メンタルが悪化しているときは、どのへんまでが、ふだんの気分の浮き沈みで、どのへんからがお医者さんにかかったほうがいい状態なのか、なかなか見極めがつきませんね。
精神科や心療内科のお医者さんに初めて行くということは、それもひとつの「決心」です。うつ状態になっているときは、心のエネルギーが枯渇している状態なので「決心」することがとても難しくなります。
「たいしたことないのに、この程度で受診して、お医者さんに笑われないだろうか」
「精神科に行ったことが周りに知られたら、『頭がおかしい人』と思われないだろうか」
などと、ためらう理由もあります。
ですから、まわりの人が「この人、このごろずっと落ち込んで(イライラして)、仕事も休みがちだけどどうしたのかな?」と思ったときに、聞いてみてほしいのです。
本人だけにしかわからないことですが、まわりが聞いてあげることで、本人も自分がどういう状況なのか、意識することができ、「決心」の負担を和らげてあげることができます。
たずねるポイントは3つです。
1「このごろ眠れてますか?」
つらさの一番は「眠れない」ことです。
寝付きが悪いだけでなく
・夜中や明け方に目が覚めて、それきり眠れなくなる
・長時間寝ているが熟睡感がなく昼間だるい。
場合もあります。
何時間寝ているか、ではなく、睡眠に関して、なにか困ったことはないか、という点がポイントです。
2「食欲はありますか?」
食欲がないことのほかに、下のような形で出てくることもあります。
- 食べ物の味がよくわからず、おいしいと思えない
- 逆にやたらと食べてしまう
- 酒量が増えている
- いままでちょくちょくお酒を飲んでいたのに飲みたくなくなった
3「いままでふつうにできていたことが、とてもたいへんだったり、おっくうに思えることはありますか?」
ふだん家事をやっている人だと、料理がまずつらくなります。料理は、集中力も必要だし、頭を使うからです。
さらに「このごろできあいのお惣菜ばっかり。。。わたしは主婦失格だわ」と、落ち込む材料も作ってしまいます。
営業などの仕事の方では、初めての人に電話したり会いに行ったりすることがつらくなります。人にかぎらず、未知のものに出会う、ということは不安を乗り越えるエネルギーが必要だからです。
心のエネルギーがなくなってしまっている、うつ状態だからできないことなのですが、本人にしたら「自分がダメだから」という自己否定の材料を作ってしまうことになるのです。
また、いままで趣味を楽しんでいたのに、急に興味がなくなった、という形で現れることもあります。
そして、受診するかどうかのめやすは、上のような「つらい状態が2週間以上続いたとき」です。
うつ病は医者では治らない、という考えの方もいますが、うつを回復させるための鉄則は、休養と睡眠をとることです。
そのためには、お医者様に診断書を書いてもらって、本人も「病気なのだからしかたがないことだ」と納得して仕事を休み、睡眠導入剤などで眠れるようにすることが早道なのです。
また、「医者にへんな薬をたくさん出されて、かえって状態が悪くなった」と思っている人がいます。
最初にもらった薬でうまく症状が消えればラッキーです。たいていは、薬が合うかどうか、何度かトライアンドエラーをする必要があります。その過程で、一時的に別の症状が出てきてしまうこともあるのです。
お医者さんにかからずに放置しておいたら、もっと状態が悪くなっている可能性もあるのですから、ほんとうに治療のせいなのかどうかは、いちがいに言えませんね。
確かに腕の悪い医者や人格的にどうかと思うような医者の話も聞きますが、それは精神科に限らない話です。
つらい状態が2週間以上続いたら、まずは受診することを考えてみましょう。