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「事故を起こすと、労災の保険料って、上がるんだろ? それは困るなー」
「たしかに、メリット制といって、事故が起こったら、翌年労災の保険料率があがる制度はありますけど、社長さんのところは、対象になっていませんよ。」

第60号 労災申請はこわくない | メルマガ | メンタルサポートろうむ

労災保険のメリット制の条件は、いままで労災が起こったことがないような事業所であれば、正直「常時100人以上の労働者を使用する」ということだけ意識していればよいでしょう。上にリンクした記事にも書いてありますが、対象になれば、毎年労働保険の年度更新の前に送られてくる申告書でわかるようになっています。

このように、小規模の事業所では、メリット制は気にする必要はほとんどありません。

メリット制は、自動車保険に似ています。事故を起こすと、翌年の等級が下がり、保険料が上がってしまいますよね。

ちょっとこすったり、ぶつけたり、軽微な事故であれば、損害額と翌年からの保険料のアップ分を計算して、保険を使うか、自費で払うか、どちらが得か考えたりします。

自動車保険の場合は、保険料を払う人、つまり、翌年からの保険料アップをかぶる人と、事故の損害をかぶる人が同じです。ですから、まあ、そういう仕組だとあきらめますよね。

ところが、労災保険のメリット制は、そこが自動車保険と大きく違います。

保険料は全額会社持ちです。そして、事故が起こったときに、医療費や休業補償が必要になるのは、従業員です。もちろん、法律によって、その補償は会社が行わなければいけないことになっていますが、これを怠るのが「労災隠し」と言われるわけです。

建設業で下請けをたくさん使う工事では、メリット制の対象になるのがふつうです。

そして、建設業の労災は、もし下請けの作業員に事故が起こったときも、元請けの労災を使うことになっています。

元請けと下請けには、大きな力の差がありますね。下請けは、次の工事もまた使ってもらえないと困るので、元請けに対しては弱い立場になってしまいます。

そういうわけで、下請けの作業員が起こした労災事故が「元請けに迷惑がかかる」という論理で、隠されてしまうことがあるのです。

ミスを起こし損害が発生したときに、そのペナルティを課す、という発想はわかります。日本の労災事故がどんどん減り続けている背景には、やはりメリット制の効果もあるのでしょう。

しかし、元請け下請けの構造の中で、保険料を負担する人と、事故の損害を負担する人が別人の場合では、その効果はいかがなものでしょうか。

ここが、労災保険のメリット制のひとつの問題点なのです。