腕組みするクセで相手を遠ざけていませんか?

経営者、管理職の方。そして、子供といっしょに暮らしている方。部下や子供の話を聞くときに、どういう姿勢で聞いているでしょうか。

けっこう多いのが腕組み。これは、クセになっている人もたくさんいそうです。

ボディーランゲージが意味するもの

ボディー・ランゲージという言葉がありますが、口から出る言葉だけでなく、話すときの姿勢もいろいろなことを語っています。

腕組みが発しているメッセージは「拒絶」「防御」「威圧」です。この写真のように、体の前で手でバッテンをするのと、同じ効果があります。座っていて、足を組むのも同じです。

ちょっと待って、自分はそんな意図はないよ。と、弁解したくなりますね。でも、自分の意図と相手への伝わり方は、必ずしも同じではありません。そこを意識する必要があります。

ほかにも、相手を威圧する動作として、手を腰にあてる、両手を背中で組む、などがあります。どちらも、胸を張って腰が反り気味になりますね。

これらは、「堂々とした自分」や、「自信を持っている」ことを示す動作ですが、相手から見ると、話しかけやすいとはいえません。こういう動作が必要なときもありますが、相手の話を聞こうとするときには、不向きです。

腕組みや、腰に手を当てる、背中で手を組む、これらの動作は、それ自体が悪いわけではありませんが、それを使うべきときがあります。クセになっていて、不適切なときに使っていないか、点検してみましょう。

部下や子供によく話しかけているのに、相手はいつも逃げ腰。そんな自覚があったら、話している内容に気を使うのはもちろんですが、言葉遣いや声のトーン、ボディーランゲージにも気を使うべきです。腕組みするクセで相手を遠ざけてしまっているとしたら、バカバカしいですね。

だれかと話すとき、適切なボディーランゲージとは

それでは、だれかと話をするときに、相手が話しやすくなるようなボディーランゲージはどのようなものでしょうか。

1.まっすぐ立つ・背中をまっすぐにして座る

反り返るのはよくありませんが、かといって小さくなる必要もありません。自然な姿勢でまっすぐ立ちましょう。

イスに座っているときは、イスの背もたれやアームによりかかるのではなく、背中をまっすぐにして座りましょう。もっとも、話を熱心に聞いていると、自然に前のめりになりますが、それはとくに問題ありません。

研修の参加者で、話すとき、首をかしげるクセのある方とお会いしたことがあります。「首をかしげる」という動作の意味するものは、「疑問」「疑い」です。ご本人はまったく無自覚で、指摘すると驚いていらっしゃいました。

話している相手がいつも首をかしげていたとしたらどうでしょうか。「その話、ホント?」と言われているようで、あまりいい印象ではないですよね。ご本人は真剣に話を聞いているのに、クセのために相手に伝わらないとしたら、もったいない話です。

2.相手に体の正面を向ける

研修ではよく「おへそを相手に向けましょう」とお話しています。

仕事の最中、デスクに向かっているときに話しかけられると、首だけ相手のほうを向いて返事しがちですね。やっていることは中断して手を止め、せっかくキャスター付きのイスに座っているのですから、ぐるっとイスごと動かして、相手に体を向けましょう。

首だけ動かして話をすると「あなたの話をまともに聞いてないよ」というメッセージになってしまいます。

家事の最中にお子さんに話しかけられたときも、まったく同じことがいえます。

相手とは信頼関係があるから、そんな小さいことは関係ない、とお思いの方、一度同僚やご家族に協力してもらって、話しやすさがどのように違うか、実験してみて下さい。

3.相手の顔を見る

これは基本中の基本ですので、いまさら、という感じですが、やはり基本はたいせつです。

視線の動きは相手からよく見えます。

ちゃんと相手の顔を見て話していたのに、一瞬時計のほうを見ただけで「あなたの話は長いよ」「そろそろ終わりにしてくれないかな」というメッセージになってしまいます。

相手の話に集中するというのは、相手の顔に集中することだと思って下さい。

あまりにじーっと見ると、相手に威圧感を与えてしまう心配がある場合は、ぼんやり相手の首あたりを見ておくといいですよ。

4.手を無意味に動かさない

ポケットに手を入れたまま話すような失礼なことはしないにしても、ペン先で紙をとんとん叩いたり、ペンをクルクル回したりしていませんか?

メモしながら話をするのは、その必要性が相手にもよくわかるので問題ないのですが、こういう無意味な動作は、「あなたの話に興味がありません」「たいくつだ」というメッセージになります。

必要がなければ手は動かさないように、話を補足するジェスチャーのためだけに使うようにしましょう。

落ち着きなく手が動いてしまうときは、手と手を軽く重ねておきましょう。そう、接客のときの姿勢ですね。「なんでも話して下さい。承りますよ」というサインです。

5.腕組みをしたり、足を組んだりしない

そして、最初の話に戻ります。

腕組みではありませんが、これは、わたしにも覚えがある話です。

研修や面談のときは、クリップボードを使うことが多いのですが、これを胸に抱えて持つクセがありました。

この動作は、腕組みにも似ていますし、クリップボードで自分を守っている、相手との間に壁を作っているようにも見えます。

研修中の写真を見て自分でも気づき、「防御」や「拒絶」のメッセージになってしまっては困るので、意識してやめるようにしました。

ここぞというときには、ボディーランゲージを意識する

なんだか面接の心得みたいだな。そんなにいつもかしこまっていられないよ。

そう思ったあなたは正しいです。

年中こんなに姿勢に気をつけていては窮屈ですね。[1]もっとも、カウンセラーや接客業の人は、習慣になっていて、自然とこのような姿勢になる人も多いので、慣れればそれほど窮屈ではありません。

相手と実のある話がしたい。そう思っているときは、内容だけでなく、ボディランゲージもしっかり意識しましょう。あなたの真剣さ、誠実さを伝える大きな武器になります。

そのためには、ふだんは使わなくても、知っておくことが必要です。自分の中の引き出しに入れておいて、自由に出したり入れたりできる、そんなイメージで使ってみましょう。

Footnotes

Footnotes
1 もっとも、カウンセラーや接客業の人は、習慣になっていて、自然とこのような姿勢になる人も多いので、慣れればそれほど窮屈ではありません。