「働き方改革」の掛け声の中、実際に従業員の育児・介護に配慮し、ムダな残業を削減している会社も増えてきました。
しかし、日本社会の性別役割分担意識はまだまだ根強く、会社から配慮を受ける「従業員」の大半は、女性従業員でしょう。
保育園に行っている子供が熱を出したら、早退するのは母親である女性従業員。
学校の行事のために休みをとるのは、母親である女性従業員。
家族の介護のために、介護休業をとったり、短時間勤務をするのは女性従業員。
管理職になるよう求められても、家庭との両立ができないとしりごみするのは女性従業員。
くどいよ、と思われるかもしれませんが、これが現状です。
その女性従業員の夫、そして子供の父親である男性従業員の方は、家庭でなにがあろうと、とくになんの制約もなく働けます。
最初に書いた「従業員の育児・介護に配慮し、ムダな残業を削減している会社」に妻が勤めていれば、夫が勤めている会社は、妻の会社の努力にタダ乗りしているわけです。
従業員のほとんどが、家庭のために働き方の制約を受けない男性であれば、マネジメントは別に難しくありません。
なんの工夫もなく、従来からの働き方を続けさせる。
経営陣や管理職は楽ができます。
これはあまりに不合理だ、と考える人も多いことでしょう。
実際、わたしもそのような例を見ると、かなりもやもやします。
しかし、長い目で見れば、「タダ乗り」している会社もそんなにいいことばかりではありません。
女性が働きやすい職場は、男性も働きやすい職場です。
育児を主に担っているのは現状女性のほうがずっと多いのですが、家庭の負担は育児だけではありません。
介護となると、同居で主な介護者になっている男性は、2019年現在35.0%です。
2001年は23.6%でした。
年々増え続けています。
介護されている人との関係を見ると、もっと変化がはっきりわかります。
「子の配偶者」というカテゴリーがあります。
「娘の配偶者(婿)」はわずかで、ほとんどが「息子の配偶者(嫁)」です。
どう変化したかというと、2001年22.5%だったのが、2019年は7.5%です。
1/3 近くになっています。
この18年で、日本の家庭の状況はここまで変わっているのです。
もちろん、自分自身が病気になることもあります。
がんを発症するのは、中高年が多く、その年代の男性は職場で責任ある立場についていることも多いでしょう。
「24時間戦えますか」「ジャパニーズ ビジネスマン」というキャッチフレーズのCMがありました。
これは1988年です。
会社の風土が1988年と変わりなく、「24時間働ける」人中心になっていると、育児、介護、自身の病気で休みがちな人、短時間しか働けない人は、その会社に残ることができません。
たいせつな戦力が、どんどん辞めていきます。
また、そんな会社の採用はどうなるのか。
多くの企業がこぞって「働きやすい風土・社内制度」をアピールしていく中、これから会社に入ってくる若い世代が、旧態依然の会社に魅力を感じるでしょうか。
さらに、男性・健常者・性的に少数派ではない・日本人・中高年という狭い範囲の人が会社の中心になっていて、年々スピードが早くなってくるこの社会の変化についていけるのでしょうか。
守り続けていくべき企業の価値と、時代によって変化していかなければならない風土。
この切り分けができない「タダ乗り会社」の未来は暗いことは、はっきりしています。
「タダ乗り」されている会社の方は、苦笑しながらも、だからといって改革の手を緩めるわけではありません。
いまが過渡期であり、いずれは自分たちの会社が生き残っていくことをよく知っているでしょう。
あなたの会社はどちらでしょう?
「タダ乗り」しているほうですか?
「タダ乗り」させているほうですか?