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ユニクロのバイトが語った実態を弁護士が検証したら全部違法でした | シェアしたくなる法律相談所

とても興味深く読みました。というのは、この記事でとりあげている「ユニクロのバイトが語った実態」というのは、以前、甘ちゃんという記事で、サービス残業の労務管理上の問題性について言及した記事だったからです。

ユニクロはホントにブラック企業?学生バイトが赤裸々に語るその実態とは

なぜか最初にリンクした弁護士さんの書いたブログには、この記事へのリンクはありませんが、内容から言って明らかでしょう。

サービス残業の違法性などは当然ですが、気になったのはこの点です。

■ユニクロの服を着て接客するため、欲しくない服を半ば強制的に買う

服を買うか買わないかは、つまり、売買契約をするかしないかは、その方の自由であって、強制されることはありません。売買契約を強要されたということであれば、その契約は強迫によるもので取消の対象になります。

この部分についての、元記事の記述はたぶんこちら。

男A「ユニクロの服を必ず着ないといけなくて、3割引きなんですけど、およそプライベートで使えないような服を半ば強制的に買うハメになります。」
男B「あと、必ず売り場に出てる服しか来ちゃダメなんですよ。売り切れになったらもうその服は着れない。当時、僕が着てた黒の鹿の子のポロシャツがその場で売り切れてしまったので、その場で違う色のポロシャツを購入したこともありました(笑)。」(強調は引用者)

社販ということで、割引価格で自社商品の購入を勧めるというのは、消費財を製造販売している会社では広く見られるところで、別にそれ自体は問題ではないのですが、「半ば強制的に」というところがマズイわけです。

自社製品を強制的に購入させることことの違法性が争われた裁判というと、美研事件(東京地判 平成20年11月11日)が思い浮かびます。

結果から言うと、こういう裁判でした。

① いじめ、退職強要等の不法行為に基づく損害について、慰謝料80万円、治療費5万円、逸失利益226万円(基本給の1年分)、弁護士費用31万円。
② 優越的な地位の乱用による不当な商品販売の不法行為の損害について、損害額18万円(商品代金)、弁護士費用役2万円
(『わかりやすいパワーハラスメント裁判例集』21世紀職業財団)
(強調は引用者)

そのほか、未払い賃金と時間外手当が認められています。

この「商品」というのは健康食品であり、原告は、営業社員(カウンセラー)でした。

X(原告の社員)は、商品を購入したが、これは、数回にわたり、Y2(部長)やZ専務が、概要、商品を理解しなければ仕事はできない、そのためには商品を買う必要があるとの趣旨のことを従業員に強く申し向けたためであり、殊にカウンセラーになってからは、営業成績を上げるために商品を購入するよう強く申し向け、Xはいったん拒否したが、これに対してさらに強く申し向けて、商品を理解しないものには仕事をさせるわけにはいかないと申し向けたため、気が進まなかったもののやむを得ず購入したものと認められる。(かっこ内は引用者)

仕事のために商品を理解しなければならないというのはそのとおりですが、高額な商品を社員自ら購入するよう強要するのは、「使用者としての立場をして、仕事をさせることにからめて従業員に不要な商品を購入させたものであるから、公序良俗に違反する商法であり、不法行為をも構成する」と判断されてもしかたがないでしょう。

ユニクロの場合は、この「自社商品」というのが、勤務中の服装の規制とからんでくるので、少し複雑になっています。

勤務中の服装については、会社側が服務規程などである程度規制することも、業務の合理性があれば認められます。アパレルの販売員が、勤務時間中に自社商品を身につけるということ自体は、営業的な判断からすれば、当然のことに思えます。

スーツや革靴など、主に仕事に使う服装については、自己負担が一般的ですし、法的にとくに問題はありません。この場合は、会社が身につける商品を指定し、さらにそれが自社商品であれば、自己負担7割というのはどうか、ということですね。

ユニクロの商品は比較的単価の安いものが多いのですが、それにしても、勤務時間が短く、また、それに従って給与も低額なバイトに対して、そこまでの自己負担を求めることができるか、というのは疑問です。

単純に、自社製品購入を強要することは違法、というだけではなく、業務上の必要性のある命令について、その費用負担をどこまで社員個人に求めることができるのか、という論点もある問題です。

 

****写真は、苧ヶ瀬池の夕景です。

 

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