ことしも年末調整の季節がやってきました。
担当者の方は、たださえ忙しい年末に、細かい数字と取り組み、期限を守らない従業員、説明をちゃんと読まずにやたらに聞いてくる従業員の相手をしなければならず、ゆううつになっているのではないでしょうか。
しかし、毎年のことなのに、ただ「めんどくさい、やりたくない」と嘆いているだけではつまらないですね。
年末調整のプロセスを、たんなる事務手続きと考えるのではなく、従業員の方たちとのコミュニケーションを深め、エンゲージメント(仕事に熱意をもち、会社への愛着がある状態)を向上させるチャンスと捉えましょう。
コミュニケーションはエンゲージメントの鍵
従業員のエンゲージメントは、会社からの積極的なコミュニケーションによって高められます。
「わたしはこの会社に必要とされていて、ずっとこの会社で働きたい」と思ってもらうためには、会社が従業員を大切にしているという点をくりかえし伝える必要があります。
年末調整での従業員とのやりとりは、会社がどれほど従業員の利便を考えているか、を示す機会でもあります。
すべての従業員が年末調整についての情報をしっかり理解し、スムーズに手続きを進められるようにするためには、明確かつ効果的なコミュニケーションが必要です。
次のような施策はいかがでしょうか。
目で見てわかりやすい情報提供
年末調整のスケジュールをわかりやすく図を多用したポスターにして掲示したり、各種控除についての簡単な説明動画を作成して共有することで、視覚的にも理解を助けることができます。
動画については、自社で作成しなくても、国税庁で短い動画を用意しているので、それを利用するのもいいですね。
年末調整についての説明会を開催する
また、年末調整に関する説明会を開催して、注意点等を担当者が説明し、直接質問に答える場を設けるのもよいでしょう。
短時間でも、多くの従業員を集めるということは抵抗があるものですが、出先にいる場合や、遠方の営業所の従業員については、Zoom 等の Web 会議システムを利用することによって、負担なく参加することができます。
とくに、入社して間もない若手社員は、年末調整がなんのために行われるのか、基本のキから説明しておきましょう。
年末調整の基本とは、本来は個人で所得税の申告をすべきところを、会社がとりまとめて計算し過不足の調整をする義務が課されているということですね。
従業員にとってもこの制度がメリットが大きいこと、それに対して会社の負担は大きいので、できるだけ協力してほしい、ということを理解するためには、基本的な知識が必要です。
各部署に年末調整の担当者が説明しに行く
多くの従業員を集めることが難しい場合は、担当者が手分けして、また、数日に分けて、それぞれの部署に説明にいくことも有効です。
出前方式のミニ説明会を行うと、上記の会社ぐるみの説明会の利点に加えて、バックオフィス部門とその他の部門との意思の疎通をはかることもできます。
人事部や総務部について、なんとなくけむたく感じている従業員は多いものです。
率直で明るい態度で、必要な説明をし、質問に答えることで、部門間の隔てをなくしていくこともできます。
質問を共有する
ひとりの人から出てきた質問は、他の人も疑問に思っていることが多いものです。
説明会や個別に出てきた質問は、とりまとめて、その場にいなかった従業員も見られるようにしておきましょう。
ある程度まとまった時点で、Q&A の形で、メールで情報提供したり、社内イントラネットで見られるようにしておく方法があります。
もちろん、昔ながらの紙での回覧という方法も、事業所の形態によっては、いまでも威力を発揮します。
透明性を高める情報共有
年末調整の詳細を伝える際は、その背景や計算方法も含めて透明性を持って説明することが大切です。
情報共有の透明性とは、会社が従業員に対して、意思決定のプロセスや結果、組織のパフォーマンス、業務プロセス、そして将来の計画などの重要な情報を開かれた形で提供し、隠し事がないことを意味します。
年末調整が担当部署でどのように処理されているのかプロセスを説明し、どの点に困っているのか、申告書を提出するときはどのような点に気をつけてもらうと仕事がスムースに進むのか、という点を説明しましょう。
「なぜ申告書が期限通りに提出されないのか」「なぜこんなに書き漏れが多いのか」という、毎年の担当者の悩みも、他の部署の従業員はよくわかっていないのではないでしょうか。
当事者の口から率直に説明することで、この仕事のたいへんさを理解してもらうことができ、協力を得やすくなります。
また、「この控除はどのように働くのか?」「税金がどう計算されるのか?」といった具体的な疑問に答えることで、多くの従業員の理解を深めることができます。
フィードバックの積極的な収集と反映
年末調整を終えた後に、従業員からのフィードバックを求めることは、非常に重要です。
アンケートを行ったり、カジュアルなコーヒーミーティングでリラックスした雰囲気の中で意見交換をするのも一つの方法です。
フィードバックをもとに、次年度の年末調整のプロセス改善に活かすことで、従業員の皆さんが実感できる変化を作り出すことができます。
年末調整のプロセスを通じて、従業員の皆さんとのコミュニケーションを深め、組織へのエンゲージメントを高めることは、会社にとっても従業員にとっても大きなメリットがあります。
ぜひ、この機会を活用して、よりよい職場環境を作り上げる一助にしましょう。