「悪いことをしたら罰をうけるべきだ」
このような文章があったら、あなたはどう思いますか?
ほとんどの方は「そりゃそうだ」「同意できる」と思うのではないでしょうか。「それはおかしい」と思う方は、たぶん少数派ですよね。
フィクションの世界では、復讐ものは根強い人気があります。
最初に自分の側が加害されたのであれば、加害者に暴力的な報復をしても問題ない、というのが復讐を題材にした映画や小説の背後にある思想です。
一言でいうと「因果応報」ですね。
「自分の側に正義があれば、相手にひどいことをしても構わない」という考え方、と言ってもいいでしょう。
この考え方は、多くの人に共有されています。
実際には、そのようにいかない場合が多いので、なおさらかもしれません。
しかし、職場の管理職が、このような考え方をもとに行動するとどうなるでしょうか。
なかなか指示通りに動いてくれない部下がいると、業務にさまざまな支障が出ます。
業務をスムースに進めるのは、管理職として必要な行動であり、正義です。
いうことを聞かない部下は、その正義の邪魔をする、悪となります。
「確かに、どなったり、暴言を吐いたりしたことがあります。
しかし、いくらていねいに指導しても、相手は知らんぷりで、反抗的なんです。
わたしのほうが、被害者ですよ」
パワハラ事案の行為者(加害者)に面談すると、このようなことを言われることがあります。
自分が正義で、相手は悪なので、被害者として相手に報復した、ということでしょう。
内心は「自分をこんなに困らせる相手は、ひどい目にあって当然だ」と思っているのですが、自分では意識されていないこともあります。
このような弁解が通って、「あなたの行動は正しい」と会社から言われることはありません。
パワハラ認定がされないまでも、部下うまく指導できない、実力不足の管理職と見られるのが関の山です。
では、いうことを聞かない部下から強いストレスを受けている管理職はどうしたらいいのでしょうか。
どんなにつらくても、管理職なのだから、その苦痛は甘受すべきでしょうか。
もちろん、そんなことはありません。
部下指導がうまくいかない場合は、自分の上司や、同じ立場の管理職である同僚、もしくは会社の管理部門に相談してください。
「こんなことを相談したら、できないやつだと思われるのでは」という懸念はわかりますが、パワハラ上司のレッテルを貼られたり、懲戒処分になるよりは、はるかにマシでしょう。
会社としても、ひとりで抱え込むのではなく、早めに相談してほしいと考えていますから、周りに相談するのが、管理職の行動としては正解です。
実際には「できないやつ」という烙印を押される心配はほとんどありません。
また、ストレス過多だからといって、部下に感情をぶつけることで解消してはいけません。
しっかり睡眠をとり、栄養も味覚も満たされるよい食事をし、趣味に打ち込む等の気晴らしをしてください。
復讐を善とする因果応報思想が正しいのはフィクションの中だけです。
無意識に影響されないようにしましょう。