各自治体で、現役世代へのコロナワクチン接種が始まっていますね。

多くの会社では、なるべく早く社員にワクチンを受けてもらい、コロナ感染の危険を減らしたいと考えています。しかし、若い世代を中心に、ワクチン接種に消極的な人が多いことも事実です。

ワクチンを接種するかどうかは個人の自由で、会社は強制することはできません。また、病気で接種できない人、信条で接種しない人に対して、不利益な措置をとってはいけませんし、まわりの人がイヤミを言ったりしないよう、配慮する必要があります。

社員にワクチン接種は勧めたい。でも、強要や差別はしてはいけない。この相反する課題を、どのように解決していけばいいのでしょうか。5つのポイントを見てみましょう。

1.正しい情報を提供する

ワクチン接種は、個人の発症や重症化の危険を減らすという意味も大きいのですが、もうひとつ、社会防衛(集団免疫)という機能があります。

若い世代は、もしコロナ感染症を発症しても、自分は死なないと思っていますし、重篤な後遺症が出る可能性があることも、知らなかったり、知っていても自分はだいじょうぶだと思っていたりします。

一方で、若い世代は、中高年世代が思っているよりも社会貢献に敏感ですし、世の中のために自分ができることをしたいという気持ちが強い人も多いのです。「自分はだいじょうぶ」でも、両親や祖父母、理由があってワクチンを打てない人を守るために、できるだけ多くの人がワクチン接種することが重要であると知らせると、気持ちが変わる可能性があります。

その他、厚生労働省等行政が提供している情報を印刷して回覧するなど、こまめに知らせるようにしましょう。

新型コロナワクチンについて | 首相官邸ホームページ

新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省

2.デマを信じている人をバカにしたり説得しようとしない

ワクチン接種については、たくさんのデマが出回っています。

「不妊になる」「副反応で人が亡くなっているが国がそれを隠している」「遺伝子情報が書き換えられる」等のほか、「体が磁力を帯びる」「電波を受信できるようになる」「ワクチンの中にマイクロチップが入っていて、それが体に埋め込まれ国に管理されてしまう」等、聞いただけで笑ってしまうような荒唐無稽なものもあります。

このようなデマを信じているために接種したがらない人もいるのですが、笑いものにしてはいけませんし、説得もあまり効果がありません。よけいに頑なになり、正しい情報も耳に入らなくなってしまいます。

決してバカにしようとせず、デマについては触れないようにして、それ以外の対策をすすめてください。

3.予約のスケジュールを知らせ、便宜をはかる

ワクチンの予約は、電話やWebで行うようになっていますが、やり方は自治体ごとにばらばらです。郵送されてくる接種クーポンにはやり方が書いてあるのですが、きちんと読まない人もいます。

パソコンやスマホが苦手な人はやり方がわからない、ということもあります。

また、市区町村ではなく都道府県で受けようとしたり、国の大規模接種会場を利用しようとしたりすると、予約方法を自分で調べる必要もあります。

社員が自分で調べて自分で予約するのが原則ですが、そこまでのハードルをなるべく下げることを考えましょう。

具体的には、下に書いたような対策をしてみましょう。

  • 年齢や自治体ごとの予約可能日を知らせる
  • 執務時間中に個人のスマホを使ったり、会社のパソコンで予約することを認める
  • やり方がわからない人には、すでに予約した人や、Web予約に慣れた社員がサポートする

4.休みを認めるなど、副反応への配慮をする

ワクチン接種に消極的な理由として、副反応で発熱することが多く、仕事に差し支えるから、ということもあります。

できれば接種の翌日は特別休暇を認める等の対応が望ましいですが、それが難しい場合も、部署ごとに接種のスケジュールについて話し合い、上長が中心になって仕事の段取りをつけるようにしましょう。

その際に、ワクチンを接種しない人、接種できない人をカヤの外においたり、「自分だけワリをくっている」という気持ちを持たせないよう、十分に意見を聞いて協力を求めるようにして下さい。

5.会社の方針を何度も伝える

ワクチンの情報提供のたびに、会社の基本的な方針を付け加えるようにしましょう。

ワクチンを受ける人にも受けない人にも、会社が伝えるポイントは次のようなことです。

  • 会社は社員の健康に留意し、配慮している。
  • 業務の都合と個人の都合がバッティングするときは、会社が優先ではなく、話し合って互いに譲歩しつつ決める。
  • 個人の信条や病気等で接種を受けない人を排除するようなことはしない。

これを社長などトップが自分のことばで繰り返し伝えるようにします。もちろん、ワクチン接種勧奨のために口だけ言うのではなく、ふだんから考えて行動しなければならないことです。

このような会社の方針に社員が賛同し、積極的に動いてくれるようになることが、今回のワクチン接種だけでなく、今後も個人的な事情と業務の都合の調整をつけなくてはならないときに、スムースにいくようになる最大のポイントです。