相手のためを思っているはずが・・・

「困ったことがあったら言って。なんでも聞くよ」
というのは、上司や友達から言われると、ありがたい言葉ですね。

でも、「聞くよ」と言っていながら、いざ話を始めると、ろくに聞きもしないでアドバイスを始める人がいます。

「わたしもこういうことがあってね」、という自分の体験談。
「テレビで見たんだけど、こういう方法があるよ」という情報。
「人(社会人、母親、等等)としてこうすべき」という倫理や道徳。

自分の話を聞いてもらいたかったのに、聞くどころかとくとくと喋りだす相手を見て、なんだかもやもや、という体験はありませんか。

もちろん、アドバイスが役に立つこともありますし、立場上、相手に指示、アドバイスをすべき場合もあります。
でも、「相手の話を聞かずに」アドバイスだけすると、役に立たないどころか、いやな気持にさせるだけだったりします。

さらに、アドバイスをする側が、職場の上司であるとか、立場が上の場合、自分ではアドバイスのつもりでも、相手は自分の決定権や意見をないがしろにされたように感じることもあります。
こうなると、「相手のためを思って」、親切でしている行為が、完全に逆効果ですね。

そういう困ったアドバイス(よく「クソバイス」と言いますね)の特徴を見てみましょう。
ひどいときは、3つ全部ということもありますが、ひとつでも当てはまったらもう「クソバイス」です。

1.アドバイスの内容が、困っていることとマッチしていない

相手の話を聞いてないと、起こりがちなことです。
「なんでそんなことで悩んでるの? こうすれば簡単でしょ」と思うかもしれませんが、相手にはあなたが知らないいろいろな事情があります。

また、あなたが解決策として出したことは、相手はとっくにやってみてダメだったことかもしれません。
困っている人は、長い期間そのことについて困っていて、考えに考え、いろいろ試している場合もあります。
いまその話を聞いたあなたが、そういう人に対して、思いつきでなにか言っても、たいてい外します。

2.自分の体験談や自説を話したいだけ

自分では、自分がしゃべりたいこと、自慢したいことをしゃべっているとは夢にも思っていません。
相手の役に立つと思って、自分の体験談や自説をご披露しているのです。
でも、その話が相手に役に立つかどうかは微妙です。
時代が違う、状況が違う、なによりあなたと相手は性格も生い立ちもなにもかも違う別の人間です。
自分がやってうまくいったことが、そのまま相手に適用できるとは限りません。

だいたい、相手の話を聞いていて「わたしにもこういうことがあったなー」と頭に浮かんだら、その時点で、あなたの関心は相手の話ではなく、自分の過去や内面に向かっています。
聞いているようで聞いていない状態なのです。

もちろん、相手の話から自分の体験を思い出すのは自然なことですが、それをそのまま相手にぶつけていいわけではありません。

3.自分のアドバイスが受け入れられないと気を悪くする

ぜったいわたしのほうが正しい。
年齢も上だし、この分野ではわたしのほうがずっと経験がある。

こう思っていると、相手が「そのやり方はちょっと・・・」とやんわり拒絶してくると、それだけで気を悪くしてしまいます。
とくに、上司が、毎度「自分のいうことが聞けないのか。これが絶対だ」とごりごり押し付けたら、パワハラになる場合もあります。

相手からすると、勝手に話をして、勝手に怒っている状態です。
こうなると迷惑としか言いようがありません。

アドバイスなのだから、受け入れるかどうかの決定権は相手にあります。
押し付けととられないよう、「これはわたしの意見なんだけど」「決めるのはあなただ」ということをはっきり伝えたほうがいいですね。

アドバイスがクソバイスにならないために

さて、せっかくのアドバイスがクソバイスにならないためには、どうしたらいいのでしょうか。

それは、「相手が聞いてくるまでアドバイスしない」「相手が尋ねてこなければアドバイスしない」、つまり「ただただ、相手の話に集中して聴く」という、それだけです。

でもこれは、けっこう難しいことです。
言いたいことが胸の中にうずまき、それを言わないですますとモヤモヤします。
アドバイスするほうが、よっぽどすっきりしますよね。

自分の気持ちは脇において、その難しいことをやってあげることが、相手への大きなプレゼントになるのです。

いま、たいへんな状況にいる人たちがそばにいたら、「相手の話を集中してしっかり聴く」ことが、助けになる場合があります。
もちろん「聴くよ~」というのが押し付けにならないように。
サポートする立場であることを忘れないようにしましょう。