「早く寝なさい」
「早くお風呂に入りなさい」
お子さんのいる家庭では、毎日こんな言葉を発しているのではないでしょうか。
すんなり聞き入れて動いてくれれば話は簡単なのですが、右の耳から左の耳に抜けていくだけで、ちっとも動かないということもありがち。わがやもそうでした。
こういう言葉って、その目的はなんでしょう。
子供は成長のために十分に睡眠をとらなくてはならないから、寝る時間を守る必要がある。規則正しい生活習慣をつけさせたい。
こんなところでしょうか。
幼いうちは、こういう説明がなくても、親がいうことは子供を動かしますが、中学生ともなると、ただ「◯◯しなさい」は無視されてしまいます。
かといって、上に書いたような説明が子供を動かすかというと、これもかなり疑問です。
「おまえのためを思って」って、なんかウソっぽいんですよね。別にウソじゃないのに。
わたしも、親の既定路線に従い、毎日「早くお風呂入りなさい」と言い、「お母さん先に入ればいいじゃん」と言って動かない息子にいらいらしていたのですが、ある日、ふとこんなふうに言ってみました。
「お母さんは長風呂が好きでゆっくり入りたいんだよね。自分が先に入ると、あんたのお風呂が遅くなるのが気になって、ゆっくりできない」
これを聞いた息子は、なにも言わずさっさと立ち上がってお風呂に入ったのでした。
「おまえのため」ということではなく、「自分の都合」を語ったら、息子にとってそれは十分動く理由になったわけです。
息子は息子で、遅い時間にお風呂に入りたい理由がなにかあったのでしょうが、「お風呂でのんびりゆっくりしたい」という母の都合は、納得がいくものだったようです。
いっしょに生活している以上、お互いにいろんな都合があるのが当たり前で、子供のしつけと思っていることも、実は親の都合のためなのかもしれません。それは、親自身にも、あまり意識されていないことが多いでしょう。
親の都合を主張するのは、別に悪いことではなく、お互いに自分の都合を相手に見せて、すりあわせればいいだけなのです。
自分の都合「ばっかり」主張すれば、やはりうまくいきませんが、伏せていた「自分の都合」というカードを開いてみると、相手もそのようなカードを持っていることが、すんなりこちらも腑に落ちるものです。
相手が自分のいうことを聞き入れない。自分が絶対正しいのに。
こう思っていらいらしているとき、正しいことをただ押し付けるのではなく、それが必要な自分の側の事情を相手に説明することも、膠着した問題を動かすために有効な方法です。
自分にも事情があれば、相手にも事情がある。それを意識し、あなたにもこういう事情があるんじゃないの? と思っていることを相手に伝える。
コミュニケーションには正解がなく、それで相手が動くかどうかはわかりません。でも、どんどん声を大きくしたり、機嫌を悪くしたりするよりも、ずっとスマートでお互いにストレスがかからない方法ではないでしょうか。
職場の人間関係のトラブルは、コミュニケーションスキルで解決できることもあります。アサーションの研修では、そのようなやり方を、実際に体を動かすワークなどをしながら、実践的にお伝えしています。
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