発達障害のお子さんを育てることと職場の人材育成の共通点
ツイッターで紹介していた方がいて、こんなサイトを見つけました。
発達障害のお子さんを育てている方のために、さまざまなツールを用意したものです。とくに障害のないお子さんにも使える内容ですが、大人にも有効なものがけっこうあります。
「自己肯定感を高める」というテーマなどは、職場での人材育成を考えるときにもたいせつなものです。
いま職場の若い人たちに増えているといわれる「新型うつ」も、自己肯定感の低さがその根本にあると考えています。仕事を教えながら、自己肯定感を高めるとりくみが、新人を一人前にするために求められているのです。
声かけ変換表
このサイトに用意されたツールの中でも、これはいいな、と思ったのが、「声かけ変換表(指示・命令・禁止)」というタイトルの一覧です。
「いい加減にしなさい!」「うるさい!」「やめなさい!」「早く◯◯しなさい!」のような、子育てするときにどうしても発してしまう言葉を、もっと子供に伝わり、適切な行動を促すような言い方に変換する例がたくさん載っています。
元の言葉には、どれも「!」マークがついていて、語気荒く言っていることがわかります。子供を育てたことのある方には、たいてい身に覚えのある言葉ですし、子供の時、親から一度も言われなかった人はあまりいないような、ほんとうにありふれた言葉です。
それが、変換後は「◯◯してくれる?」「◯◯したらいいよ」という形になっています。内容的にも、具体的に指示するものになっているのですが、感情的にもおだやかな言い方になっていることがわかります。
この表を見て、なにか感じることはないでしょうか?
叱る側の怒りの感情はどうなるのか?
そう、つい語気荒く叱ってしまう時の腹立ち、それがないことにされています。叱る側のストレスは、これではたまっていくばかりではないのか? という疑問が出てきますね。
怒りを感じるのは、自然なことです。怒りの感情を押し殺したり、ためこんでしまうと、体にも心にも悪い影響があると、わたしもたびたびお伝えしています。
叱る目的はなにか
怒りの感情を感じることは、べつに悪いことではありません。ただ、その感情をそのまま相手にぶつけてしまうことは、職場では新たな問題を生み出す行動になってしまいます。
部下や後輩を叱る目的はなんでしょうか。
あなたの怒りの感情をはらすため、ストレスを感じないようにすっきりするため、ではありませんよね。
怒りを言葉で表す
叱る原因になった行動を、次回はしないように、職業人としてより適切な行動ができるようになるために、叱責も必要なことは多々あります。
怒るのはかまいませんが、その怒りは、声の大きさや書類を叩きつけることで表すのではなく、言葉であわらしましょう。
「きみの◯◯な行動を見ていると腹が立ってくるよ」
あなたのキャラクターによって、言い方はいろいろでしょう。また、言葉にあらわさずに、先ほど紹介した言い換え表のように、相手への具体的な要求だけを述べることもできます。
怒りの背後にある「べき」論
怒りの感情は、相手がきちんと自分の要求に応えてくれれば、自然と静まっていきます。そのために必要な言葉を発するのが、合理的な行動です。
人間の感情は合理性だけでは処理できない、ということであれば、怒りで感じたストレスは、趣味に打ち込んだりおいしいものを食べたり、しっかり睡眠をとったり、など、別の方法で処理するしかありません。
でも、そもそも、そんなに怒るようなことがたくさんあるのであれば、その原因を考えてみる必要があるかもしれません。
怒りの背後には、たいてい「相手は◯◯すべき」という「べき」論が隠れています。
「部下はわたしのいうことを即座に実行すべき」
「同じことを何回も失敗するべきではない」
「わたしのほうが相手よりも上なのだから、相手はわたしに支配されるべき」
などなど・・・
そんなのあたりまえじゃないか、と思った方は要注意です。
確かに「べき」かもしれませんが、相手がそれを必ずできる、と考えるのは、あまり現実的ではありませんね。非現実的な考えにしがみついているのは、ビジネスパーソンとしては適切な行動ではないでしょう。
怒りの元になりやすい上下の感覚
とくに、最後の、相手との間に上下関係を強く感じている場合、まわりから見て「そんなに怒ること?」と思うようなことでも、怒りを感じやすくなってしまいます。
そのもとになっているのは、
「自分に逆らうなんて生意気だ」
「自分のいうことをきかない相手が悪い」
「自分は、相手からもっと尊重されるべきだ」
という感情です。これは、仕事上で叱責する目的とはかけはなれていますよね。
職制上の上下関係や、仕事の経験年数から来る上下関係は、実際にあるものです。でもそれは、たまたまそのような位置にお互いにいるだけのことで、あなたが上司であり、先輩だからといって、別にエライわけではありません。
「オレのほうがエライ」という権威で、相手にいうことを聞かせようとするのは、相手に反発心をもたせ、逆効果になることが多いのです。
気づくだけでも違う
長年、上下関係の枠組みの中で考えてきた人が、急に「本来人間は対等なものだ」と考えをかえるのは、難しいかもしれません。
でも、自分の中にそのような「相手との間に上下関係を設定する傾向」がある、と気づくだけでも、気づかないときとは、ずいぶん違っくるものです。
今回ご紹介した「声かけ変換表」をじっくり眺め、もとの言葉のさらに左側にある感情はどこから出てくるのか、考えてみましょう。
部下の育成には、心理的な知識が欠かせません。職場の法律と心理、双方に通じたメンタルサポートろうむにご相談ください。
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