ハラスメント防止のため、管理職研修を行うと、よく「年上の部下がいて、やりにくい」「どのように接したらいいかわからない」というご質問やご相談を受けます。
また、年齢の問題だけでなく、上司が女性で、部下が男性という組合せの場合、互いにやりにくさを感じるとも聞きます。
そのほか、現在の部下が定年再雇用の人で、以前は自分の上司だった、という話もありました。

そういう悩みを聞くと、いまだに「強いリーダー像」というのは、多くの管理職を縛っているのだな、と思います。
これは、女性管理職が、自分のあるべき姿が見えずに悩むこととも重なっています。

「自分について来い」とひっぱるタイプのリーダー。
異論・反論は認めず、指示どおりの行動を求めるリーダー。

こういうリーダー像で年上の部下に接すると、違和感を感じるのはよくわかります。
年齢だけの問題ではなく、部下の方がキャリアが長いこともよくありますので、一方的に上司のやり方をおしつけるのはそぐわないでしょう。
そのような場合「こうしようと思うんですが、どうですか?」と相談をもちかけるスタイルで、話し合いながら業務を進めていくほうがぴったりきますよね。

もちろん、意見がまとまらなかった場合、上司の側が「最終的にはわたしが決断します」でいいのです。
ただし、そのような決断に至った根拠をきちんと説明できないと、途中までは話し合いスタイルでも結局は独断専行になってしまいます。
たとえ意見が違っても「あの人はこういう考えだから」と、相手が理解できる説明をすることも、管理職の能力のうちです。

単純に言葉遣いの問題もありますね。
それまで、部下に対してはタメ口、名前は呼び捨てで接していたのが、年上の部下に同じようにするのははばかられる。
かといって、ひとりにだけていねいに接すると、どちらが上かわからなくなって、なめられてしまうのではないのか。
そういう気持ちから、女性の上司が、ずっと先輩の男性の部下に向かって、まるで友達にするような態度をとり、部下はそれが不満で退職を申し出てきた、という話もありました。

部下が自分より年下で、キャリアも浅い人ばかりの場合は、それほど考える必要がなかったことを、年上の部下ができると考えざるを得なくなります。
自分の指導スタイルはこれでいいのか、ということですね。
これは、管理職として、より上のレベルにいくチャンスです。

すべての部下を同じように扱うのが「公平」なのか。
相手に対して接し方が変わっても、とくに問題ないのではないでしょうか。

また、どうしても部下全員に同じように接したいと思うのであれば、相手の意見を聞き、その意見を尊重するというスタイルを全員に対してとればいいのではないでしょうか。
それは相手のいいなりになるということでもなければ、上司と部下という関係をあいまいにするものではありません。
上司という立場をカサに、相手と議論もせずに自分の考えを押し付けるほうが、指導力不足で、部下はついてこないでしょう。

言葉遣いも、かりに相手が自分よりずっと若くても、職場の中ではひとりの社会人同士として、名前にはさん付けをし、丁寧語で接するという考え方もあります。
ていねいな言葉遣いをすることと、上司としての指導力は直接関係がありません。
だれに対しても、相手を尊重し、ていねいな扱いをする人のほうが、多くの人から尊敬されるでしょう。

年上だからエライ、キャリアが長いからエライ、というのは、ビジネスの世界では単純すぎ、時代に合わない考えになっています。
自分自身をアップデートしていきましょう。