お知らせしました通り、年末調整セミナーに各地で登壇しており、あと1本を残すのみとなりました。

ことしは改正点が多く、どの会場も満席に近い状況ですが、やはりことし創設された「ひとり親控除」へのご質問が多いですね。
ひとり親控除及び寡婦控除に関するFAQ」が国税庁から公表されており、こちらの記載からご説明しています。

まず、「ひとり親」とはどういう人かということですが、国税庁のタックスアンサーで次のように説明されています。

ひとり親とは、原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていないこと又は配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の三つの要件の全てに当てはまる人です。
(1) その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと。
(2) 生計を一にする子がいること。
この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。
(3) 合計所得金額が500万円以下であること。

No.1171 ひとり親控除|所得税|国税庁(強調は引用者)

そして、問題はこの「事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人」(いわゆる事実婚)ですが、FAQを確認すると、単に同居しているパートナーがいるということではなく、次のように住民票の記載がポイントになっています。

イ その者が住民票に世帯主と記載されている者である場合には、その者と同一の世帯に属する者の住民票に世帯主との続柄が世帯主の未届の夫又は未届の妻である旨その他の世帯主と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる続柄である旨の記載がされた者
ロ その者が住民票に世帯主と記載されている者でない場合には、その者の住民票に世帯主との続柄が世帯主の未届の夫又は未届の妻である旨その他の世帯主と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる続柄である旨の記載がされているときのその世帯主

目がすべりますね・・・要するに、住民票上「夫(未届け)」「妻(未届け)」という続柄の人がいなければ、ひとり親控除の要件の(1)はクリアです。

また、いま現在は住民票に上に書いたような続柄が入っていても、年末までに「同居人」とするか、世帯分離してしまえば、OKです。

事務担当者としては、ここを確認するために住民票を出してもらうのか、悩むところです。

ひとり親に該当する人はそれほど大勢いるわけではないでしょうが、そのほか年末調整には、「配偶者の合計所得金額の見積額」を書く欄があり、ここも会社としては、なにか書類を持ってきてもらわない限り、確認するすべがありません。
そもそも、本人についても、別の会社から給与をもらっていたり、不動産所得など他の所得があったら、やはり確認できませんね。
こういう自己申告の金額については、どうしたらよいのでしょうか。

結論からいうと、住民票や各種証明書類を確認する必要はありません。

本人が出してきた年末調整の申告書に疑問点があったら、口頭で確認すればよいということになっています。
ただ、それでは不安、ということで、住民票等を出してほしいとお願いしている事業所もかなりあるようです。

もし年末調整のときになにかの間違いがあって、税金の額が変更になるような場合は、会社に税務署からお知らせが来ます。
そうしたら、年末調整やりなおし?
そんなめんどうなことをするくらいなら、最初からしっかり証明を見せてもらって確認したほうがいい、と思うかもしれません。

しかし税額の変更があった場合、会社で年末調整をやりなおしてもよいですし、本人に確定申告をしてもらってもよいのです。

税務署からお手紙が来ると、たいていぎょっとしますが、納税はあくまでも本人の責任で、会社は源泉徴収義務者として、税務署と本人の間をつないでいる存在です。
本人の申告に間違いがあった場合、年末調整をやり直してあげるほうが親切は親切ですが、「確定申告してください」と言ってもよいのです。

年末調整事務は、悩みが多いのですが、この点を頭に入れておくと、少し楽になるかもしれません。