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上のグラフは、厚労省の委託事業として、21世紀職業財団が作成している「職場のパワーハラスメントハンドブック」(pdf)の一部です。もともとのデータは、平成24年に行われた職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書(pdf)です。

昨年11月に、わたくし李怜香も、21世紀職業財団の客員講師として、このハンドブックを使ってセミナーを行いました。

これを見ると、半数近くの人が、「何もしなかった」と回答しており、これ自体大きな問題なのですが、次に多いのが「社内の上司に相談した」「社内の同僚に相談した」となっています。会社が設置した相談窓口や、担当部署に相談する人よりずっと多いのですね。(赤丸は引用者が記入)

このデータはパワハラに関するものですが、セクハラについても、おそらく同じような状況ではないかと思われます。

つまり、自分自身はセクハラ・パワハラの当事者ではなくても、職場にそのような問題が起きている場合、被害を受けている人から相談される可能性はだれにでもある、ということなのです。

このふたつの選択肢のうち、あなたが同僚だった場合は、責任が及ぶことはあまり考えられませんが、上司だった場合、相談に応えるあなたの行動がすべて「会社のとった行動」として見られます

相談を受けた時点では、それがほんとうにハラスメントなのか、まだわかりません。

相談してきた人が、仕事の能力や勤務態度に問題があり、よく注意を受けていた場合など、「それは君自身に問題があるから、叱られるのもしかたないんじゃないの?」「◯◯さんは、そんな人じゃないよ」と、うっかり言ってしまいがちです。

同じ問題を見る場合でも、経営者・管理職の見方と、一般社員の見方はまったく違います。また、管理職が持っている情報を一般社員が知らなかった場合、ハラスメントでなくても、そのような誤解が生まれることも多々あります。

あなた自身がハラスメントだと思わなかった場合でも、相談にとりあわない、相手をなだめてそのまま放置する、というのが、いちばんよくない対応です。

それは、会社側が「ハラスメントの相談を受けたのに無視した、放置した」と同じ意味だからです。

かりに、あとから裁判になった場合、このような対応では、会社側の勝ち目は100%ありません。

それがほんとうにセクハラ・パワハラ事案かどうかは、きちんと調査してみなくてはわかりません。

相談してもなにもしてくれない、と思われたら、その相談者は上司だけでなく会社自体に不信感を持ちます。このような場合、その人が自分の胸に納めておく可能性は少なく、同僚の間に「会社はセクハラ・パワハラがあってもなにもしてくれない」といううわさになり、それが既成事実として定まってしまいます。

調査の結果、最初のあなたの直感どおり、ハラスメントではなかったとしても、そのように受け取っている従業員がいるということは、労務管理上、大きな問題です。自分がハラスメントの被害者であると考えていたら、仕事に身が入るでしょうか。また、相談してきた人だけでなく、その人の同僚もそのように考えたらどうでしょうか。やはり、しっかり対応しておかなくてはならないのです。

とくにセクハラについては、今年7月から、男女雇用機会均等法の施行規則が改正されま、その内容として、下記のように「セクシュアルハラスメントの予防、事後対応の徹底」をはかることとなっています。

セクシュアルハラスメントの相談対応に当たっては、その発生のおそれがある場合や該当するかどうか微妙な場合でも広く相談に応じることとしている。
男女雇用機会均等法施行規則を改正する省令等を公布しました |報道発表資料|厚生労働省

セクハラ・パワハラを防止するには、管理職教育が重要なのですが、会社にとってのリスクマネジメントとしては、「相談されたときに、どう対応すればよいか」を、管理職が知っているかどうか、という点が大きなポイントです。

職場のハラスメントについて、防止したいとき、お困りのときは、メンタルサポートろうむの総合的なハラスメント対応をご利用ください。