近年、気候変動による健康影響が注目されています。

気候病(気象病)という名称を聞いたこと上がるかもしれません。
正式な病名ではありませんが、一般的な症状を表すのによく使われます。
正体不明の体調不良が気圧の変化に連動していることに気づいて、「ひょっとしてこれは気候病では?」と考える人が多くなっています。

気候病への対策は、労働安全衛生の観点からも重要な課題となっています。
本記事では、気候病の基礎知識と職場での予防・配慮のポイントについて解説します。

気候病(気象病)とは?

気候病とは、特定の気候条件によって引き起こされる健康上の問題を指し、気象病、天気痛と呼ばれることもあります。
気温、湿度、気圧などの気候要因が原因で発症し、季節の変化や地域の気候に関連して発生することが多いのが特徴です。
症状は頭痛、疲労感、めまい、関節痛、消化器症状など多岐にわたり、個人差もあります。

また、次のような疾患も気候条件と強い関連があるので、気候病と言われることもあります。

  • 熱中症:高温多湿な環境下で発症
  • 季節性アレルギー:花粉症など、特定の季節に発症
  • SAD(季節性情動障害):秋から冬にかけて発症するうつ症状
  • 関節リウマチ:寒冷な気候により症状が悪化

気候病の予防と生活習慣の改善

気候病を予防するには、自律神経のバランスを整えることが最も重要です。

そのために、体調管理や生活習慣の改善を考えてみましょう。
毎日の生活で気を付けるポイントとして、下記をご参照ください。

当たり前のことばかりだ、と思われるかもしれませんが、このようなリストを眺めることによって、自分の生活でどこがいちばん欠けているか気づくことができます。

1.体温調節に気を付ける

  • 暑い日は涼しい服装を心がけ、こまめに水分補給する。
  • 冷房の当たりすぎに気をつけ、薄いカーディガンや、ひざ掛け等を利用する

2.適度な運動をする

  • 汗をかくことで体温調節機能が高まり、気候変化への適応力が向上する。
  • 習慣的に軽い運動をすることによって、気分の落ち込みや体調不良を防ぐ。

3.バランスの取れた食事をする

  • 栄養バランスの良い食事で体調を整える。特に、ビタミンやミネラルを多く含む食品を摂取する。
  • 食べ過ぎや、冷たい飲み物の飲み過ぎに注意し、胃腸を酷使しないようにする

4.十分な睡眠をとる

  • 睡眠不足は体調を崩す原因になるので、十分な睡眠時間を確保する。
  • 寝る直前にPCやスマホ等強い光を発するものを長時間見ることは避ける。
  • 睡眠不足を感じたら、15分から20分程度の短い昼寝をする

5.ストレス管理をする

  • ストレスは免疫力を低下させるので、リラックスする時間を作る。
  • 呼吸法、自律訓練法、瞑想等、自分に合ったリラクセーション法を続ける

6.住環境を整える

  • 温度や湿度を適切に保ち、快適な住環境を維持する。
  • とくに寝具や寝室の環境は睡眠に影響するので、快適な寝具や遮光カーテンを導入することも考える。
  • 空気清浄機や加湿器の使用も効果的。

7.体調変化に注意する

  • 体調の変化に気を配り、早めに対処する。
  • 温度や気圧が大きく変化する日は、なるべくゆったり過ごす等、生活のペースを気候に合わせて調節する。
  • 症状が続く場合は、早めに医師に相談する。

これらの予防策を日々の生活に取り入れることで、気候病のリスクを減らすことができます。
ただし、個人差が大きいので、自分の体質に合った方法を見つけることが大切です。

職場での気候病対策の重要性

職場においても、気候病のリスクのある人に配慮することが求められます。

事業者には、労働者の健康障害を防止する法律上の義務があり、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するよう努めなければなりません。

上記のような法律上の要請だけでなく、体調不良による欠勤や、プレゼンティーイズム [1] … Continue readingを防ぐためにも、気温や気圧の変化で体調を崩しやすい従業員がいるかどうか確認し、個別の配慮も必要になります。

以下、職場での具体的な取り組みの例を挙げますので、対策のヒントにしてください。

  1. 快適な職場環境の維持:適切な室温と湿度の管理、定期的な換気、休憩スペースの確保などが重要です。
  2. 柔軟な勤務形態の導入:在宅勤務や時差出勤の選択肢を用意し、体調に応じた休暇取得を奨励しましょう。
  3. 健康管理の支援:定期健康診断の実施と結果のフォローアップ、社内での健康セミナーや情報提供、必要に応じて産業医や専門医との連携を図ります。
  4. コミュニケーションの充実:上司や同僚との積極的なコミュニケーションを通じて、体調変化や不調の早期発見と対応に努めましょう。
  5. 業務負担の適正化:業務量や締め切りの適切な管理、チームでの協力体制の構築が大切です。
  6. 理解と配慮の風土づくり:気候病に関する理解を深めるための啓発活動を行い、お互いを思いやる雰囲気づくりを推進しましょう。
  7. 緊急時の対応準備:気候病の症状が出た場合の対応手順を整備し、救急箱の備え付けと使用方法の周知を徹底します。

気候変動による健康影響は、今後ますます顕在化すると予想されます。
企業には、労働者の健康を守るための積極的な対策が求められます。
人事労務担当者は、気候病という新しい課題に向き合い、働く人々の健康を守るための取組みを推進していくことが期待されています。

Footnotes

Footnotes
1 「プレゼンティーイズム」は、健康問題により本来のパフォーマンスが発揮できないが、それでも出勤し業務を行う状態を指します。これにより生産性が低下する可能性があります。