「なんでこんな簡単なことができないんだ?」
「何度言ったらわかるんだ?」
叱るときは、こういう疑問形を使いがちですね。
叱る目的が、相手をへこませて自分がすっきりするため、だったり、どちらが立場が上か思い知らせて、相手が反抗しないようにするため、だったりする場合は、これはなかなか効果的だと思いますが、職場で部下を指導するときは、目的が違いますよね。
部下を叱る目的はなんでしょうか。
叱る原因になったミスなどを繰り返さないようにし、業務をスムースに行える力を身につけさせるためです。
こういう叱り方は、一見、ミスの原因を考えさせているようですが、実はそうではありません。実際に答えてみればよくわかるでしょう。
「はい、わたしがぼんやりしていたからです」
「えーと、3回くらいでしょうか・・・」
どちらも、「馬鹿にしてるのか?」(ああ、また疑問形)と、怒りをあおること必定の答えです。こういう言葉は実際には、
「こんな簡単なこともできないおまえはダメだ」
「何度言ってもわからないおまえは役に立たない」
ということを、言葉を変えて言っているわけです。
これはどちらも「ダメなおまえ」「役に立たないおまえ」という、「人」にフォーカスがあたっています。
叱る目的をもう一度考えてみましょう。「部下のミスをなくしたい」ということが目的であれば、どうやればミスをなくせるのか、という「物事」にフォーカスをあてなければ、答は出てきませんよね。
「ここでミスしないためには、どうしたらいいと思う?」
というのが、「物事」にフォーカスをあてた、つまり、ほんとうの意味での原因の追求です。
こうやって実例を考えてみると、語気荒く言うような言葉でないことがわかるでしょう。
パワハラ事例の中で、「上司の言葉の暴力」として部下があげてくるのは、最初に書いたような叱責の言葉が多いのです。だれでもつい言ってしまいがちな言葉であるだけに、注意が必要です。