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セクハラの説明をするときに、「基本的にボディタッチはいけません」とか「ヌードや水着のカレンダーは職場にはふさわしくない」という話は、以前はつきものでしたが、最近はこのレベルの「悪気はないんだけどね」というものは、さすがに少なくなってきたようです。

とはいえ、セクハラ自体がなくなったわけではありませんし、いろいろな対策を講じても、完全に防止することは難しいのが実情です。

最近のセクハラに関わる判例の動向などを見ていると、当初は恋愛としてはじまったのが、恋愛が終わった後、また、関係がこじれた後に女性側が「セクハラだ」と訴える、というものが多く見られます。職場では長い時間をいっしょに過ごし、同じ目標を持って行動しているわけですから、男女がそこにいれば恋愛になることも当然あるでしょうし、これを抑制するのは不可能でしょう。

つい最近の事例ですと、下記にリンクした報道のような高裁判決がありました。

【関西の議論】セクハラか否か、裁判官たちを悩ませた“被害者・女子学生”8000通のメールの「中身」(1/4ページ) – MSN産経west

京都にある大学で元特任教授だった男性(70)が、別の大学院に通う当時20代の女子学生へのセクハラを理由に懲戒解雇したのは違法として、大学側に損害賠償などを求めた訴訟。1、2審判決とも「女性側が性的関係を望んでいなかったとは言えない」として解雇処分を無効とする一方、賠償請求は退けた。(強調は引用者)

大学という場では、教授が絶対的な権力を持っていて、人間関係も固定しがちなため、セクハラ・パワハラ事件も数多く起こっています。しかし、この事件では、男性の側が大学教授ですが、女性の側はその教え子ではありません。つまり、言うことを聞かなければ研究者としての生命がたたれてしまう、というような強い関係ではなかったわけです。もっとも、この女性の指導教授が男性の教え子だったということですから、裁判ではそのあたりの関係性を考慮したのかもしれません。

2人の関係は修復しないまま21年6月、女性が男性からセクハラ被害を受けたとして、大学に対応を求める申し立てをした。
大学側は男性と女性から2回ずつ事情を聴き、女性のメールの内容や被害申告の書面、男性の弁明書などを検討。その結果、「男性が長期間にわたり女性に対して及んだ行為は女性が望まない性的言動で、研究環境を著しく害した」としてハラスメント行為と判断。22年1月に懲戒解雇としたため、男性は、大学側に1100万円の損害賠償などを求める訴訟を京都地裁に起こした。

判決は「大学側がメールの内容から、女性の被害申告を信用したとしてもやむを得ない」として、男性への損害賠償は認められないと結論づけた。
結局、男性が訴訟で認められたのは退職金約54万円だけだった。

セクハラの訴えがあってから、大学側のとった行動は、

  1. 男性と女性から事情を聞き、女性のメール内容(8,000通!)や、双方から出された書面を検討した。
  2. 調査の結果、ハラスメント行為があったと判断し、男性を懲戒解雇とした。
  3. 男性から懲戒解雇を不服として提訴されたので、高裁まで戦った。

裁判では、懲戒解雇はいきすぎだったとされましたが、大学側が調査して下した結論が、裁判の結論とは食い違っていても、その点については問題なしとされ、男性から大学への損害賠償請求は認めなかったのです。

ここから読み取れることは、捜査機関でも裁判所でもない一私企業の調査には限度があるのだから、きちんと手順を踏んで対応すれば、裁判所もそれを認めるのだ、ということです。

「女は怖い」などといって女性を誹謗しても、このようなタイプのセクハラ事案は防げません。会社側のできることは、できる範囲で誠意をもって調査し、被害者に配慮しつつ、被害事実が確認できたら、就業規則などの規定に則って加害者を処分をする、ということだけです。

そして、もちろん日頃からセクハラ防止の研修などを行い、会社側はセクハラを防ぐ努力をしていたが防ぎきれなかった、ということを、裁判で堂々と主張できるようにしておくこともたいせつです。

 

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