相手のためを思って厳しく指導している

管理職は、部下の育成も仕事のひとつです。
その職務を遂行するため、熱心に部下を指導している管理職は多いでしょう。
しかし、「甘くすると部下のためにならない。厳しく指導しなくては」と考えていると、なかなか指導の成果があがりません。
それどころか、部下に「パワハラされています」と訴えられる始末。
いったいどうすればいいのでしょうか。

「厳しい指導」の中身

「厳しい指導でへこたれてしまう部下が悪い」という問題の立て方をすると、解決しません。
まずは「厳しい指導」とはどういうものなのか、具体的に見てみましょう。

1.指導ではなくパワハラ

まず、これはアウトというものを見ていきましょう。
こんなの「指導」と思っている人いるの? という感想も出てきそうですが、実はまだまだいます。

  • 暴力
  • 感情的になって怒る、怒鳴る
  • 暴言・侮辱的な言葉を使う
  • 不必要な長時間の叱責

相手がどんなに能力不足でも、反抗的でも、これはパワハラになる可能性が限りなく高い行為ですね。
「指導は怒ってなんぼ」という言葉を聞いたことがありますが、まずはその認識から改める必要があります。

いまの中高年の管理職は、若い頃に上に書いたようなパワハラを受けても、当時はまだパワハラという言葉もなく、「指導だ」「クソ上司にあたってしまった」と自分を納得させて耐えてきた世代です。
これしか指導のやり方を知らないということは同情できる部分もありますが、部下を傷つけることは指導ではありません。

2.部下をコントロールしようとする

パワハラということで問題になることは少ないですが、「厳しい指導」のつもりで横行しているのが、「部下をコントロールしようとする」やり方です。
不安と恐怖で支配する方法と言ってもいいかもしれません。

あなたはこんな指導をしていないでしょうか。

わかりやすくするためにタイプ分けしていますが、この中のひとつだけということはあまりなく、たいてい複合しています。

感情的
  • 忙しいからといって、イライラしたり不機嫌になる
  • たいしたことでもないのに、すぐ声を荒げる
  • 機嫌のいいときと悪いときの差が激しい

上司も人間ですので、ときには感情的になることもあるでしょうが、これは「自分の感情を部下が忖度するようになる」ということを狙っています。やっかいなのは、自分でもそれに気づいてない場合が多いということです。

相手の人格を侮辱するような暴言を発して、パワハラとして問題になるまであとちょっとというところですね。

しつこい
  • 部下のできていないところを、容赦なく指摘する
  • 同じことを、何度も何度も、毎日のように注意する
  • 過去のミスを何度も蒸し返す

ご本人は「何度言っても直らないのだから、くりかえすのはしかたがない」と思っています。
ひとつの方法でうまくいかなければ、ほかの言い方、やり方を考えるという工夫がなく、また工夫すべきだとも考えていません。

しつこくても、おだやかに言っているうちはいいのですが、「何度言っても聞かないから」ということで、「感情的」に移行する場合もあります。

押し付け
  • いつも一方的に命令するだけで、相手の言い分は聞かない
  • 自分のやり方がベストで、それ以外のやり方は認めない
  • 部下が自分の思う通りに行動していないと、逐一注意する
  • 部下に質問しても、部下の考えを聞いているわけではなく、上司の頭の中にある「正解」を答えさせる
  • 「自分の若い頃は」「いまの若いものは」というのが口癖

「マイクロマネジメント」と言われるやり方ですね。
自分のコピーを部下に要求するのが、「成長」でしょうか。

結果がすべて
  • 言い訳を許さない
  • プロセスは見ず、結果のみ問題にする。
  • できている部分があっても認めず、不足している部分のみ注意する
  • ミスや、ノルマの未達成に対して罰を与える

これも一見「厳しい」ようですが、厳しいというよりも、指導する手間を省いて指導している気分になるやり方です。

説明不足
  • 自分の求める方法について、なぜそのように行動するといいのか、説明しない
  • 「理屈はいいからとにかく動け」が口癖
  • 「期待しているから」を注意する理由にしているが、部下に対して「期待しているよ」とは伝えていない
  • 「しっかり」「ちゃんと」「てきぱきと」とは言うが、具体的にどうすればいいかは伝えない

これは、ほんとうによくあります。
自分の言っている言葉が、部下にどのように伝わっているのか、考える必要がありますね。

上司は「厳しい指導」と思っているが・・・

ここまで読んだみなさんはもうおわかりですね。

上司が「厳しい指導」と思っているものの大半は、「不適切な指導」「理不尽な指導」です。
こうすると部下が成長する、と考えているのは、大きな勘違いであることがほとんどですね。

では、このような指導を続けていると、部下はどうなってしまうのでしょうか。
長くなりましたので、後半は後日お届けいたします。

続きはこちらです。
「厳しい指導」の効果とは?(2)