研修の中で、「効果的な伝え方」についてお話するとき、よく、「You メッセージ に気をつけましょう」という話をします。
「You メッセージ」 というのは、主語が「あなた」である文章、つまり
あなたは◯◯ですね。
という形のものです。
それに対して「I メッセージ」というのは、主語が「わたし」であり、
わたしは◯◯だと思います。
わたしは◯◯します。
このような形式になります。
なぜ、You メッセージ には気をつけないといけないのでしょうか。
それは、You メッセージ にマイナスの内容の言葉を続けると、相手に対する強力なレッテル貼りになってしまうからです。
言われた方は、当然いい気持ちがしませんし、まともに受け止めて、ショックを受けてしまうかもしれません。
おまえはバカだ。
というのは、あまりにもミもフタもなくわかりやすい例ですが、最近ですと
君たちは『ゆとり』世代だね。
というのもありますね。
こういう断定的な評価には反論しにくく、言われた方はそのまま、それが自分なのだと受け取ってしまいがちです。
これを I メッセージ で言い直してみると、こんな感じでしょうか。
知っていて当たり前の言葉を知らないのを見ると、「ゆとり世代」だなぁって思うな。
こう言われると
たまたまその言葉を知らなかっただけで、すべてにおいてモノ知らずなのではない。
「君たち」ってひとくくりにしているけど、わたしが言葉を知らないからといって、世代全体にかぶせないでほしい。
などという反論が思い浮かびますね。
実際に反論するかどうかは別として、なんらかの根拠を出して、「自分はこう思う」という言い方であれば、意味もなく断定されるよりは、言われる方は打撃が少なくなります。
ただ単純に主語を「わたし」にして、
わたしは、君のことをバカだと思う。
わたしは、君たちを「ゆとり」だと思う。
とすると、反射的に「なんで?」「どうしてそう思うの?」という疑問がわいてきますよね。
I メッセージ は、「なぜそうなのか」という根拠や、根拠となる事実を示さないと、説得力がないのです。
I メッセージ の例文を作ると、間違いなく you メッセージ よりも長くなります。
たとえば
なんでこんなことができないんだ!
というのを
君なら当然この仕事ができると思って頼んだのに、ちゃんとできていないので、意外だし、がっかりしているよ。
という感じです。
内容的には同じなのですが、言われた側の印象は違いますよね。
その後の展開も当然違ってきます。
後者であれば「できていない理由はなんなのか」「どうしたらできたのか」をいっしょに検討することができるでしょう。
一見回りくどいようですが、自分の感じていること、そしてその理由をきちんと相手に示したほうが、誤解が少なく、トラブルにもなりにくくなります。
理由や、その根拠になる事実を示すと、相手もその事実に対して、当然なんらかの意見があります。
そのようにして、お互いに意見をすりあわせることが、よりよいコミュニケーションの基本なのです。