「心理的安全性」という言葉は、コミュニケーションやハラスメント防止を語る場面で、よく出る言葉です。
意味合いとしては、次のようなものです。
心理的安全性とは、率直に発言したり懸念や疑問やアイデアを話たりすることによる対人関係のリスクを、人々が安心して取れる環境のことである。
『恐れのない組織』エイミー・C・エドモンドソン (強調は引用者)
そして、ここで言われている「対人関係のリスク」というのは、大きく分けて4つです。
- 「無知」だと思われたくない
- 「無能」だと思われたくない
- 「ジャマ」だと思われたくない
- 「否定的」だと思われたくない
どれも、なるほど~、あるある、と思えるようなものばかりですね。
しかし、最初にこれを読んだとき、「わたしが率直に意見やアイデアを出せなかったときは、別の理由があったかも」と思いました。
それは、「生意気だと思われるのではないか」「出しゃばりだと思われるのではないか」というものです。
もっと言うと、どちらも「女のクセに」というのが頭につきます。
正直認めたくありませんが、「女性は控えめにしているのがよい」という旧い価値観が、わたしの中にも内面化されているということですね。
といっても、これは女性特有の心理というわけではありません。
男性であっても、年齢が若い、キャリアが浅い、転職してきて間もない、という場合、こういう対人関係のリスクが心配になり、率直に話せないということがあるでしょう。
また、「インポスター症候群」という言葉があります。
「インポスター症候群」とは、自分の力で何かを達成し、周囲から高く評価されても、自分にはそのような能力はない、評価されるに値しないと自己を過小評価してしまう傾向のこと。
インポスター症候群とは | 人事用語集・辞典 | 人事のプロを支援するHRプロ
とくに、インポスター症候群に陥っている成功した女性には、下のような傾向が見られるという研究があります。
偽物であると言う感情を促進させる理由に、症候群にある人たちは、自分の能力を隠そうとする傾向が考えられる。自分の能力や知性を見せたら人から嫌われると考え、自分は賢くなく、成功にも値しないと自分を信じ込ませている。
インポスター症候群 – Wikipedia (強調は引用者)
また、このようにも言われています。
まさに、対人関係のリスクを恐れて、チームの成果のために意見やアイデアを出せない、という心理的安全性が低い場合の行動ですね。
インポスター症候群に陥る人は、極端な失敗や間違い、他人からの否定的意見を恐れる傾向があり、それが発覚するのを避け、新しい経験や探求に飛び込む勇気を制限してしまう
インポスター症候群 – Wikipedi
チームの心理的安全性を高めようとするリーダーは、このような傾向や心理を理解しておく必要があります。
相手の極端な謙遜や、自分自身への過小評価はやんわりと否定し、「あなたの成果はあなたの実力あってのものだ」ということを、折に触れて伝えましょう。
また、自分自身もこのような心理に陥った経験があるリーダーであれば、その体験を話して、相手の気持ちに理解を示すことも有効です。
「わたしなんて」とか、「ただの○○ですから」等の言葉が出てきたら、静かにこう伝えましょう。
「そう思う気持ちはよくわかります。でも、それは間違っているし、あなた自身のためにも、チームのためにもよくないんですよ」