かずに、そのまま退職してしまうということが珍しくありません。

会社から離れて、別の環境になったら、メンタル不調もすっかりなくなった。
いまは、元気に働いている。
こういう展開になれば、退職前に受診しようがしまいが、その後の生活にはあまり関係ありません。
もちろん、調子の悪いときに早めに診てもらうのはたいせつなことなので、受診自体をおすすめすることには変わりないのですが。

問題は、1年半たっても精神疾患が回復せず、働けなかったり、生活に支障をきたしているような場合です。
生活に支障をきたしている状況が障害等級に該当すれば、障害年金の申請が可能になります。

障害年金には、障害厚生年金と障害基礎年金があります。
初診日の時点で厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金、初診日の時点で国民年金に加入していた場合は、障害基礎年金の対象になります。

もうおわかりですね。
会社に勤めている(≒厚生年金に加入している)間に、初診日があるようにしてほしいのです。

症状は勤めているころからかなりひどかったけど、医者に行ったのは退職後、では障害厚生年金の対象になりません。
これはもう決まっていることなので、動かせません。
だいじなのは初診日です。

障害基礎年金より障害厚生年金のほうがよい理由

なぜ障害基礎年金より障害厚生年金のほうがいいのか。

まず、障害年金をもらうには、「保険料納付要件」というものがあり、初診日より前に未納の期間があると、年金の申請自体できないことがあります。
1)初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

国民年金を納付するだけでなく免除でもOKなので、経済的に苦しい場合は免除申請しておけばいいのですが、つい放置したりしていると、この保険料納付要件にひっかかってしまうことがあります。
しかし、厚生年金の場合は、給与から天引きされ会社が払うので、未納になるということはありません。
とくに、退職前に在職期間(厚生年金加入期間)が1年2ヶ月以上あれば、保険料納付要件はその時点でクリアしています。

次に、支給される金額は、基本的に障害基礎年金より、障害厚生年金のほうが多くなります。

さらに、障害基礎年金は2級までですが、障害厚生年金は3級まであり、より軽い症状でも年金が受給できる可能性が出てきます。

初診日から1年6ヶ月後から1年9ヶ月の間にもう一度受診して診断書をもらう

障害厚生年金を受給するのに、もうひとつたいせつな日があります。
それは、「障害認定日」です。
初診日から病状が長く続き、1年6ヶ月たっても治らない、または症状が固定している、そういう場合に障害年金の申請ができるのですが、初診日から1年6ヶ月すぎた日を「障害認定日」といいます。

原則として、障害認定日から3ヶ月の間に、医療機関で障害年金用の診断書を書いてもらい、申請します。
この時期を過ぎても申請できないわけではないのですが、やはり証明するのがたいへんになりますので、この時期に診断書を手に入れるようにして下さい。

自分の状況にあてはまるかどうかは、ネット記事だけで判断せず、専門家に確認する

最後に、この記事に書いてあるような状況のときだけでなく、一般の方、とくにスマホが当たり前になっている若い方を見ていて、感じることを書いておきます。

ネットを見れば、ご自分の状況にあてはまっているのではないか、という記事はたくさん出てくるでしょう。
いま書いているこの記事もそうですが、多くは原則的なこと、大半の人にあてはまりそうなことしか書いていません。
あなたの状況が、その記事と同じで、記事に書いてあることがそのままあてはまるかどうかは、実はよくわかりません。

そのあたりの判断は、とくに知識のない一般の方には難しい面が多いのです。

また、記事自体も、厚生労働省や年金機構などの公のものを除くと、専門家から見ると、言葉足らずだったり間違っていたりすることもよくあります。
記事は正確だが、読んでいる側が、自分に都合よく思い違いをしているというのもありがちなことです。

ですから、自分の場合はどうなのか、どのように行動したらよいのか、という点については、一度専門機関、専門家に相談してみることが大切です。

今回の場合、専門機関は年金事務所、専門家は障害年金の受給支援をやっている社労士、ということになります。

メンタル不調の場合、知らないところに電話して聞く、足を運んで相談するということは、かなりたいへんになることはわかっていますが、周りの助けを借りるなどして動くようにして下さいね。

 

 

Footnotes   [ + ]

1. 初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと