任意継続被保険者の保険証発行が早くなる
協会けんぽより、任意継続の保険証発行が、早くなるとのお知らせが出されました。
いままでは、事業主が年金事務所に提出した「健康保険資格喪失届」を確認後保険証を発行していたので、郵送するまで2,3週間かかっていました。
2019年10月からは、下記のような、「資格喪失の事実が確認できる事業主または公的機関の証明印が押された書類」を提出すれば、1週間程度で保険証が郵送されるということです。
- 退職証明書写し
- 雇用保険被保険者離職票写し
- 健康保険被保険者資格喪失届写し
「退職証明書」は、事業主の印があればよい書類なので、退職するときにもらっておくとよいでしょう。
そもそも「健康保険の任意継続」ってなに?
会社で社会保険に加入していた人が退職した場合は、健康保険・年金の手続きが必要になります。
次の会社にすぐ入社し、社会保険に加入する場合は、新しい会社が手続きしてくれますので、本人はとくになにもする必要はありません。
すぐにまたお勤めしない場合は、市町村役場に行って、国民健康保険・国民年金に加入する手続きをします。
年金については、60歳以下の方であれば、国民年金に加入しなければなりませんが、健康保険については、もともと入っていた会社の健康保険にそのまま加入するという選択肢があります。
これを「任意継続」と言い、その被保険者になった人は「任意継続被保険者」と呼びます。
われわれ社労士や、会社の手続き担当の方は「任継」と略称で呼んでいますね。
任意継続被保険者になれる条件は、次のふたつです。
(1)資格喪失日の前日までに「継続して2ヶ月以上の被保険者期間」があること。
(2)資格喪失日から「20日以内」に申請すること。(20日目が営業日でない場合は翌営業日まで)
これに当てはまり、継続を希望する人は、自宅住所地を管轄する健康保険協会の都道府県支部に、「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」と、被扶養者がいる場合は、添付書類を提出します。
郵送OKです。
任意継続については、次ののことも知っておく必要があります。
- 被保険者期間は、任意継続被保険者となった日から2年間で、途中で勝手にやめることはできない。
- 保険料納付日までに納付しないと、その翌日に被保険者資格がなくなる。
- 保険料は、退職したときの健康保険料の2倍。ただし、報酬月額30万円が最高。
- 傷病手当金と出産手当金は支給されない。
保険料が退職したときの2倍?
そんなに払っても、まだ国民健康保険よりも安くなるの?
こう思うかもしれませんが、実は任継のほうが安い方がけっこういらっしゃいます。
国民健康保険の保険料のしくみ
国民健康保険の保険料(国民健康保険税)は、厚生年金とは大きくしくみが違い、次の4つの合計額になります。
所得割:世帯全体の昨年の所得に応じてかかる
均等割:世帯の人員ひとりにつきかかる
平等割:1世帯あたりにかかる
資産割:固定資産税の税額に応じてかかる(自治体によってはないところもある。都市部はない場合が多い)
国民健康保険の保険料は、各自治体によって違いますので、まずはお住まいの市区町村にいくらになるのか、確認していただく必要があります。
最近は、計算方法をホームページに出している自治体も多いので、自分でも計算できますね。
任意継続と国民健康保険、どちらが保険料が安いか
会社の健康保険と国民健康保険、どちらも自己負担額は3割です。
ですから、保険料を見比べて有利な方を選ぶことになります。
まず、国民健康保険は昨年の税額に応じてかかりますので、辞めた直後の保険料は、会社に勤めていたときの収入を元に決まります。
会社を辞めて収入がなくなったか、激減したのに、国民健康保険の納付書が来て、あまりに高額なのに驚く人も多いでしょう。
まとめると、次のような人が、任意継続の保険料のほうが、たとえ勤めていたときの2倍でも安い場合が多いのです。
- 退職前の月収が30万円より多かった人。
- 被扶養者の人数が多い人。
- 不動産を所有している人。(お住まいの自治体に「資産割」がある場合)
任意継続の申請期限は、退職から20日後です。
うっかりしていると、過ぎてしまいます。
退職を決めたら、健康保険についてどのようにするのか、在職中に検討しておきましょう。
会社の実務担当者の方は、上のような条件にあてはまる従業員から退職の申し出があったら、「健康保険は任意継続という方法もあるよ」と一言教えてあげるとよいでしょう。