「働かないおじさん」
こういうだけで、状況がわかってしまうくらい、最近よく聞く言葉です。
Web 記事もよく出ていますし、このテーマで本も出ています。(Google 検索「働かないおじさん」)

Wikipedia での定義を引用してみましょう。

働かないおじさん(はたらかないおじさん)とは、周囲の期待する役割に対して、成果や行動が伴っていない中高年社員のことである[1]。存在感が薄いため、妖精さんとも呼ばれる[2]。全く働いていないわけではないものの、働きに見合わない高い報酬を受け取っているとして批判されている[1][3][4]

働かないおじさん – Wikipedia

「うちの職場にこういう人がいる」という人もおもしろくないでしょうが、言われている「おじさん」のほうも、たいへん不本意な状況でしょう。

  • もう出世の見込みもないので、がんばってもしょうがない。
  • 子供の学費はかかるし、家のローンもまだ残っている。いままでの会社への貢献を考えたら、いまの待遇は当然だ。
  • 自分の若い頃の体験をよかれと思って話しても、いまの若い人はうるさがって聞かない。
  • このやり方でここまで来たのだから、今後もそのやり方でやっていける。

こんなふうに考えている人が多いのではないでしょうか。
しかし、残念ながら、上に書いたような考え方は「働かないおじさん」特有の思考なのです。

「働かないおじさん」と言われても自分は別に構わない、クビにされるわけじゃないんだから、と思っている方は、ここから先は読む必要はありません。
「自分はこの会社でまだ活躍できるはずだ」と思っている方は、そのための処方箋を下に3つ書いてあります。
ぜひご確認ください。

会社からの期待を確認する

  • もう出世の見込みもないので、がんばってもしょうがない。

いまの50代には「出世」というのが、仕事をがんばる上での大きなモチベーションだったでしょう。
定年まであと数年、場合によっては役職定年制で、課長や部長からヒラになり、もう自分の活躍の場はないのではないかと感じるとき、仕事へのやりがいを保ち続けるのは、難しいかもしれません。
そこそこ働いていればいい、という姿勢になりがちですね。

周りがあなたのことを「働かないおじさん」だと感じるのは、会社や周囲の人が持っている期待と、あなたの働きぶりがずれてしまっているからです。
そしてたいてい、ご本人はそのことに気づいていません。

あなたが会社で働き続ける限り、会社としては「この人にはこのように働いてほしい」「このくらいの成果を出してほしい」という期待を持っています。

本来であれば、そのような期待をきちんと従業員に伝えて、役割を果たしてもらうのは、経営者や、あなたの上司の仕事です。
とはいえ、それがうまくいってないからといって、あなたがただ漫然と相手が与えてくれるものを待っていればいいわけではありません。
若い人に対して「指示待ちの姿勢だ」と批判している当の本人が、同じことをしていていいのでしょうか。

上司と面談の機会があればそのときに、面談がなければ自分からセッティングしてもらい、会社はどのようにあなたに期待しているのか、きちんと確認しましょう。

会社の期待する内容が、自分のやりたい仕事とはずれていることが多いかもしれません。
また、上司の方も期待する内容を正直に言うと、あなたのプライドが傷つくかと思って、言い出しにくいということもあるでしょう。

そんなときは、組織の中で「活躍する」というのは、たんに能力が高いからできるわけではなく、組織の方向性を理解し、自分の能力をその方向性に向けることだということを、もう一度考えてみてください。

後輩の話をよく聴く

  • 子供の学費はかかるし、家のローンもまだ残っている。いままでの会社への貢献を考えたら、いまの待遇は当然だ。
  • 自分の若い頃の体験をよかれと思って話しても、いまの若い人はうるさがって聞かない。

同じ職場の若い人が、毎日長時間残業しているのに、あなたはいつも定時帰りということはないでしょうか。
定時に帰るのは、とくに悪いことではないのですが、同じ職場の中で、仕事量が偏ってしまっているのは問題です。

若いうちは、身を粉にして働くべきだ。
自分だってそうしてきた。
そうしないと成長できない。

あなたはそう思っているかもしれませんが、若い人から言わせると、あなたより低い給与でこんなに苦労するのは納得がいかない、ということになります。

このようなギャップは、社会人として育ってきた時代が、先行き明るいか、希望が見えないか、という違いによるものなので、あなたがそう考えるのは無理のないことです。
しかし、いまの若い世代がどのように感じているかというのは、同じ職場で働く仲間として、知っている必要があります。

また、自分の若い頃の話が、いまの若い人にも役立つと考えて話してみても、環境の違いが大きいので「自慢話」「精神論」と捉えられるのも、往々にしてあることです。
聞かされる方は苦痛しか感じていません。

では、職場の後輩があなたに期待しているのはなんでしょうか。

それは、自分たちの話をきちんと聴いてくれること、です。

職場の後輩が感じていることと、あなたの状況のギャップは、相手の話を聞かないとわかりません。

いまの若い人は職場の年長者に対して、本音なんて言わないよね、と思っているとしたら、それは、あなたが本音を語るに足る相手ではないからです。

本音を語ってもよい相手というのは、「社会ってそんなもんじゃないんだよ」「うちの会社ではこうするもんなんだ」と説教などせず、自分の話をしっかり聴いてくれ、受け止めてくれる相手です。

あなたがそのような相手になれば、後輩たちからの批判的な視線や、職場での居場所がないという疎外感もなくなることでしょう。

過去のやり方にこだわらない

  • このやり方でここまで来たのだから、今後もそのやり方でやっていける。

リスキリングという言葉が、最近マスコミを賑わせています。
リスキリングというのは、業務の変化に合わせていままでとは異なるスキルを身につけることです。
場合によっては、職種の変化を伴うこともあります。

いまさら新しいことをしたくない、いまのままでいい、と個人的に感じていたとしても、会社自体はそれでは立ち行かなくなっていることもあります。
会社がリスキリングを求めるとき、陰に陽に抵抗しているようでは、「働かないおじさん」のレッテルをはがすのは難しいでしょう。

また、とくに新しいスキルは求められていないが、いままでと同じやり方で、会社が期待する成果が出せるかというのは、自分自身で点検すべきですね。

新しいスキルに取り組むかどうかは環境によってさまざまですが、「おじさん」と言われる年齢になれば、取り組まなくてはならないことがあります。

それは、いままでのやり方に安住せず、既に学んだ知識・思考・習慣などを見つめなおす(必要によっては手放す)ことです。

あなたは、仕事のやり方について根拠を問われたとき、「これが当たり前だ」「いつもこうしている」「こうするのがふつうだ」「いままでずっとこうしてきた」「うちの会社ではこうするべきだ」と答えていないでしょうか。

「いままで」「いつも」「ふつう」…このような言葉は、要注意です。

あなたの働きぶりが、周りの期待とずれているのは、このように「なにも変えたくない」という考え方が、あなたの仕事の根底にあるせいかもしれません。

自分の思考のクセを見直してみましょう。