あなたの周りにこんな人はいませんか?
- いつも仏頂面。眉間にシワが寄っている。
- 話しかけてもこちらを見ないで返事をする。
- 話しかけても返事をするまで時間がかかったり、返事がなかったりして、聞いているのかどうかわからない。
- なにか報告すると「は?」「で?」「まず結論から言って」「どうしましょうかって、なにをしてほしいの?」等を口癖のように言う。
- なにか質問すると「いまですか?」「こないだ言ったと思うけど」「まず自分で調べてから聞いて」等と不愉快そうに言う。
- ドアや引き出しの開け閉めや、タイピングするときの音がやたらに大きい。
- しょっちゅうため息をつく。
- たびたび舌打ちをする。
あー、いるいる。うちの上司がこれだわ。夫が、妻が…等、思い当たる人もいるのではないでしょうか。
人間だれでも不機嫌なときはありますが、いつもこのような状態で、それが平常運転になっている人がいます。
不機嫌な態度を続ける個人的なメリット
このような態度に接した人がまず思うのは、「わたし、なにか悪いことしたかな?」です。
自分のほうになにか落ち度があったのではないかと考え、相手が気に入るように直そうとします。
相手が上司や先輩等、職場で自分に指示する立場の人であれば、なおさらですね。
このような態度をとっている人からすると、自分ではなにもしなくても、相手が自分の意図を忖度し、一生懸命それに合わせようとしてくれるのです。
不機嫌で周りを支配しているという状態です。
はっきり言葉にして指示したり、指導したりすることは、かなりの労力を伴います。
それをしなくても、周りが必死になって察してくれようとするのです。
とても楽ですね。
また、多少嫌なことがあっても、関係ないところ、とくに会社ではその気持ちを隠したり、切り替えて、感じよくふるまっている人が大半です。
自分のいやな気持ちを露骨に態度に表して、相手まで嫌な気分にさせてしまうことは、ふつうしません。
もちろん、これも努力が必要です。
その努力も放棄して、子供のように自分の感情をむき出しにしているのです。
これも、とても楽な状態です。
意識してやっているかどうかはともかく、そのような状態が当たり前になってしまうと、なかなか直すことができません。
そもそも、問題がある状態だということも、認識していない人がほとんどではないでしょうか。
不機嫌な態度の職場への悪影響
しかし、これでは、周りはたまったものでありません。
とくに、管理職や職場リーダーがそのような態度をとっていると、職場やチーム全体に悪影響が現れてきます。
モチベーションの低下
不機嫌な上司が部下に対して常に圧力をかけると、部下のモチベーションが低下し、仕事に打ち込めなくなります。
働きづらい環境でストレスを感じ、結果として生産性が低下します。
コミュニケーションの妨げ
上司がいつも不機嫌なようすだと、部下は上司に話しかけることをためらうようになり、コミュニケーションの障害となります。
率直な意見やアイデアも出てこず、上司のもとに情報も集まらなくなります。
ストレス過多の健康への悪影響
長期にわたる上司の不機嫌な態度は、部下たちのメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があります。
慢性的なストレスで、うつ病や適応障害を発症し、休職・退職するメンバーが出てくるかもしれません。
チーム内での協力の減少
不機嫌な上司の下で働く部下たちは、上司だけでなく、チームのメンバーとも積極的に意思疎通しなくなり、チームとして協力することが難しくなります。
困ったことがあっても、チーム内で助けを求めたり、だれかをサポートしようという気持ちもなくなります。
みなが自分のことしか考えていないようなバラバラなチームでは、仕事もうまくいかないでしょう。
離職率の増加
上のすべての結果として、沈滞したムードの中、上司の機嫌取りに汲々とすることにうんざりした部下たちは、会社を辞めることを考え始めます。
能力のある人から辞めていき、残された人への負担が重くなり、ますます嫌気がさして離職が増えるという悪循環に陥るかもしれません。
パワハラとして問題になることも
最初に書いたような不機嫌な態度をいつもとっていると、他人を遠ざけ、仕事もうまくいかなくなります。
しかし、こういう態度をとる人たちは、実際には成果を出し、リーダーになったり管理職になったりしています。
なぜかというと、自分より立場が上の人や、自分が親しくつきあっている人には、そのような不機嫌な態度を見せないからです。
快活でいい人、と思われていることもよくあります。
ハラスメントの相談を受けていると、「人によって態度を変える」というフレーズがよく出てきます。
最初に聞いたときは「だれでも、親しい人とそうでない人には、態度の差があるのが当然だし、いくら管理職でも、すべての人に公平に振る舞うことを求めるのはいきすぎでは?」と感じたりしたのですが、「態度を変える」ということの中身は、そのようなレベルではないのです。
ある人に対しては、親しみのある態度で、にこやかにあいさつし、雑談もする上司が、自分に対しては最初に書いたような不機嫌な態度しか見せない。
これでは、「自分は攻撃されている、パワハラだ」と部下が感じるのも無理はありません。
暴言を吐いたりどなったりするわけではないので、本人はパワハラという自覚はまったくありません。
部下のほうも、「この程度ではパワハラと言えないのでは?」と、相談することをためらった結果、影響が長期化し、深刻な健康被害を及ぼしてしまうこともあります。
最近では、ある程度の規模の会社であれば、管理職へのパワハラ防止研修が毎年行われるのが当然のようになっています。
そのような会社では、どなったり部下を侮辱するようなタイプの、わかりやすいパワハラは少なくなってきました。
しかし「◯◯してはいけない」ということばかり教えていると、典型的なパワハラではないが、部下を圧迫するような不適切な管理・指導方法に陥ってしまうこともあります。
「不機嫌で周りを支配する」上司も、そのようにして生み出されている面もあるのではないでしょうか。
パワハラの本質は、なにを言った、なにをした、というよりも、相手より立場が上であるということを利用して、相手の人権や人格を軽視するという態度そのものです。
その基本を忘れないようにしましょう。