ふざけたタイトルですみません。
「モンスター社員」という言葉からは、こんな絵しか浮かびません。
会社とトラブルになる従業員で、悪意があり、労働法をうまく利用する人をこのように言うのだと思いますが、こういう他者化[1]相手を自分とは別のカテゴリーに入れて、場合によっては敵視することは、あまりよろしくないな、と思っています。[2]今回の話とは関係ありませんが「ブラック企業」も、つい使ってしまいますが、問題のある用語だと思っています
さて、社労士を20年もやっていますと、まともに働く気がなく、会社や雇用保険等からなんとかして金を引き出そうと考えている、いわゆる「モンスター社員」とは、何度か遭遇したことがあります。
経営者からすると、まことに腹立たしい存在です。
いや、経営者だけでなく、人事労務担当者から見ても頭が痛く、憎らしい相手ですね。
こういう人たちの要求する金銭は、それほど大きなものではなく、会社からすると「とりあえずお金を払って厄介払いしたい」という考えになりがちです。
社労士としても、場合によりますが、そうおすすめすることもあります。
しかし、「おとなしく会社の言うとおりに働いている社員にはお金を出さないのに、騒ぎ立てる者には払う」ということに、釈然としない思いを抱く社長さんは少なくないですね。
会社からすると、もちろん「文句を言わずにおとなしく働く」社員は、ありがたい存在です。
でも、ずっとその思考のままでいるのは、実は会社を危うくすることでもあります。
多少の労働法違反でも、会社に逆らわない。文句も言わない。
そんな社員ばかりで、会社もそれでよしとしてしまえば、その会社の労務管理はどんどん時代に取り残されます。
労働基準監督署に指摘を受けるだけならよいですが、そんな会社に見切りをつけて、社員がどんどん辞めてしまう。
新規に求人しても、そのような会社には魅力がなく、なかなか人が集まらない。
こんな未来が見えます。
また、労働条件に問題があっても社員がなにも言えないような会社は、その他の面でも、社員の声が上に届きにくい、社員も「言ったってしょうがない」とあきらめるという状況になっているのではないでしょうか。
現場にいる社員が思ったことを言えないようでは、コンプライアンス違反があってもわかりません。イノベーションも起こりません。
うるさくてめんどくさい社員がいるからこそ、会社も現状の問題点を認識でき、変わっていこうという意思を持つことができるのです。
でも、そういう「うるさい」社員は、会社がよくなるように考えている。自分のことしか考えていない「モンスター社員」とは違うのではないか。
こうお思いの人も多いでしょう。
最初から「モンスター」な「モンスター社員」もゼロではありませんが、そういう人を採用したのは会社の責任です。
そして、最初はまじめに働く気持ちだったのに、会社のやり方に不満を持ち、会社から見て「モンスター」になってしまう社員の方が、数としては多いのではないかと思っています。
また、会社が社員のために、よかれと思って作った福利厚生制度などにタダ乗りされると、「制度の要件を厳しくして、不適切な利用がないようにしよう」と考えがちです。
これも、いったいなんのための制度なのか、という原点に戻って考えてみれば、「タダ乗りをなくす」ことと「制度を利用しにくくする」ことと引き換えていいかどうかは、すぐわかるはずです。