チャイルドラインとちぎ主催の遠藤まめた氏の公開講座「知ってほしい!セクシャルマイノリティ~LGBT 実は身近な声を聴く~」を聞きにいってきました。
LGBTという言葉を聞き慣れない方もいるでしょうが、簡単に言うと下のとおりです(チラシより)
レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとったもので、セクシュアルマイノリティの総称として使われているもののひとつです
参加者の多くが、チャイルドラインで実際に子供たちからの電話を受けている方たちということで、世間の常識と実態とのずれ、問題のありか、そして援助する側としてはどうしたらよいのか、というのが、主な内容でした。遠藤氏がLGBT当事者であり、相談を受けることも多いことから、実例も豊富で、話にひきこまれました。
この後の部分は、お話の中からわたしが感じたことであり、講座の内容をそのまま書いたものではありません。遠藤氏が語った言葉ではなく、力点もかなり違っています。この点をご承知ください。
社会が全力で「おまえはだめだ」とつきつけてくる環境
「お勉強ちっく」な部分で、とくに印象的だったのが、LGBTの子供たちの自己肯定感が低くなりがちだということ。
考えてみれば当然の話で、この社会では、
①生物学的に女性(生物学的な性)
②男性が好き(性的指向)
③自分を女性だと思っている(性自認)
(「女性」と「男性」は読替え可)
の3つがすべて一致していることが前提になっています。
そこからはずれた人は、身近に真似できるモデルもなく、マスコミや周りの人からは、否定的な意見ばかりが出てくる。「気持ち悪い」「ありえない」「病気」などなど・・・
社会が全力で「おまえはだめだ」とつきつけてくる環境に暮らしているのです。
こんな自分がこの社会で生きていけるのだろうか? 自分なんかだめだ、という悩みを深め、不登校、ひきこもり、うつ、自殺未遂という行動面に出てくることも多いということ。
LGBTが問題なのではなく、LGBTをとりまく環境が問題なわけです。
このあたり、「在日朝鮮人問題」と称されて、「在日朝鮮人」が問題なのだ、だから、自分たちでなんとかしろ、自浄作用・自助努力しない自分たちが悪いという話になっている自分のマイノリティとしての体験から考えても、大きくうなづけるところでした。
だれにもうちあけられない
そして、LGBTの子供たちの悩みを決定的にするのが、「だれにもうちあけられない」ということです。
それも、自分の生き方全体に関わってくる問題です。秘密を持つ苦しさに鬱々としても当然でしょう。
とくに、いちばん理解してほしい父母など、家庭での理解を得るのが難しい、という点。
在日の子供たちの悩みは、「見えないマイノリティ」であるという面が、大きなウェイトを占めています。
日本語ネイティブで(というよりも、韓国語はまったくできない人が多い)、顔立ちも日本人と見分けがつかず、名前も日本名を使っている人が大多数です。
隠そうと思えば隠せる。
でも、隠すのは苦しいし、自分自身を隠さなければならないような存在だと感じて、自分を好きになれない。
自分のアイデンティティに悩む、カミングアウトが難しい、カミングアウトしたときに、相手に心ない、またはとんちんかんな反応をされてがっかり、というあたりは、セクシャル・マイノリティと共通する部分もあります。
しかし、在日の場合は、家庭でのサポートが得られることが多く、親兄弟の前では秘密の存在に悩むことはあまりありません。
家庭という素の自分を出せる場があるわけです。
でもそれすらもないとしたら・・・それはほんとうに厳しい状況でしょう。
中小企業にとってLGBTの存在とは
人口の中のLGBTの割合は、諸説ありますが、30人にひとりくらい、と言われているそうです。
また、カミングアウトしている人は少ないでしょうから、LGBTなんて自分の周りにはいない、と思っている人でも、いままで気づかずにLGBTと出会っていたわけです。
いままで、だけではなく、いま現在も、会社にいるかもしれません。
今回の講演は子供についてのお話でしたが、一般の社会人になってからでも、問題点は同じです。
男女別のユニフォーム、または女子社員のみのユニフォームを使用してる会社は、トランスジェンダーから敬遠されているかもしれません。
また、入社したものの、居心地が悪いために早々に退職してしまうかもしれません。
いわゆる「男らしくない」「女らしくない」同僚や後輩をからかったりいじめたりしていれば、なおさらでしょう。
また、そこに当事者がいることを知らなくても、「ホモネタ」(ホモという言葉は、当事者からは不快に思われることが多い)を差別的に語ることがみられるような会社で、LGBTの人たちが、身を入れて働くことができるでしょうか。
職業上の能力とはまったく関係のないところで、会社に居づらくなってて本来の能力が発揮できなかったり、黙って退職してしまったりしているとしたら、もったいないの一言です。
「ダイバーシティ」という言葉は、女性や障害者の活用という内容で語られることが多いのですが、本来の意味は、多様な人材を幅広く活用していこうということです。
人種、性別、障害の有無の違いだけでなく、さまざまな価値観、さまざまな条件(子育て、介護、短時間、有期契約)の従業員を、同じ職場のたいせつな仲間として受入れ、その能力を十全に引き出そうというものです。
そのためには、自分とは考えや立場が違う人とコミュニケーションする力が求められます。
マイノリティ(少数派)がいきいきと働くことが出来るだけでなく、そのような環境で働くことで、職場のすべての人のコミュニケーション能力も鍛えられます。
これが、業績に結びつかないはずがありません。
大企業のように、システムが整っていない中小企業だからこそ、業績に対する従業員ひとりひとりの働き方は、より大きく影響してきます。
従業員の能力を開花させ、風通しのよい風土をつくるには、LGBTに対する考えを見なおしてみることも、大きな助けになるでしょう。