職場でのハラスメント被害。
ハラスメントを受けたときのやり取りをだれも聞いておらず、言った言わないになってしまうので、職場の相談窓口に行ってもムダだと思っていませんか。
録音という直接的なものでなくても、十分役立つ証拠を残す方法があります。
今回は、ハラスメントの証拠を残す4つの方法について、録音も含めて、それぞれの特徴と注意点をご説明します。
手書きメモは最も基本的な証拠になります
手書きのメモは、最も基本的で信頼性の高い証拠となります。
メモには、発生した出来事の日時、場所、行為者(加害者)はだれか、そして目撃者がいる場合はその情報を必ず記入しましょう。
そのとき重要なのが、記載する内容です。
下記に、それぞれよく出てくる言葉と、具体的な内容の例を出しますので、このレベルで具体的に書いておくようにして下さい。
威圧的な態度
- 机に両手をつきながら上から覗き込んで叱責する
- 会議中に自分が発言する度に腕を組んで睨みつける
- 人前で「お前には無理だ」と決めつけるように言い放つ
暴言
- 「こんな簡単な仕事もできないなんて給料泥棒だ」
- 「あなたみたいなのが入社してくるから会社の評判が下がる」
- 「女性は結婚したら辞めるんだから、この仕事は任せられない」
仲間はずれ
- グループチャットから自分だけが外され、必要な情報が共有されない
- 昼食や飲み会に、自分だけ誘われない
- 業務に必要な連絡を直接せず、他の人を介してしか伝えない
やたらと触ってくる
- 資料を見せる際に必要以上に体を寄せ、肩や背中に触れる
- 「肩が凝ってるでしょう」と断りもなくマッサージを始める
- 廊下ですれ違う際に、毎回のように腕や手に触れてくる
手書きのメモは、デジタルデータと違って改ざんの心配がなく、裁判所でも信頼性の高い証拠として認められやすいという特徴があります。
ただし、紛失や破損のリスク、第三者に見つかる可能性があるため、安全な場所での保管が欠かせません。
できれば定期的にスキャンやコピーを作成し、複数の場所で保管することをお勧めします。
デジタルメモは整理がしやすく便利です
スマートフォンやパソコンでのメモは、素早く入力でき、データの整理も簡単です。
写真や音声などのデータと一緒に保存できる点も大きな利点です。
クラウドでの保管も可能なため、バックアップが容易という特徴があります。
ただし、デジタルデータは改ざんが可能という指摘を受ける可能性があります。
また、端末の紛失や故障のリスクもあるため、必ず定期的なバックアップを取り、パスワード保護も徹底しましょう。
記載する際の注意点は手書きメモと同じですので、前項を参照して下さい。
SNSの記録、特にLINEは重要な証拠となります
SNSでのやり取りは、日時が自動的に記録され、相手の発言を直接的に記録できる重要な証拠となります。
特にLINEは、職場での非公式なコミュニケーションツールとして広く使用されており、実際のハラスメント相談でもスクリーンショットが証拠として多数提出されています。
LINEでの会話が不快な内容だと削除したくなりますが、後々の証拠となるので残しておきましょう。
投稿や会話が削除されたり、アカウントがブロックされたりするリスクもあるため、こまめにスクリーンショットを保存し、URLやアカウント情報も併せて記録しておくことが大切です。
録音は強力な証拠です
録音は、会話の文脈や語調まで記録できる非常に有力な証拠となります。
ハラスメント被害者による秘密録音は、会社の調査や民事訴訟では証拠として認められる場合が多く、通常は違法とはなりません。
ただし、録音の存在が発覚した場合、行為者との人間関係がさらに悪化する可能性が高いため、その取り扱いには細心の注意が必要です。
スマートフォンの録音機能で十分な証拠を残すことができますが、会話の一部だけを切り取って録音したという批判を避けるため、可能な限り会話の全体を録音することをお勧めします。
録音の事実は極秘に保持し、録音データは必要な関係者以外には開示しないようにしましょう。
まとめ:複数の方法を組み合わせ、早めの相談を
ハラスメントの証拠は、一つの方法だけでなく、複数の方法を組み合わせて残すことをお勧めします。
信頼できる第三者にその存在を知らせておくことも有効です。
定期的に記録を見直して整理を行い、会社や弁護士等に相談する際に、すぐに提示できる状態にしておきましょう。
最後に強調したいのは、証拠を残すことも大切ですが、決してひとりで問題を抱え込まないことです。
ハラスメントに遭った場合は、信頼できる人に早めに相談することが何よりも重要です。
同僚や上司、家族や友人など、信頼できる人に相談し、適切なサポートを得ることで、より良い解決の道が開けることが多いのです。
そして、体調の悪化を感じたら、早めに医療機関で診察を受けましょう。
ハラスメントの事実が認められ、相手が懲戒を受けたとしても、自分自身の健康を損ねてしまっては今後の人生に大きなマイナスになります。
なにより、自分自身を大切にすることを優先して下さい。