人間にはふたつのタイプがあります。

なにかトラブルが起きたときに、「自分が悪かったんだろうか」と思うタイプ。もうひとつは「自分は悪くない。まわりに責任がある」と思うタイプ。

いやいや、そんなのタイプ分けにならないでしょ。トラブルの内容によって、自分が悪い場合もあるだろうし、自分には責任がない場合もあるだろうし。

と、思ったあなた、そのとおりです。

しかし、トラブルの内容がなんであれ、第三者的に見てどこに責任があるかに関わらず、「自分に原因があるのでは?」と思うか、「自分のせいじゃない」と思うかは、やはり人によって傾向があります。考え方のクセと言っていいかもしれません。

「自分に責任があるのでは?」と考える人を「自責タイプ」、「まわりに責任がある」と考える人を「他責タイプ」と呼びましょう。

ご想像のとおり、ハラスメント加害者には圧倒的に「他責タイプ」が多いです。

面接をすると、そうせざるを得なかった状況は語ってくれますが、「ひょっとして自分に責任があるのでは?」という自省の言葉は、なかなか出てきません。

考え方があまりに「他責」に偏っていると、ハラスメントの加害者になってしまうという大きなトラブルを自分から引き寄せてしまうのです。

一方で、「なにかうまくいかないことがあっても自分の責任ではない」という考え方は、メンタルヘルスという観点から見ると、決して悪くありません。自分に自信があるという言い方もできます。だからこそ、職場の中で頭角を現し、パワハラができるようなパワーを持つ立場になったのかもしれません。

「自責タイプ」についても、同じようによい面とよくない面があります。

うまくいくときは、自分自身を叱咤激励して、どんどん前に進んでいきます。しかし行き過ぎると、自分自身を否定することになりがちです。自分自身が嫌いというタイプですね。

自分自身を好きになれない人は、毎日、

「こんなことじゃだめだ! もっとがんばれ! あの人に比べてぜんぜんなってない!」

などと、ダメ出しばかりしています。

自分自身を叱咤激励してなにが悪いのか、と思われるかもしれませんが、もし、毎日上司にこう言われていたら、やる気がでるでしょうか。

もし親が、毎日こんなふうに叱っていたら、子供は萎縮してしまい、やる気を失い、自分から進んで行動を起こさなくなります。

だれの心のなかにも、子供のままの部分もあり、世の中のことをよく知っているおとなの部分もあります。

心の中にいる幼い子供は、心の中の厳しいおとなに叱られて、小さい体をますます小さくして固まっています。そうなると、その人の心自体も、だんだん柔軟さを失って固まっていきます。

自分自身を好きになれない、自分のことをだめだと思っている、こんな人は、まわりの人とのコミュニケーションもうまくいかなくなるときがあります。

カウンセリングをしていると、こういうタイプもかなり多いのです。

そうなると、少し前に面接した「他責タイプ」の人を思い出して「足して2で割るとちょうどいいのにねぇ」などと、しょうもない感想を抱いてしまうこともあります。

トラブルがあったとき、自分は反射的にどのように感じるか、思い出してみて下さい。どちらの傾向があるか、少し考えてみるとわかるでしょう。

「自責タイプ」「他責タイプ」、あなたはどちらでしょうか。自分にどのような傾向があるか知ることで、極端にどちらかに偏ってしまうことが防げます。