「解雇と退職の違いってわかりますか?」
「解雇って、会社に辞めさせられることで、退職は自分から辞めることですよね」
「では、『会社都合の退職』はどうですか? 会社から『辞めてくれ』と言われるわけですよね?」
「あれ?」
実は、この点があいまいな方は、経営者の中にも少なくありません。
ここがはっきりしないままだと、会社と従業員の間で、「辞める、辞めない」の話になったときに、お互いの認識が食い違っていて、それがもとで、トラブルになってしまうこともあります。
一度、確認しておきましょう。
まず、解雇とは、法律的に言うと、会社が労働契約を一方的に解消する意思表示です。
とつぜん難しくなりましたが、具体的に言うと「あなたを◯月◯日付けで解雇します」と会社が言った場合、言われた人にとっては、抵抗する方法はありません。
「わたしには辞めるつもりはない」「辞めません」と抵抗しても、解雇予告などの解雇に関するきまりを守っていれば、会社は解雇できるのです。
解雇の理由に納得がいかなければ、「不当解雇」として、裁判に訴えるか、労働局のあっせん、民事調停、労働審判などを申し込むことになります。
これに対して、労働者が辞めることに同意している場合を、退職といいます。
自分から「辞めたい」という場合はもちろんですが、会社から「辞めてほしい」と言われた場合でも、辞めるかどうか判断する権利は、労働者の側にあります。
辞めたくなければ、会社からの「辞めてほしい」という話(これを「退職勧奨」といいます)を拒否してもよいのです。
解雇の場合は、1ヶ月以上前に予告するか、または、解雇予告手当てを支払う義務が会社の側にありますが、退職ですと、お互いの合意の上ですので、このような義務はありません。
また、逆に、労働者の側が「退職します」と会社に意思表示した場合、会社がそれに同意しなくても、辞めることができます。
「会社が辞めさせてくれない」という相談やトラブルをよく見かけますが、法律的に言うと、「会社が辞めさせてくれないから辞められない」というのは、間違いです。
退職の意思表明をしてから、2週間たてば、自動的に労働契約は終了します。平たく言えば、退職できます。
「勝手に辞めたら、損害賠償を請求してやる」
「この業界で二度と働けないようにしてやる」
などと言われて、身動きがとれなくなるという話も聞きますが、たいていはそういう言葉は脅しだけで根拠はありません。逆に、脅迫罪が成立することもありえます。
法律を知っていることが自分の身を守ることにもなり、会社をトラブルから救うことにもなるのです。