「来月から1on1を始めてください」

ある日、突然上司からそう言われたあなたは、頭を抱えていませんか?
1on1(ワンオンワン)ミーティングとは聞いたことがあるものの、具体的に何をすればいいのか、まったく見当がつきません。

実際に始めてみても、部下との間に気まずい沈黙が流れ、「今日の業務報告は?」と形式的な質問を繰り返すだけ。
部下も上の空で、この面談に意味があるのか疑問を感じているようです。

このような状況、少なからぬ管理職の方が経験されているのではないでしょうか。

1on1は、管理職と部下が定期的に行う個別面談です。
大企業だけでなく、中小企業でも導入が進んでいます。
しかし、初めて1on1を実施する管理職にとっては、何をすべきか不安に感じることも多いのです。

このブログでは、1on1を成功させるための準備と当日の心得について、中小企業の管理職向けにご紹介します。

1. 1on1の目的を理解する

1on1の主な目的は、部下との信頼関係構築、業務状況や課題の把握、キャリア開発の支援、そして組織の問題点の早期発見です。
これらの目的を念頭に置きながら1on1を進めることで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。

2. 事前準備:成功の鍵

(1) 定期的な日程設定

1on1の成功には定期的な実施が欠かせません。
月1回から2週間に1回程度の頻度で、30分から1時間程度の時間枠を確保しましょう。
部下の予定に配慮しつつ、固定の曜日・時間帯を決めることで、お互いの予定が立てやすくなります。

(2) 場所の選定

1on1を行う場所は、プライバシーが確保できる会議室や個室が理想的です。
時にはカフェなどリラックスできる環境を選ぶのも良いでしょう。
リモートワークの場合は、オンラインツールの準備を忘れずに行いましょう。

(3) 議題の準備

効果的な1on1のために、事前に議題を準備することが重要です。
部下の最近の業務状況を確認し、前回の1on1でのフォローアップ事項をチェックしておきましょう。
また、部下の長期的なキャリア目標を把握しておくことで、より深い話し合いが可能になります。

(4) 質問リストの作成

自由回答式の質問(オープンエンドな質問)を用意することで、部下の思考を促し、より深い対話が可能になります。
例えば、「最近の仕事で一番やりがいを感じたことは?」や「その課題を解決するためにどんなアプローチを考えていますか?」といった質問を準備しておくと良いでしょう。

3. 当日の心得:効果的な1on1の進め方

(1) 雰囲気づくり

1on1の始まりは、リラックスした雰囲気づくりが大切です。
最初に軽い雑談から始め、部下の体調や近況を気遣う言葉をかけることで、話しやすい環境を作りましょう。

(2) 積極的な傾聴

部下の話をさえぎらずに最後まで聞くことが重要です。
あいづちやうなずきなどで聞いていることを示し、必要に応じてメモを取りましょう。
積極的な傾聴は、部下との信頼関係構築の基礎となります。

(3) 適切な質問

準備した質問リストを活用しつつ、部下の発言を掘り下げる質問をしていきます。
「なぜ」「どのように」といった疑問詞を使って詳細を引き出すことで、より深い理解につながります。

(4) フィードバックの提供

具体的な事例を挙げて、ポジティブなフィードバックを行いましょう。
改善点がある場合は、建設的な助言を心がけ、部下の努力や成長を認める言葉をかけることが大切です。

(5) 問題解決とアクションプラン

部下が抱える課題に対して、一緒に解決策を考えます。
具体的なアクションプランを立て、次回の1on1までに達成すべき目標を設定することで、継続的な成長を促すことができます。

(6) キャリア開発の支援

部下の長期的なキャリア目標について話し合い、スキルアップのための機会や研修について情報提供します。
組織内での成長の道筋を示すことで、部下のモチベーション向上につながります。

(7) NGな質問を避ける

1on1では、部下との信頼関係を損なうような質問は避けるべきです。
以下のような質問はNGです。

  • 「なぜそんなミスをしたの?」(責める質問)
  • 「他の人はちゃんとできているのに、どうしてできないかな?」(比較する質問)
  • 「それくらい自分で考えられないの?」(能力を否定する質問)
  • (自然な雑談ではなく、唐突に)「プライベートな話をしてください」(強制的な個人情報の聞き出し)

代わりに、「どうすればそのミスを防げたと思う?」「他のチームメンバーとどう協力できる?」といった建設的な質問を心がけましょう。

4. フォローアップ:1on1後の対応

(1) 議事録の作成と共有

1on1終了後は、話し合った内容や決定事項を簡潔にまとめ、部下と共有します。
効率的に議事録を作成するために、1on1の録音と文字起こしアプリの使用をおすすめします。
ただし、録音する場合は必ず部下の同意を得てください。
これにより、認識の齟齬を防ぎ、次回の1on1へのスムーズな準備が可能になります。

(2) アクションプランの進捗確認

設定したアクションプランの進捗を定期的にチェックし、必要に応じてサポートを提供します。
このフォローアップにより、部下の成長を継続的に支援することができます。

(3) 次回の1on1に向けた準備

フォローアップが必要な事項をリストアップし、新たな議題や質問を考えておきましょう。
これにより、次回の1on1がより効果的なものとなります。

まとめ

1on1は、管理職と部下のコミュニケーションを深め、組織の生産性と従業員の満足度を高める重要なツールです。
中小企業では、より柔軟に1on1を実施できる利点があります。
準備と心構えを整え、継続的に実施することで、チームの成長と組織の発展につながるでしょう。

最後に、1on1は完璧を目指すものではありません。
試行錯誤しながら、自社や部下に合ったスタイルを見つけていくことが大切です。
管理職の皆さんが、このガイドを参考に、効果的な1on1を実践されることを願っています。