社会全体の高齢化、そして、高齢者就業確保措置があいまって、職場で働く高齢者は年々増加しています。
高齢者は若者に比べて身体機能が低下し、疲労蓄積や体調不良へのリスクが高くなります。
その結果、仕事中のけがや病気(労災)が発生する可能性も高まります。

1. 高齢者の労災発生状況

上記グラフを見ると、雇用者全体に占める高齢者(60歳以上)の割合は18.4%であるのに対して、休業4日以上の労災の被災者数は28.7%であり、60歳未満の労働者よりも明らかに高い確率で労災が発生しています。

2. 高齢者の労災防止策(エイジフレンドリーガイドライン)

高年齢労働者の労災防止策については、2020年3月に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)が発表されており、これを参考にして職場での対策を考えましょう。[1]高年齢労働者の安全衛生対策について|厚生労働省

上記ガイドラインの大項目は下記のようになっています。

  1. 安全衛生管理体制の確立
  2. 職場環境の改善
  3. 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握
  4. 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
  5. 安全衛生教育

それぞれ対策は多岐にわたりますが、とくに「5.安全衛生教育」については、職場それぞれの危険性に応じた教育だけではなく、健康を保つための教育と、労働者自身の努力が求められます。

3. 高齢者の睡眠と健康

高齢者は、若者に比べて睡眠時間が短くなったり、睡眠の質が低下したりすることが多くあります。
その原因としては、以下のものが挙げられます。

  • 加齢による脳機能の低下: 年齢とともに、睡眠を司る脳機能が低下します。
  • 生活習慣の乱れ: 退職後の生活リズムの変化や、運動不足などが睡眠障害を引き起こすことがあります。
  • 疾病: 高血圧、糖尿病、関節炎などの慢性疾患が睡眠障害を引き起こすことがあります。
  • 薬の副作用: 睡眠薬や鎮痛剤などの薬の副作用が睡眠障害を引き起こすことがあります。

睡眠不足は、集中力や判断力の低下、疲労蓄積、免疫力の低下など、様々な健康問題を引き起こします。また、労働災害のリスクも高まります。

高齢者の睡眠を改善するための対策

高齢者の睡眠を改善するには、以下の対策が有効です。

  • 規則正しい生活習慣: 就寝時間は眠くなったらでよいが、起床時間を同じにするとよい。
  • 夕方以降はうたたねしない。仕事から帰ってから就寝までは、眠くてもうたた寝しないようにする。
  • 適度な運動: 日中に適度な運動をする。
  • カフェインやアルコールの摂取を控える: 寝る前のカフェインやアルコールの摂取を控える。
  • 寝室の環境を整える: 寝室を暗く、静かに、涼しくする。寝るときだけでなく、眠る前2,3時間も部屋を少し暗くすると良い。
  • リラックスできる方法を見つける: 入浴や読書など、リラックスできる方法を見つける。
  • 必要に応じて医療機関を受診する: 「年だからしかたない」とあきらめずに、睡眠障害が改善しない場合は、医療機関を受診する。

職場でできる対策

とくに職場でできることとして、30分以下の仮眠がおすすめです。

長時間の昼寝は夜の睡眠に悪影響がありますが、30分以下の昼寝を習慣にすると、高齢者の健康によい影響があることがわかっています。

お昼休みに仮眠するのもいいですし、午後2時から3時ごろに20分~30分の休憩を取り、仮眠を勧めます。
仮眠するための簡易ベッドや昼寝用の枕、アイマスク・耳栓等を用意するのもいいですね。
静かな部屋が用意できれば、なおいいでしょう。

急に昼寝しろと言われても、それまで昼寝の習慣がないので眠れないという方もいるでしょう。
そういう場合は、10分程度目をつぶって静かに座ったり横になったりするだけで、休息の効果があがります。

労災を防止するためだけでなく、高年齢労働者がいきいきと働くために会社が対策することで、「65歳までの雇用が義務だからしかたなく雇っている」のではなく、貴重な人材として会社に貢献してくれるでしょう。