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間違いやすい退職者の給与計算

従業員が退職するときに、最後に払うお給料。すでに退職後のときも多く、出社していないことを考えると、間違いなくお支払いしたいものです。

そのときいちばん注意しなくてはならないのは、社会保険料の控除の方法です。間違いやすいところなんですね。この内容を理解していれば、給与計算担当者としては、ひとつステップアップしたと言えます。

資格喪失日と退職日

同じ公的保険料でも、雇用保険料は支払ったお給料の総額に雇用保険料率をかけるだけなので、簡単ですね。給与計算ソフトを使っていれば、とくになにもすることはありません。

しかし、健康保険・厚生年金保険料(社会保険料)については、いつまで控除するかということを考える必要があります。

これについては、以前記事にしていますので、まずそちらをご覧ください。

資格喪失日は、「退職日」ではなく、「退職日の翌日」です。 これが、まず第1のポイント。

そして、第2ののポイントは、健康保険の被保険者期間は、資格取得日から 資格喪失日の前日(退職日)まで、と「日」が単位となっています。 それに対して、保険料の徴収と、年金の加入期間の計算は、「月」が 単位だということです。 日割りはありません。

そして、第3のポイント。 資格喪失月は、保険料を納付する必要はないし、年金の加入期間には 入りません。

第67号 空白の1日

平たく言えば、次のようになります。

  1. 退職日が月末以外であれば、その月の保険料は控除しない。
  2. 退職日が月末であれば、その月の保険料は控除する。

今回支払う給与から控除する社会保険料は何月分か

もうひとつ考えなくてはならないのは、今回支払う給与から控除する社会保険料は、何月分なのか、ということです。

これについても、以前の記事をご紹介しましょう。

9月分の保険料の納付日は、10月末日です。

ですので、基本的には9月分の保険料は、10月に支払う給与から 控除している会社が多いはずです。 これを、一般に「翌月引き」といいます。

基本は「翌月引き」ですが、「当月引き」、つまり、9月分の保険料を 9月支払いの給与から控除している会社もあります。

また、「翌々月引き」、つまり、9月分の保険料を11月支払いの給与から 控除している会社もあります。

第41号 給与から引く社会保険料は何月分か

2ヶ月分の社会保険料を控除することも

では、もう少し具体的に考えてみましょう。

20日締め翌月引きのA社の場合

A社の給与は、20日締・当月末日支払いです。この会社では、翌月引き、つまり、6月分の保険料は、7月末日支払いの給与から控除しています。

今回、6月30日退職予定の人がいます。

最後のお給料は、7月31日支払いで、対象期間は6月21日から6月30日分です。いつもよりだいぶ少ないですが、6月分の保険料は控除しなくてはなりませんので、いつもどおり保険料を控除します。

6月29日退職予定の人は、最後のお給料は同じく7月31日支払いで、対象期間は6月21日から6月30日分です。この人については、6月分の社会保険料はかからないので、最後のお給料から控除してはいけません。

20日締め当月引きのB社の場合

B社は、A社と同じく、20日締・当月末日支払いです。この会社では、当月引き、つまり、6月分の保険料は、6月末日支払いの給与から控除しています。

6月30日退職の人の最後のお給料は、7月31日支払いですが、ここからは社会保険料は控除しません。

また、6月29日に退職する人の場合は、6月30日支払いの給与、7月31日支払いの給与のどちらも社会保険料は控除しません。

20日締め翌々月引きのC社の場合

C社は、A社、B社と同じく、20日締・当月末日支払いです。この会社では、翌々月引き、つまり、6月分の保険料は、8月末日支払いの給与から控除しています。

6月30日退職の人は、最後の給与は7月31日支払いですが、この給与から控除される社会保険料は5月分です。6月分の保険料を控除する8月31日支払いのお給料は発生しませんので、最後の給与から2ヶ月分の社会保険料を引くことになります。

この場合、給与の対象期間は10日間、社会保険料は2か月分ということですから、支給されるお給料はごくわずかになってしまいます。

給与計算担当者以外は、社会保険料がいつ引かれているかなどということは知らないのがふつうですから、こういうときは、一言前もって注意してあげたほうがよいでしょう。

 

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