この年末年始に帰省や旅行を計画しているのか尋ねると、「計画している」が18%、「計画していない」が80%だった。昨年11月調査で同じ質問をした時は「計画している」は11%。今年7月調査で、夏休みの帰省や旅行を「計画している」は12%だったので、「計画している」は依然少数ではあるものの増えた。

出典:GoToトラベル再開「賛成」52%、年代で差 朝日新聞世論調査:朝日新聞デジタル

この記事にはコロナ禍以前の数字が出ていないので、コロナが理由でどれほど変化したかはわかりませんが、感染状況は落ち着きを見せていても、人々の行動は元には戻らないという感じはします。

いままで毎年、年末年始は旅行していたという人も、なにもわざわざ混んでいて、料金も高い時期に行かなくても、もっと気候のいい時期でいいんじゃないの、という気持ちになっているかもしれません。

孫の顔を見せて、遠方に住んでいる親を喜ばせたいという気持ちから、毎年帰省していたけれど、幼い子供を連れて混んでいる時期に遠出するのはやはりたいへんです。実際に顔を見せるに越したことはないけれど、年に1~2回の帰省よりも、しょっちゅうビデオ通話をするという選択をしたかもしれません。

感染状況が落ち着いている現在、「コロナ禍以前に戻ればそれでよい」と考えるか「せっかくだから、いままで慣用的にやっていたことをゼロベースで見直してみよう」と考えるかで、大きな違いが出てきます。

忘年会や新年会に参加したいかどうかも聞いた。「参加したい」は23%で、「そうは思わない」が72%だった。「参加したい」は男性が31%と高めで、女性の17%と大きな差が出た。30代以下と50代の男性は34%が「参加したい」と答えた。

出典:GoToトラベル再開「賛成」52%、年代で差 朝日新聞世論調査:朝日新聞デジタル

この設問は「会社の」忘年会・新年会に限ったことではないのですが、コロナ禍で会社がらみで飲む機会が激減し、つまらない、と思っている人もいれば、毎年いやいや出席していたので宴会がなくなって内心喜んでいる人もいるでしょう。

いままでは忘年会新年会は当然やることだと思っていたけれど、「なぜ年末年始に集まって飲食しなくてはいけないのか」ということを考えれば、もちろんそんな必然性はありません。

ほとんどの会社では「社員の親睦を図る」ということが、宴会の理由になっているはずです。宴会はその選択肢のひとつですが、別のことを考えてもいいかもしれません。

なにも考えずに、忘年会・新年会が再開された結果、飲みたくもない酒を強要され、女性社員はお酌やデュエットを強要され、聞きたくもない上司の説教をがまんし、となったら、いままでは「こういうものだから」とがまんしていた社員の心も会社から離れてしまうでしょう。

1時間の会議のために半日かけて往復していた会社の出張も、オンラインで十分ということに、多くの社員が気づいてしまいました。

コロナ禍で増えたリモートワークも「やってみたけれどうまくいかなかった」「感染状況が落ち着いているから」ということで、原則出社に戻った会社も多いでしょう。リモートワークの妨げになっていた不合理な業務フローについてはほったらかしで「以前のように全員出社すれば解決」と思っていないでしょうか。

考え、検討し、試してみた結果、「やはりコロナ禍以前のやり方がよかった」と前に戻るのか、なにも考えずに「とにかく元に戻ればよい」という考えで戻るのか、社員はそこを見ています。

宴会は、出張は、出社はどこまで必要なのか。多くの社員が満足する、ほどほどの線はどこなのか。どういう働き方が、我社にあっているのか。これを考える経営者と、考えない経営者では、働く人から見た会社の魅力度に差がついてきます。

なにも考えずに、コロナ禍以前に戻ってはいけません。

よりよい落とし所を考え続け、変化を恐れない会社が生き残る。コロナ禍があろうとなかろうと、この点には変わりはないでしょう。