2023年の夏の厳しい暑さは記憶に新しいところではないでしょうか。
夏日が141日も続き、製造業、建設業、運送業等では、現場で働く人たちの熱中症対策が重要な問題となりました。

熱中症は、体温調節機能が崩れることによって起こる障害です。
初期症状として、めまい、立ちくらみ、筋肉痛、こむら返りなどがあります。
放置すると、重症化し、意識障害や多臓器不全などの深刻な状態に陥ることもあります。
熱中症は命に関わる危険性があるため、早期の対応が必要です。

1.5月以降は対策が必要

まだ暑くなるには早いよ、とお思いかも知れませんが、熱中症は5月6月にから発生し始めます。

その主な理由は、体が暑さに慣れていないことにあります。
冬から春にかけて気温が徐々に上昇し、5月や6月には気温が25℃以上の日が多くなります。
しかし、体はまだ暑さに順応しておらず、熱中症のリスクが高まるのです。

また、5月や6月は日差しが強くなる一方で、湿度も高くなります。
高温多湿な環境は、体温調節を妨げ、熱中症を引き起こしやすくなります。

さらに、5月や6月は新入社員の入社時期でもあります。
新しい環境に慣れようと頑張りすぎたり、熱中症の知識が不足していたりすることで、熱中症になるリスクが高まります。

以上のように、5月や6月は体が暑さに慣れておらず、環境的にも熱中症になりやすい条件が揃っています。
熱中症は真夏だけの問題ではなく、早い時期から注意が必要です。

2.職場内の室温管理

熱中症予防のために、職場環境を改善することが重要です。

適切な室温管理を行い、28℃以下に保つようにしましょう。
28℃と言われると、エアコンの温度設定が28℃であればいいと考えがちですが、実際の室温は温度設定どおりになるとは限りません。
温度と湿度を測り、できればWBGT測定器を使って、職場内の環境を把握します。

暑さの感じ方には個人差があり、同じ部屋の中でも、エアコンの風の当たり方や窓に近いかどうかで温度がかなり変わってきます。
全員が満足できる温度にするのは難しいかもしれませんが、暑そうにしている人、寒そうにしている人がいたら、互いに声をかけあい、こまめに換気や温度調節をすることが大切です。

エアコンや扇風機、サーキュレーターを効果的に使用しましょう。
窓に遮光カーテンを取り付けたり、屋根や壁に断熱材を使用したりすることでも、熱の侵入を防ぐことができます。

3.従業員の健康管理

熱中症対策のためには、従業員一人ひとりが自分の健康管理に気を配ることが大切です。

個人でできることは、HEATという頭文字でまとめられます。

のどが渇く前から定期的に水分補給を行うよう奨励しましょう。
1時間に1回程度の小休止を取り入れ、体を休ませる時間を確保することも重要です。

体調が優れない場合は、無理せず早めに申し出るよう呼びかけましょう。
管理職は、従業員の体調変化に気を配り、必要に応じて声をかけるようにします。

3.熱中症対策グッズの活用

熱中症対策として、様々なグッズを活用することができます。

  • 水分や塩分の補給:水筒、塩分タブレット、経口補水液
  • 首元を冷やす:ネッククーラー、ネックリング、冷却タオル
  • 全身を冷やす:冷却スプレー
  • 風を送って涼む:ハンディファン、首掛け扇風機、空調服
  • ひんやりした衣類:冷感接触・UVカットの衣服、保冷ベスト、水冷ベスト
  • 日差しを避ける:日傘、帽子

従業員の意見を聞き、会社でまとめて購入して配布したり、個人で購入したものの費用を会社で負担する方法が考えられます。

4.熱中症予防教育の実施

従業員に熱中症の知識を広め、予防策を周知することが重要です。

熱中症の症状や対処法について、次のサイトを参考に、研修や講習会を実施しましょう。

熱中症が疑われる場合の緊急時対応について、全員が理解しておく必要があります。

管理職は、日頃から熱中症対策の重要性を伝え、注意喚起を行うようにします。

5.柔軟な働き方の導入

熱中症対策として、柔軟な働き方を導入することは効果的です。

時差出勤の導入

午前中や昼頃の気温が高い時間帯を避けるため、始業時間を早めることが、考えられます。

例えば、通常の9時始業を7時や8時に変更することで、涼しい時間帯に出勤し、暑さを避けることができます。
また、交通機関の混雑を避けることにもつながります。

フレックスタイム制の活用

従業員が自身の都合に合わせて出勤時間を調整できるフレックスタイム制を活用することで、暑い時間帯の通勤を避けることができます。

テレワークの推進

自宅や涼しい場所で仕事ができるテレワークを推進することで、暑い屋外での移動を減らすことができます。
例えば、週に2〜3日はテレワークを実施し、出社する日は必要最小限にすることで、熱中症のリスクを下げることができます。

休憩時間を多く設ける

暑い時間帯に長時間働くことは、熱中症のリスクを高めます。
そこで、休憩時間を多く設けたり、長めに設定することで、適切な休憩が取れるようにします。

熱中症は、職場における大きな健康リスクです。
従業員の健康と安全を守るために、熱中症対策は欠かせません。

職場環境の改善、従業員の健康管理、熱中症対策グッズの活用、予防教育の実施、柔軟な働き方の導入など、様々な角度からアプローチすることが重要です。
管理職と従業員が一体となって、熱中症予防に取り組みましょう。