世の中には、さまざまなメソッドがあふれています。
メソッドというと、プログラミング用語を思い浮かべる方もいると思いますが、ここでは、エキササイズ、カウンセリング、セラピー等の「方法論」について語ります。
音楽の世界では、ヤマハ、スズキのメソッドが有名ですね。
同じ「ヨガ」という名前がついていても、流派というべきか種類というべきか、代表的なものでも10種類くらいのメソッドがあると言われています。
ダイエットとなると、王道といわれるカロリー制限と運動を併用したものから、さまざまな食べ方や食べ物の種類を決めるもの、食べる時間や間隔に着目したもの、とにかく、書ききれないくらいのたくさんのメソッドがあります。
ひとつだけ言えることは、「だれにでも効果のある万能のメソッドはない」ということです。
ビジネスとして、メソッドを売り込む側からすれば、「だれにでも効果がある」と言いたいところですが、効果ゼロということはないにしろ、人によって向き不向きがあり、効果の出方はさまざまです。
つまり、自分に向いたメソッドを見つけるまでは、ある程度の試行錯誤が必要だということです。
失敗からみつけたこと
試行錯誤ということですので、やってみて「あー、やっぱりダメだった」と、失敗で終わることも当然あります。
ここ数ヶ月で、ダイエットとエキササイズの分野で、ふたつの失敗を体験しました。
お金と時間を無駄にした、と言いたいところですが、得たものがなかったわけではありません。
失敗したということは、そのメソッドは自分に合わないとわかったということです。
それは、やってみないとわかりません。
また、自分自身も、ビジネスや心理の分野で、コンサルティングやカウンセリングを提供している側として、大きな学びがありました。
もう少し、具体的に見てみましょう。
失敗その1 糖質制限
5月から筋トレのパーソナルレッスンに通うようになり、食事内容についても指導が受けられるということで、糖質制限に取り組みました。
1日の糖質量 50g以下をめざすという、まあまあ厳しい内容でした。
結果から言うと、かなりまじめに取り組んだにも関わらず、1ヶ月やってマイナス1キロ。
糖質制限という、めんどくさい上にストレスがたまるメソッドに取り組まなくても、お酒やおやつを減らし、食べ過ぎに気をつけるだけでも、そのくらいは減ります。
明らかに失敗ですね。
自分には向いていないとわかりました。
どれが決定打かはわかりませんが、続けられなかった理由はこんなところです。
- 胃腸が弱いので、糖質を減らすかわりに、タンパク質と脂質をたくさん摂ると消化しきれなかった。
- いままでも、それほどたくさん食べていたわけではなく、糖質の量も多くなかったので、体へのインパクトがなかった。
- 食物繊維の確保が難しいので、水分をたくさん摂るようにしたが、電解質のバランスが崩れたらしく、ひんぱんに足がつるようになった。
その後は、夕食で主食を抜く程度のゆるい糖質制限と、ウォーキングと筋トレで、ゆっくりですが着実に体重を減らしています。
なにより、問題だった血糖値(HbA1c)が、劇的に減り、正常値まであとわずかというところまで来ました。
さて、パーソナルレッスンなので、専属のトレーナーと相談しながら進めていました。
食事指導についても、糖質制限があまり効果がないとわかると、「脂質とカロリーを控える」というありがちな指示が出て、このほうがわたしにはずっと合っていたようです。
また、運動についても、「年齢と体力を考えると、筋トレがんばるより、まずは軽い有酸素運動から始めた方がいい」というアドバイスがあり、ウォーキングに取り組んだところ、これも自分に向いているとわかりました。
結局、そのトレーニングジムのやり方とは違いますが、個人の事情に合わせて、他の選択肢を提示してもらったことで、結果につながったということです。
失敗その2 体幹トレーニング
6月から、8回のコースで体幹トレーニングのパーソナルレッスンを受講しました。
ところが、半分の4回やったところで、これ以上続けられないとわかり、指導者に申し出て、途中で終了してしまいました。
これは明らかに、そのメソッドの方向性と、わたしの求めているものが不一致でした。
そのメソッドは、次のような特徴がありました。
- 時間はかかるが、着実に体幹に作用し、怪我の心配がない。
- 毎日自宅で用意された動画を見て、自主練習が必要。
- 急激な体重減少等をめざすものではなく、生活全般の質があがるのが目的。
これ自体、別に問題のある内容ではないのですが、わたしが求めていたのは、「効率的に体を変える」ということ。
別にヨガでも筋トレでもピラティスでもなんでもよかったのですが、元々別のところでお付き合いがあり、信頼している指導者の方だったので、その方向性を確認することなく、始めてしまいました。
また、練習内容も、わたしにとっては爽快感も達成感も感じられず、まったく楽しくない、というより不快なものでした。
他の方はそんなことはなかったようなので、これはわたし個人の事情だったのかもしれません。
その点について指導者に訴えると「トレーニングなので、やっているうちにできるようになる」という返事しかなく、正直「修行か?」と、がっかりしました。
筋トレやヨガもやっているときは苦しくてつらいですが、終わると気分がよくなります。
やっている最中も、苦しいとはいっても、体に効いている感覚があるので、不快というわけではありません。
不快でうんざりするようなものを毎日やれと言われても、それはできないですよね。
念のためいうと、筋トレやストレッチ、ヨガ等は、家で自主練をまじめにできる方ですし、実際にかなりの期間やっていました。
結果だけでなく、プロセスの楽しさもないと、続けられないと感じました。
なにより、習っている側は練習内容に不満があり、教えている側は、家で自主練をやってこないことに不満を感じているのが明らかだったのに、この方向性でよいのか、他のやり方はないのか、という相談ができなかったのが、途中で終了した最大の要因ですね。
もちろん、これは指導者側だけの問題ではありませんが、指導者が提供しているメソッドにとらわれてしまい、習う側の問題解決にフォーカスしていなかったことは否定できないでしょう。
レッスンの目的はなにか
上記の体幹トレーニングはモニターとしての利用だったので、メソッドを試すということに主眼があったのは確かです。
しかし、わたし自身も、新しいメソッド(ワークショップ)を自主開催セミナーで安価に提供する代わりに、メソッドの効果を試し、自分自身も経験を積むということをたくさんやっていたので、これは、はっきり言えるのですが、メソッドを試すことが主目的になってはいけません。
レッスンやセミナーの主役は、教えている側ではなく習う側であり、習う側の問題解決や目標達成を目指すものです。
仮に、ごく安価な料金や無料であったとしても、相手の大切な時間を使っていて、会場まで足を運んでもらっているのですから、こちらの都合だけを押し付けることはできません。
その大原則を忘れて、パーソナルレッスンや少人数のグループレッスンで、相手の状況に関わらず、自分のメソッドを押し付けるのは、慎むべきでしょう。
カウンセリングやコンサルティングにも多数の手法があります。
自分のメソッドに惚れ込むあまり、クライアントの問題解決そっちのけで、そのメソッドを使うことにこだわるというのは、未熟なコンサルやカウンセラーあるあるです。
わたし自身も日々自分のメソッドを磨き、新たなメソッドを探して、いいなと思うものがあったら、本を読んだりセミナーに出席して使えるようにする、ということを繰り返しています。
クライアントの問題解決をするためには、どのメソッドを使うかが主要な問題ではありません。
最初にクライアントから出てくる要望や問題は、実は表面上の部分で、ほんとうの原因は別にあるということが、よくあります。
ほんとうの意味でクライアントの役にたつには、きちんとヒアリングして、まずはどこにアプローチすべきか、本質をつかむことが第一です。
次に、たくさんのメソッドの引き出しの中から、相手の個別の事情に合ったものを提供して、クライアントを精神的にサポートしつつ実施することが第二です。
コンサルやカウンセラーとして、当たり前と思っていた上に書いた内容の大切さを、最近のふたつの失敗から、改めて思い知りました。
失敗とはいっても、悪くない体験でした。