小さいお子さんを連れてきている人がたくさんいたが、子供が見てもおもしろいもんではなかろう。アニメだからって子供向けとは限らない。
夢のシーンが現実とひと続きでたくさん出てくる。
そして、現実のシーンもまた、ある種の男性の夢というか、願望だよなぁと思って見ていた。
時代、と言ってしまえばそれまでなんだけど、婚約者が重病でも、仕事は休まない。好きなだけ仕事に打ち込める。
その婚約者も、主人公の前ではけなげにふるまい、いよいよ死にそうになったら姿を消してしまう。だから主人公は、愛する人との永遠の別れのつらさは背負っているが、看病のしんどさは知らない。悲恋のおいしいとこどりである。
そういえば、会社の先輩が離れに婚約者を受け入れてくれるわけだが、重症の結核だというのに、感染への恐れは毛ほども見せず、温かく迎え入れる。そして、おとならしい分別を働かせて、彼女を療養所に戻すよう説得もせず、いっしょにいたいというふたりの思いをしっかり受け止めて、結婚の媒酌までしてくれるのである。
美しい飛行機を作りたい、という思いが、現実には兵器を作っているという葛藤も、特高にマークされるということで、逆に「良心の人」というレッテルを自分に貼っているような感じもする。
どこやらからクレームがついたとのことであるが、タバコも周りを慮ることなく吸い放題。まあ、これも時代だからとくに不自然ではない。
「千と千尋」で夢の中のような風景がたくさん出てきたが、この映画もまた同工である。子供向けの映画にありがちな、主人公への試練がないから、子供向けではないが。
「美しい夢」というフレーズが何度も出てくるが、確かに美しいことは美しいけれども、ちょっと願望充足が表に出すぎていてしらけたのも確かだ。
これでは、美しすぎる。
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